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第三章 花咲くロベリア革命

第七十四話 皆で夕食会

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 集会が終わってから数時間後、それぞれの作業を終えたヒカリ達はズボンの裾を次々とまくり、靴下を脱いで素足を川の中に入れていた。
 因みにアーニャ達の制服である服装は、裸で青い肩紐のつなぎ服でオーバーオールスタイルだ。更に胸の周囲にも布があるので、胸が見える事はない。
 マリーも自ら服を変えていて、白いスポーツブラと青いデニムカーゴジーンズとなっている。彼女もカジュアルな姿にしたいと考えた結果、この様になったのだ。

「ふう……冷たくて気持ちいい……疲れが取れるのはいつ頃なのかな?」
「もしかすると取れなかったりして」
「不吉な事を言わないでくださいよ……」

 ヒカリ達は楽しそうに会話しながら、そのまま寝転んで疲れを癒していた。零夜、トラマツ、ノースマン、サンペイは今後の事について真剣な表情で話をしている。メディアの考えだけに頼らず、自分達でも考えようとしているのだ。

「今後の予定についてだが、僕としては異世界にあるアークスレイヤーのアジトを潰す必要がある。それに、マリーの国であるロベリアもアジトがある事が判明された」
「本来なら平和な国なのに、アークスレイヤーによる革命で大変な事になっている。周辺国も革命を止める為に動こうとしているが、相手がアークスレイヤーだと……」

 トラマツとノースマンの説明を聞いたサンペイと零夜は、何も言えなくなってしまう。周辺国が手助けをしてくれる事はありがたいが、相手がアークスレイヤーだと無謀で返り討ちに遭うのは確定と言えるだろう。

「確かにそうだね。アークスレイヤーを倒せるのは選ばれし戦士達率いるオイラ達しかいないし、やるからには精一杯頑張るのみだ!」

 サンペイはやる気に溢れた目で頑張る決意を固め、それに零夜達も同意する。アークスレイヤーには手強い相手がいる以上、自分達が倒しに行かなければ意味がないのだ。
 
「サンペイの言う通りだな。さてと……すぐに夕食の準備をするぞ!」

 零夜の声かけと同時にヒカリ達はすぐに起き上がり、川から上がったと同時にタオルで足を拭き始める。そのまま靴を履いた後、ミミは彼に視線を移して質問する。

「今回の夕食は何?」
「丸鶏の蒸し焼き、コーンサラダ、こしあんの焼き餅。あと、蒸し焼きの中にチャーハンを入れるから!」
「「「チャーハン?」」」

 零夜の説明にエヴァ達は一斉に首を傾げてしまう。チャーハンという食べ物は知っているが、丸鶏の中にチャーハンを入れるのは聞いた事がないのだ。

「まあ、知らない人もいるわね……あと、魚料理は無いの?」
「今日は肉だから無いかな……」

 ミミは苦笑いしながらこの様子を見ていて、零夜に対して質問する。それに零夜が真剣な表情で応えたその時、倫子が不満な表情で飛びついて彼の頭をガブリと噛んでしまう。

「ぎゃあああああ!」

 零夜は悲鳴を上げながらバタバタ走り回るが、倫子は噛みつきを止められない。魚料理がない事に不満を感じている以上、こうなってしまったのだ。これに関しては零夜が悪い。

「魚食べたい~!」
「あだだだだ!追加しまーす!」

 倫子の訴えに零夜は悲鳴を上げながら承諾してしまい、キララ達は慌てながら彼女を止めに向かった。あんな訴え方すれば承諾せざるを得なかったのは無理もないだろう。



 その後、皆で夕食作りが始まりを告げられ、零夜達は一斉に分かれてそれぞれの調理を始める。
 まず、魚担当はヒカリとジェニー。事前にサシミザカナを多く取っていた為、人数分の焼き魚で食べる事に。魚に串を刺してバターをつけた後、そのまま焼く事になる。

「魚については大丈夫だけど、お餅もバターは塗っておくのですか?」
「ええ。そうすると美味しいからね」

 ジェニーの質問にヒカリは笑顔でそう応え、用意しているお餅にもバターを塗る。そうするとより良い味がして、あんことの組み合わせも見事になるのだ。

「なんだか楽しさを感じますね」
「ええ。で、チャーハンについてはソニアがやると言っていたわね……」

 ヒカリが向こうを見ると、ソニアは火を吹いて火力を調節しながら、大きな中華鍋を構えてチャーハンを炒めていた。
 因みに彼女は中華系の国に生まれていたので、中華料理が得意分野。チャーハン以外に飲茶、北京ダック、小籠包などもお手の物だ。

「零夜、丸鶏の下調べはできたか?」
「おう!ローストチキン風に味付けをした!」

 零夜は多くの丸鶏を次々と用意。しかも、味付けはローストチキンのタレを利用して、香ばしい香りがする。
 そこにソニアがローストチキンの中に炒めたチャーハンを次々と入れておく。

「ローストチキンに関してはかなり多めだ。サンペイは草食だから必要ないよな」
「ああ。それだと共食いになるからな。オイラは普通に草や野菜とかあれば良いよ」
「そうか。後はアミリス、ルリカ、キララ、エヴァ、トラマツ、ノースマンが山菜と木の実を取ってくると言っていたな……」

 零夜が真剣な表情で考えた直後、アミリス達が戻ってきた。それと同時に山菜、木の実も大量に採ってきていて、それに皆は驚きを隠せなかった。

「こんなにも見つかったわ。ウド、ゼンマイ、コゴミ、ギョウジャニンニクがあるわよ」
「凄い……こんなにも山菜があったのね……」

 サラダを作り終えていたミミ、倫子、日和、ジャンヌはすぐにアミリス達の元に駆け寄り、多くの山菜に驚きを隠せずにいた。
 木の実に関しては果樹園からも既に収穫していて、柿、梨、リンゴ、桃、アケビ、ヤマブドウ、アキグミなどを持ってきているのだ。

「果物は充分みたいね。さっ、次をやるわよ!」

 アミリス達は山菜を天ぷらにして調理し始める中、ルリカは何か足りないそうな気がして零夜に声を掛ける。

「零夜様、焼くのは丸鶏、お餅、魚は良いですが、何か足りなくないですか?」

 ルリカからの指摘に零夜は何かを考える。確かにチャーハン入り丸鶏の蒸し焼き、コーンサラダ、あんこ餅、山菜の天ぷら、木の実・果物という風に種類数はあまりにも少ないようだ。これじゃあ、物足りない人達が出るのも無理はない。
 
「そうだな……となると、骨付きカルビだな」
「骨付きカルビ……良いですね、それ!」

 零夜の提案にルリカは尻尾を振りながら応える中、彼はすぐに鉄板も用意する。骨付きカルビは鉄板で焼く料理なので、鉄板は必要不可欠。
 零夜はそのまま骨付きカルビに、塩コショウで味付けして揉み込み始める。

「よし!折角だから焼きそばも作っておこう!」
「焼きそば!食べてみたいかも!」

 零夜の提案にマーリンが手を合わせて食べたくなる中、エヴァは丸鶏を大きい葉っぱで包ませ、燃えない糸で縛る。蒸し焼きはこの様な方法が効果的である。

「後は土を塗っておけば大丈夫だ」
「土か……それなら私に任せて!アースコーティング!」

 コーネリアはすぐに手を挙げて、魔術を唱え始めた。すると葉っぱに包んでいた丸鶏が光り輝き、次々と泥に包まれ始めていく。
 そのままあっという間に丸鶏は泥に包まれてしまい、コーネリアは魔術を終わらせて手を叩いた。

「これでよし。火起こしお願い!」
「アタイに任せろ!」

 ソニアは火を吹いて薪に点火し、更にルリカとキララがお餅などを置いて炙り始める。
 更に泥に包まれた丸鶏も火の側に置いて蒸し始める。

「さてと!次は骨付きカルビと焼きそばだな!」
「骨付きカルビは俺達のも用意してくれよ!」
「あと、ヒカリの召喚獣達も出した方が良いと思うぞ!」
「そうね!皆、来て!」

 杏からのアドバイスにヒカリは召喚獣達を一斉に呼び出す。彼等はヒーローアイランドで普通に生活していて、それぞれの場所で自由に過ごしているのだ。
 ミノタウロスなどのこれまで手に入れた仲間達は勿論、パンダファイターにコウモリのバット、リトルドラゴン、リトルペガサスもいるのだ。

「あなた達の分の夕食も用意しているからね!」
「「「イェーッ!」」」

 ミノタウロス達の歓声と同時に、ヒカリはすぐに泥に包まれている丸鶏の数を増やし、別の場所では零夜が鉄板を用意し、焼きそばと骨付きカルビを焼き始め、次々と出来上がっていく。

「焼きそばの味は塩だが、それでも良いか?」
「大丈夫!さあ、皆で食べましょう!」

 ミミの合図で彼女達は一斉に丸鶏の泥を次々と取り除き、そのまま包みを広げる。すると蒸し上がったホカホカのローストチキンが姿を現し、中にチャーハンもあるので香ばしい匂いが漂う。

「では、お祈りを。神様に感謝を込めて……アーメン……では、頂きます!」
「「「頂きます!」」」

 ジャンヌのお祈りの後、皆で楽しい夕食が始まりを告げられた。
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