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第三章 花咲くロベリア革命

第百六話 闇を斬り裂く光の刃

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 マリーとアビスの戦いは激しさを増していて、彼女の反撃で彼を追い詰め始めていた。最後まで諦めない気持ちが自身の強さの源となり、不利な状況から一気に逆転しようとしているのだ。
 一方のアビスはマリーの諦めの悪さを侮っていた為、自身が追い詰めていく展開は予想できなかった。彼にとっては最悪なストーリーとなっていて、このままだと負けてしまうのも時間の問題だ。

(この私をここまで追い詰めるとは……だが、私はここで死ぬ理由にはいかないのだ!)

 アビスは心の中で自身を奮い立たせた直後、マリーから間合いを取って魔術を唱え始める。すると、自身の周りに葉っぱのバリアが展開され、そのまま彼女の元へと向かってきたのだ。

「喰らえ!リーフバリアカッター!」
「キャッ!」

 リーフバリアカッターはマリーにそのまま襲い掛かり、彼女に切り裂きダメージを与えていく。カッターによる傷から血が流れるのも無理なく、この光景を見たミミ達は心配そうな表情をしていた。

「マリーさん……ピンチになっています……」
「いくらなんでも手強すぎるわ!彼女一人じゃ分が悪いし、もう見てられない!」
「ミミ姉!」

 ミミは零夜の制止を跳ね除け、我慢できずに飛び出してしまう。そのまま彼女は治癒魔術を自ら発動させ、マリーの傷をあっという間に治したのだ。

「ありがとう。お陰で助かったわ」
「気にしないで。あまりにも見てられないし、奴はかなり手強いと感じているわ。でも、皆で立ち向かえば怖くはないわ!」

 ミミのウインクに皆が頷き、彼女達は一斉に戦闘態勢に入り始める。そのままアビスを取り囲むが、彼は平然としていた。

「いくら多人数で掛かっても、私の前では無力だ!リーフバリアカッター!」

 アビスは再びリーフバリアカッターを放ち始めるが、それと同時にミミがパチンと指を鳴らした。

「OK!」

 するとその合図でキララが動き出し、隙だらけとなっているアビスに接近してきたのだ。

「何!?」
「キャットクロー!」

 キララの強烈な鉤爪が彼の顔面を引っ掻き、その痛みで彼は顔を抑えてしまう。同時にリーフバリアカッターも消えてしまい、ミミ達はダメージを受けずに済む事が出来たのだ。
 リーフバリアカッターは出した直後、隙だらけとなるのが弱点。ミミはそれを見抜く事に成功したのだ。

「くっ!私の美しい顔が!よくも……」

 アビスの顔面はキララの引っ掻きで傷だらけとなり、彼は怒りを滲ませながらも戦闘態勢に入っていた。自身の顔を傷つけたキララはとても許さず、殺してやりたいぐらいの勢いを心の底から出しているのだ。

「どうやら彼も本気になったわね!皆、気を引き締めていくわよ!」

 キララの合図にミミ達が頷きながら構えに入ったその時、奴隷の救出に向かっていたヒカリ達が駆け付けてきた。その様子だと奴隷達は既に救出し終えているみたいだ。

「ヒカリさん!奴隷達は?」
「救出済みよ!今はトラマツとノースマンが、彼女達をヒーローアイランドに転移させているわ!」

 ヒカリの説明にミミ達が納得する中、アビスは怒りでワナワナと震えていた。奴隷まで救出されるのは予想外の展開であり、彼のストーリーは破滅という展開に突入しようとしていた。
 自らのストーリーは本当は上手くいく筈だった。しかし、零夜達を甘く見ていた結果、戦力は失われ、革命は終わってしまう事態に。何から何まで最悪の展開となってしまったのだ。

「私のストーリーを……よくも台無しにしてくれたな……始末しなければ気が済まない!」

 アビスは怒りを爆発させ、次々とリーフバリアカッターを多く召喚。そのまま零夜達に向けて放ってきた。

「そうはさせるか!火炎放射!」
「何!?」

 ところがソニアの火炎放射が炸裂し、リーフバリアカッターは炎に焼かれてしまう。そのまま燃やされて塵となってしまい、アビスは思わず呆然とたちつくしていた。

「今よ!」 
 
 マリーはチャンスと言わんばかりにサーベルを強く構え、刃に光のオーラを纏い始める。そのままアビスに対して獲物を狙う様な目で睨み付け、スピードを上げて襲い掛かってきた。

「あなたはこれで終わらせるわ!断罪光翼斬だんざいこうよくざん!」

 マリーの光の刃がアビスを右斜一閃で斬り裂いてしまい、彼は盛大に口から血を吐いて仰向けに倒れてしまった。
 断罪光翼斬は悪の心を持つ者に対して、効果抜群の大ダメージを持っている。アークスレイヤーの幹部でも効果あるので、これこそマリーの最大の切り札と言えるだろう。

「こ、この私が……こんな結末を迎えるとは……そんなの……認め……られない……」

 アビスは自らの敗北を認めないまま、そのまま塵となって消滅した。最後まで自ら招いた罪を認めず、己自身の完璧な物語を作りたかったのだろう。

「あなたが自ら招いた種よ。カーテンコールにピッタリの最期だったかもね」

 マリーはアビスが消滅した跡を見つめた後、笑顔で全員の方に視線を移した。

「終わったわ。もう、ロベリアは大丈夫!」
「「「やったー!」」」

 マリーの笑顔にミミ達は彼女の周りに集まり、抱き合いながら喜んでいた。零夜は離れた場所で傍観していて、この光景に苦笑いをしている。

「まさか皆の連携で倒すとは……やっぱり絆の力には敵わないかもな」

 零夜が絆の力は無限大だと感じた直後、エヴァが彼に気付いて近付いてきた。

「ほら、零夜もこっち!」
「お、おう!」

 零夜もマリー達の輪の中に入り、彼女は彼をムギュッと強く抱き締める。その温もりはとても温かく、まるで母親の様だった。

「私を信じてくれてありがとう。でも、まだ弱い部分があるからこれからも宜しくね」
「ああ。勿論だ!」

 零夜の笑顔にマリーも笑顔で応えた直後、基地の壁に罅が入り始める。アビスの消滅で基地は崩れようとしていて、彼女はすぐに魔法陣を足元に展開する。

「さっ、転移するわよ!テレポート!」

 マリーは転移魔術を発動させ、零夜達と共にその場から転移した。



 基地の外に転移した零夜達は、トラマツとノースマンの二人と合流。基地はガラガラと崩れてしまい、瓦礫の山となってしまった。

「ロベリアの基地も陥落したか……これでグラディアスの支部基地はあと四つとなるな」

 杏は瓦礫の山に視線を移しなから呟き、それにアミリス達も同意する。

「ええ。でも、油断は禁物よ。この世界にあるアークスレイヤー支部基地は、まだまだ未知の強敵が待ち構えているわ」
「アミリスの言う通り。ヒューゴ達も他の基地を次々と落としていくし、私達も強くならないと。ザルバッグを倒すには今のままではまだまだだからね」

 アミリスとマーリンの意見に皆が同意し、自らの未熟さを感じ取る。今のままではザルバッグどころか、トーナメントに優勝する事さえ出来やしない。だからこそ、日々精進しつつ、強くなるしかないのだ。

「そうだな。俺もまだまだ修行が足りないし、連携についても考えないとな。さて、ロベリアの皆の元へ向かうか!」
「「「おう!」」」

 零夜の合図に全員が一斉に応え、そのままロベリアへと帰り始めた。それと同時にロベリアを巡る戦いも終わりを告げられたのだった。
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