上 下
109 / 276
第三章 花咲くロベリア革命

第百七話 アンジェリックからのプレゼント

しおりを挟む
 ロベリアに帰還した零夜達は多くの住民達から迎えられ、歓声が国中に響き渡っていた。自分達の国を救ってくれた事を感謝していて、平和を取り戻す事が出来たのだ。

「まさかこんなにも歓迎されるなんて……」
「大した事じゃないですけどね……」

 ヒカリとジェニーが歩きながら苦笑いする中、彼女達の前にシュヴァリア達が姿を現す。彼はそのまま零夜達に一礼をした後、コツコツと近付いてきた。

「君達のお陰でロベリアは平和を取り戻した。本当にありがとう!」
「いえいえ。大した事じゃないですけどね……」

 シュヴァリアの感謝の礼に零夜が苦笑いをする中、議員達が勲章を持ってきた。それは金色でロベリア国旗が描かれていて、零夜達に対して一人ずつ手渡された。

「これは……」
「私達からのプレゼントだ。ロベリアを救った英雄として、この勲章を手渡そう。大事にしてくれたまえ」
「ありがとうございます!」

 零夜達はシュヴァリアからのプレゼントを受け取り、彼が代表として一礼する。そのまま歓声も響き渡り、空には色とりどりの花火が打ち上げられた。

「綺麗……」
「ロベリアの革命が終わり、新たな時代が始まる……私達がその歴史の中心に立つとは想定外でしたね」

 倫子は花火を見ながらうっとりとしていて、日和は苦笑いしながらも歴史の始まりを感じていた。他の皆も同様にな思いをしながら花火を見上げていて、シュヴァリアは零夜の肩に手を置いた。

「お疲れ様。今日はゆっくりと休んでくれたまえ。更にディナーも用意している」
「わざわざありがとうございます」

 零夜の感謝の礼にシュヴァリアが微笑む中、革命終焉を告げる花火は三十分ぐらい続いたのだった。



 それから数日後、零夜達は戦いの疲れを癒す為、ロベリアに滞在しながら観光していた。その間にも国内では、革命の後処理に様々な動きがあった。
 まず、変態三兄弟のファンキーズに関しては、当然死刑判決の結果に。あの様な変態行為をするだけでなく、革命の騒ぎを起こせばこうなるのも無理はない。他の党員達も死刑や無期懲役などの判決を受ける事になり、大人しく服役せざるを得なかった。
 ロベスピエールも当然死刑判決を受けてしまい、そのまま処刑されてしまった。彼が起こした革命はこの世界でも行き過ぎたとされている為、誰も同情する者はいなかった。
 更にコンコルドの住民達も操られていたとはいえ、革命に加担した罪は重いと判断された。今後は罪を償いながら精一杯働く事になり、彼等はロベリアの発展の為に身を捧げる事になるだろう。
 そんな中、コンコルドの広場ではアンジェリックの野外ライブが行われる事になり、零夜達は彼女のライブを観に来ていた。

「アンジェリック、ようやく音楽家として認められたみたいね」
「ええ。駆け出しだけど、精一杯頑張っているみたい。それに……お客さんもこんなにいるわ!」

 コーネリアが指差す方を見ると、なんと多くの住民達が彼女のライブを見に来ていて、窓から覗く人までいるのだ。皆、彼女のライブを楽しみにしていたのだろう。

「凄い人気ね……けど、コルディさんとポーラはどうしたのかしら?」
「彼女は国内復興支援の担当になったわ。ロベリアには欠かせない人材となったし、今頃大忙しかもね」
「ポーラさんも娼館を退職したみたいですが、冒険者として復帰すると思います!」

 ミミが気になる事を感じ取り、キララとルリカが彼女に対して笑顔で説明をする。すると、アンジェリックがステージに姿を現し、その場で大きな歓声が響き渡った。

「凄い人気ですね……」
「ええ……今から始まるわ」

 ジャンヌとマリーは大きな歓声を聞きながら、アンジェリックのライブに視線を移していた。彼女はマイクを手に取り、前を向きながら笑顔を見せる。

『皆さん、今日は来てくれてありがとうございます。ロベリアの革命終焉を記念して、自ら作詞作曲をした曲を届けます!曲名は「ネバーエンドドリーム」です』

 アンジェリックが挨拶をした後、バンドの音楽が流れ始める。曲はバラードとなっているが、明るい感じで皆を元気づけているイメージとなっている。すると零夜がこの曲を聴いた途端、すぐに何かを感じ取った。

「この曲……間違いない……」
「どうしたの?」

 零夜の様子が気になった倫子達は、一斉に彼の方に視線を移す。するとアンジェリックの歌を聴いた途端、彼女達も彼と同様に感じ取り始めた。

「アンジェリックは革命が終わった事を切欠に、皆がそれぞれの新たなスタートを切るエールを送っているんだ。ロベリアの皆にやる気を出させる為だけでなく、俺達の事を思って……」

 零夜からの話を聞いた倫子はポロポロと涙を流してしまい、ミミ達も同様に泣いてしまう。自分達の事を思ってくれたのがとても嬉しくて、涙を流すのも無理なかった。

「アンジェリック……!」
「私達の為に……ありがとう……」

 マリー達は涙を流しながらもアンジェリックに感謝を伝えていて、零夜は静かに頷きながら聞いていた。
 そのまま曲が終わり、観客から拍手喝采が響き渡った。

「ありがとうございます!では、選ばれし戦士達の皆さん!ステージへどうぞ!」
「俺達が!?」

 アンジェリックは零夜達をステージに呼び出すが、彼等は予想外の展開に驚きを隠せなかった。すると観客達が零夜達に視線を移し、手拍子をしながら場を盛り上げていた。

「まさかこうなるとは驚いたみたいね」
「せっかくだから行きましょうか」

 ヒカリ達は観念したと同時にステージ上へ移動し、アンジェリックは彼等を指さしながらトークを続ける。

「零夜達がいなかったら、このロベリアの革命は終わる事はなかった。彼等はこれから新たな戦いへ向かうけど、皆で応援しましょう!アークスレイヤーを倒す最強の救世主として!」
「「「うおおおおおおお!」」」

 アンジェリックの宣言と同時に歓声が響き渡り、観客達は零夜達を盛大に応援していた。彼等のエールを聞いたヒカリ達は手を振りながら応え、零夜に至っては恥ずかしくて頬を掻いていた。

「零夜、照れ臭そうにしているじゃないか」
「恥ずかしがり屋だな」
「別にいいだろ……」

 トラマツとノースマンは零夜の様子にニヤけていて、彼は横を向きながら目を逸らしていた。その様子にマリー達が微笑むのも無理はなく、アンジェリックも同様の表情をしていた。
 すると倫子が零夜の肩に手を置き、傍にいる皆に呼びかけ始める。

「じゃあ、そろそろ行きましょう。私達の戦いは終わったし、皆が待っているからね」
「そうだな。よし!帰るとするか!」

 零夜の合図と同時に、マリーが魔法陣を展開。そのまま彼等はヒーローアイランドへと帰還する事になり、ロベリアとはここでお別れという形になったのだ。
 アンジェリックは彼の手を取りながら、涙を浮かべた笑顔で送り出そうとしていた。

「あなた達の活躍、そして……アークスレイヤーの野望を終わる事を信じているわ!諦めずに頑張ってね!」
「ああ!必ず!」

 アンジェリックからのエールに零夜は笑顔で応え、彼等はその場から転移して姿を消した。その直後、辺り一面に穏やかな風が吹き始め、それを感じ取った彼女は青い空を見上げていた。

(頑張れ、ブレイブペガサス!)

 アンジェリックは心から零夜達に再びエールを送った後、そのまま観客達の前で次の曲を歌い始める。
 この日のコンサートは会場全体が盛り上がる結果となったが、アンジェリックが歌姫になる道はまだまだこれからであった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

魔人に就職しました。

ミネラル・ウィンター
ファンタジー
殺気を利用した剣術の達人である男、最上 悟(さいじょう さとる)。彼は突然、異世界に転移してしまう。その異世界で出会った魔物に魔人と呼ばれながら彼は魔物と異世界で平和に暮らす事を目指し、その魔物達と共に村を作った。 だが平和な暮らしを望む彼を他所に魔物達の村には勇者という存在が突如襲い掛かるのだった――― 【ただいま修正作業中の為、投稿しなおしています】

十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨
ファンタジー
クリアしなければ、死ぬこともできません。 妙な部屋で目が覚めた大量の人種を問わない人たちに、自称『運営』と名乗る何かは一方的にそう告げた。 難易度別に分けられたダンジョンと呼ぶ何かにランダムに配置されていて、クリア条件を達成しない限りリスポーンし続ける状態を強制されてしまった、らしい。 そんな理不尽に攫われて押し付けられた人たちの強制ダンジョン攻略生活。

【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、 帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。 性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、 お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。 (こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)

進め!羽柴村プロレス団!

宮代芥
大衆娯楽
関東某所にある羽柴村。人口1000人にも満たないこの村は、その人口に見合わないほどの発展を見せている。それはこの村には『羽柴村プロレス』と呼ばれるプロレス団があるからだ! 普段はさまざまな仕事に就いている彼らが、月に一度、最初の土曜日に興行を行う。社会人レスラーである彼らは、ある行事を控えていた。 それこそが子どもと大人がプロレスで勝負する、という『子どもの日プロレス』である。 大人は子どもを見守り、その成長を助ける存在でなくてならないが、時として彼らの成長を促すために壁として立ちはだかる。それこそがこの祭りの狙いなのである。 両輪が離婚し、環境を変えるためにこの村に引っ越してきた黒木正晴。ひょんなことから大人と試合をすることになってしまった小学三年生の彼は、果たしてどんな戦いを見せるのか!?

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

処理中です...