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第二章 隠されたホムラの陰謀

第七十一話 それぞれのスタートライン

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「これも因果応報だな……」

 領主一家、ホムラ支部での戦いから翌日、零夜とヒューゴは和菓子屋で団子などを食べながら話をしていた。アルフレッドが殺された事はヒミカから聞いていて、彼の遺体は既にお墓に埋められていた。

「調べたところ、何者かが侵入して彼を惨殺した。どうやら彼との関係性がある者がやったみたいだ」
「犯人は未だに不明だが、自業自得だな……」

 零夜は団子を食べながら、アルフレッド達が犯した罪を思い浮かべる。 
 アークスレイヤーと手を組んでいた事、領民の女性を自身のおもちゃにしていた事、違法品販売、薬物原料の植物所持、罪のもみ消し、奴隷は勿論だが、賄賂や拷問なども行っていた事が発覚されている。
 アルフレッドは治癒士から両足が動かない事に衝撃を受けてしまい、更には被害者の家族や関係者からボコボコに殴られていた。そのまま彼は牢獄に移され、神室によって殺された。まさに因果応報による最期と言えるだろう。
 グレゴリーと彼の騎士達については、既に荷馬車に乗せられながら王都へと連行されていた。
 救出した奴隷達と涼風も、昨日の夕方にメディアの元に送り届けた。彼女達についてはメディアがどうにかしてくれるだろう。

「取り敢えずはこのぐらいかな?」
「そうか……これでホムラの戦いは終わったな……」

 零夜は雲一つ無い晴れ渡る空を見上げながら、やるべき事を成し遂げて満足の表情をしていたその時、いきなりバングルに通信が入り始めた。

「なんだ?」

 零夜はバングルを起動させて小さなウインドウを召喚すると、画面にはメディアが映し出されていた。その様子に零夜は驚きの表情をしそうになるが、いきなりの連絡に疑問に感じているのだ。

『急にごめんね。実は重大な事があって、皆に連絡しようと思って』
「連絡……ですか?」

 メディアは苦笑いしながら謝罪した後、零夜達に重大な事を連絡しようとしていた。どうやら何かあった事は確定だが、悪い話では無いようだ。

『実はね……』

 メディアは重大な内容を零夜達に伝え始め、それを聞いた彼等は驚きを隠せなかった……



「「「ええっ!?地球の本拠地ができて、そこを拠点にする!?」」」

 その後、零夜からの報告に倫子達が一斉に驚きを隠せずにいた。メディアからの内容を聞けば、驚くのも無理ないのは勿論の事であり、中には尻餅をついてビックリした者達もいたのだ。

「ああ。メディア様が地球の本拠地を設立しようと前から計画していたし、救出した奴隷達が安心して住める場所も考えていたそうだ」
「じゃあ、このグラディアスから地球へと帰るという事なのね。なんか短かった様な長かった様な気がするけど……」

 零夜からの説明に皆は納得するが、倫子、ヒカリ、ミミの三人は異世界での生活がどのくらい経っているのか分からず、混乱してしまうのも無理なかった。その様子にエヴァ達も思わず苦笑いをしてしまうのも無理なく、トラマツ達も同様に冷や汗を流していた。

「確かにそうかもな。あとは涼風さんについては元の場所に送り、無事に仲間達と再会を果たしたそうだ。アーニャなどの救出した奴隷達も既に本拠地に住み込んでいるし、俺達も今後はそこで生活する事になる」

 零夜からの説明に、皆は安堵の表情をして良かったと感じている。あのまま皆の元に戻れなかったら、どうなっていたのか心配してしまうのも無理ない。
 するとエヴァがある事を思い出し、急に不安な表情をしてしまう。

「地球での生活か……大丈夫かな……」

 エヴァのポツリとした発言に、アミリス達も思わず不安な表情をしてしまった。実は彼女達は零夜達の世界に渡るのが初めてで、思わず不安になってしまう。慣れない環境での生活は不安も大きく、いつものスタイルで生活すれば叱られるのも無理ないだろう。
 その様子を見た倫子は、彼女の頭を撫で始める。

「大丈夫。ウチ等が教えてあげるから、心配しないで」
「うん。ありがとう……」

 倫子の笑顔にエヴァも同じ様に返し、ルリカ達も笑顔になっていく。地球での生活については倫子達が教えてくれるので、そこまで不安になる事はないだろう。

「出発はホムラを出る時間と同時刻で、約一時間後だ。それまで買い忘れや準備を怠るなよ!」
「「「了解!」」」

 トラマツの指示に倫子達は頷いた後、そのまま一時間後の出発に向けて行動を開始する。お土産を買いに行くのは勿論、自身の武器を進化させる素材も探しに向かったのだ。

「まさかメディア様から緊急の連絡が入るとは思わなかったな」
「ああ。次の場所は地球か。これからが大変だな」

 トラマツとノースマンはお互い頷き合いながら苦笑いした後、倫子達の元へと駆け出し始めた。今後も彼女達のサポートに専念する事を決意しながら。



 それから一時間後、零夜達は準備を終えてホムラを去ろうとしていて、ヒミカが一人で彼等を見送りに来ていた。仲間達は事後処理で忙しく、ヒミカだけが見送りに行くしかない状況となっているのだ。

「お前達のお陰でホムラの危機も去る事ができた。本当に感謝する」
「いえいえ。恐縮です」

 ヒミカの礼にヒューゴが苦笑いしながら一礼し、零夜達も同様の表情をしていた。大した事じゃないと彼等は感じているが、ホムラを救ってくれた事には変わりないのだ。

「我々はホムラを守る騎士団として、この街を平和な街にする。それで、今後君達はどうするつもりだ?」

 ヒミカが零夜達に質問し、彼とヒューゴは冷静な表情で彼女に視線を移す。
 
「俺達はアークスレイヤーを倒しに再び旅を続けます。ホムラ支部を倒しましたが、この世界にはあと五つのアークスレイヤーのアジトがあるので油断はできません」
「それに今後はチームごとに分かれて行動します。いつでも一緒という理由にはいきませんし、ライバルとして行動しますので」

 零夜とヒューゴの説明に、ヒミカは納得の表情をする。彼等は目的地が一致したからこそ共に行動していたが、彼等はライバル関係の為、今後はチームごとに分かれて行動しなければならないのだ。

「そうか。君達のこれからの健闘を祈っている。アークスレイヤーの討伐を……頼んだぞ」

 ヒミカからのエールに零夜達は一斉に一礼しながら応え、彼等はホムラの街を後にする。彼女は彼等の姿が見えなくなるまで、敬礼をしながら見つめていたり



 ホムラを後にした零夜達は先を進む中、メディアとリリアが姿を現す。同時に零夜達は元の世界へと一時帰る時が来たのだ。

「とうとうこの時が来たみたいだね。僕達はセルバーグに向かって仲間を探すよ。君達はどうするんだい?」 
「俺達は一時本拠地へと帰還するが、アークスレイヤーのアジトを破壊する事は継続する。次はどの場所か分からないが、やるべき事は成し遂げる覚悟だ」

 零夜は冷静な表情でヒューゴの質問にそう返し、彼は納得の表情をしながら頷いていた。零夜は一度決めた事は真っ直ぐ貫き通す覚悟がある為、ヒューゴもそれを知っているのだ。
 
「そうか。君達のこれからを信じているよ。次に会う時はトーナメントになるが、君達と戦う事を楽しみにしているよ」
「おう!また何処かで会おうな!」

 零夜とヒューゴは拳を当ててまた会う日を約束した後、零夜達はメディアの周りに集まり始める。そのまま足元に彼女の魔法陣が発動され、そのまま元の世界へと転移したのだ。
 零夜達は元の世界へと帰還し、残ったのはヒューゴ達だけとなった。

「零夜達はさらなる飛躍を遂げるに違いない。僕等も負けずに頑張るしかないし、まずは仲間を集めてからだ!」
「そうだな。セルバーグに行って残りの仲間を探しに行くぞ!」
「「「おう!」」」

 ヒューゴ達はそのままセルバーグに向けて歩き出し、仲間達を探しに向かい出した。零夜達に追いつく為にもここで止まるわけにはいかない。彼等は心の中で決意を固めながら、前に進み始めたのだった。
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