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第二章 隠されたホムラの陰謀

第六十五話 べムールとの決戦

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 零夜達は日和達を仲間に加え、そのままアジトの最上階へと辿り着く。彼等の目の前には頑丈な扉が待ち構えていて、アミリスは自身のスキルである千里眼を使って中に誰がいるのか確かめ始める。

「べムールはこの扉の先にいるわ。恐らく待ち構えているに違いないわね」

 アミリスの調べによると、恐らくベムールはこの部屋の中にいるみたいだ。零夜達は既に覚悟はできていて、いつでも戦える態勢に入っているのだ。

「最初から覚悟はできている!これ以上奴等の好きにはさせないからな!」

 零夜は拳を打ち合いながら、真剣な表情で決意を固めている。それを見たミミ達も、真剣な表情で自身に気合を入れ始める。

「私達も戦う覚悟はできているから!」
「これ以上奴等の思い通りにはさせないし」
「べムールという奴は倒さないと気が済まないわ!」
「故郷を滅茶苦茶にした罪は償わせないと!」
「皆がいる以上怖くないから」
「アタイも準備万端だぜ!」
「全て覚悟の上で挑みます!」

 ミミ達の意気込みにルリカ達も感化され、彼女達も一斉に決意を固め始める。自ら戦う事を決意した以上、ここで止まるわけにはいかないのだ。

「私達も戦う覚悟はできている!」
「選ばれし戦士達では無いけど、彼等の力になる覚悟があるわ!」
「諦めの悪さはピカイチだからね!」
「藍原さんとなら大丈夫!ダブルエースの維持を見せるから!」
「アタシも奴隷にされた分、仕返ししておかないとな!」
「やられた借りは返させてもらうわ!」
「ヴァンパイアの意地を見せてやる!」
「私も戦う覚悟はできている。此処から先は一歩も引かないから!」

 ルリカ達も決意を込めながら戦う意志を見せ、トラマツとノースマンは心配ないなと安堵の表情を浮かべていた。彼女達は選ばれし戦士でなくても、零夜達の力になる覚悟がある。それなら勿論大歓迎だと心の中で思っているのだ。

「心配は無用だな。開けるぞ!」

 トラマツはすぐに扉を開き、零夜達は中に入る。そこは円形の広い空間となっていて、あるのは多くの柱と玉座だけ。シンプルな空間だが、邪悪な気配も漂っているので油断は禁物と言えるだろう。
 皆がキョロキョロと辺りを見回す中、天井から突如ワープゲートが姿を現す。そこからべムールが姿を現したと同時に、彼はゆっくりと地面に降り立った。

「まさか反逆者がここに来るとはな」
「お前がべムールか?」
「そうだ。よくもわしの計画をぶち壊してくれたな。その責任を取らせてもらうぞ!」

 べムールは怒りの表情で零夜達を倒そうと戦闘態勢に入ったその時、エヴァが彼に近付いて真剣な表情で睨みつけてきた。

「べムール。なんで私達の故郷を襲ったの!?どういう事なのか説明しなさいよ!」

 エヴァは故郷を滅ぼされた怒りで思わず大声で叫ぶが、べムールは冷酷な表情をしながら彼女に視線を移す。

「わしはアークスレイヤーに拾われた後、恩を返す為に自らこのアジトを請け負った。全てはザルバッグ様の為に捧げる覚悟であり、その為ならどんな手段でも選ばない。シルバーウルフの奴等はわしのやり方に反対していたが、自身の能力で返り討ちにしたからな……」

 そう。べムールはかつて闇商人として活動していたが、その事を摘発されて無一文で放浪をする羽目に。その時にアークスレイヤーと出会ってから、彼等に恩を返す為に今に至るのだ。
 べムールからの真実に零夜達は絶句してしまい、エヴァは拳を強く握り締めて身体を震わせていた。その様子だと泣いているのも無理はないだろう。

「そんな理由で……許せない……!」

 エヴァは怒りの表情で涙を流しながら、格闘技の構えで戦闘態勢に入る。同時に零夜も忍者刀を引き抜いて構えたと同時に、怒りの表情でべムールに殺気を向け始めた。

「最低な男だな……それがお前の答えなのか……」
「その通りだ。誰が何と言おうとも、私は私のやり方を貫き通すのみだ。邪魔する奴は倒すのみ!」

 べムールは鞭を構えて振り回し始め、それを見たミミ達も武器を構えて戦闘態勢に入る。室内は緊迫の空気が流れ始め、彼との戦いも始まりを告げられた。

「べムールの鞭はかなりのダメージだ!奴の鞭を切断すれば勝機はある!」
「なるほど。ここは私が行くわ!」

 トラマツからの真剣なアドバイスにミミがダッシュで駆け出そうとするが、べムールは鞭の長さを伸ばして彼女に当てようとする。

「危ない!」

 危機感を感じ取ったルリカが前に出て盾を構え、べムールの鞭攻撃を防ぐ事に成功する。その衝撃で鞭は弾き返されてしまい、べムールは悔しそうに思わず舌打ちをしてしまう。

「ルリカ!」
「間一髪ですね。ここは私が行きます!」

 ルリカはミミが無事である事に安堵の笑顔を見せた後、素早く駆け出しながらべムールに向かって前進する。その様子だと自殺行為だと思えるが、彼女の頭の中には既に作戦を考えているのだ。

「自ら死に行くとは愚か者が!」

 べムールがルリカに対して鞭を振るったその時、彼女は高くジャンプしながら上手く回避した。それと同時にルリカは空中回転をしつつ、彼にそのまま急降下しながら襲い掛かってきた。

「エアスラッシュ!」
「がはっ!」

 ルリカの風属性空中斬撃が炸裂し、べムールの身体を切り裂く事に成功。同時に彼の手から鞭が離れ、ポトリと床に落ちてしまう。

「これはおまけよ!ブラッドスラッシュ!」
「うっ!?」

 更にコーネリアによる赤い血の引っ掻きが炸裂し、べムールは切り裂かれて床に片膝をついてしまう。ところが彼はダメージを受けたにも関わらず普通に立ち上がり、格闘技の構えに入り始めた。

「どうやら実力者の様ね。普通なら倒れないのは分かっているわ」

 マリーは真剣な表情をしながらも冷静に推測し、べムールは頷きながら応えていた。今のは本気ではない事は確かであり、まだ隠された力を持っているに違いない。
 
「鞭の姿は仮の姿。ここからが本番だ!」
「次は闇魔法を繰り出すつもりだな」

 ソニアがべムールの行動を予測した直後、彼の服は魔道士の姿に変わってしまった。更に両手には闇の波動弾が生成され、今でも放とうとしている。
 これこそ闇の魔導師べムールであり、彼の真の姿なのだ。

「やはり予感は当たったか!気を付けて回避だ!」

 トラマツの合図で零夜達が真剣な表情で身構えた直後、べムールは闇の波動弾を二つ同時に投げ飛ばし始める。

「おっと!」

 ヒカリが飛ばされてきた波動弾をジャンプして回避するが、波動弾は床に激突して爆発を起こしてしまった。

「爆発魔法まで使っている……」
「かなり厄介みたいだな……」
「下手したらやられてしまうかもね……」

 ヒカリ、杏、マーリンが冷や汗を流しながら波動弾の威力にゾッとしてしまうが、トラマツは冷静に爆発のした方を見つめていた。
 
「べムールは気に入らない者は破壊する性格だ。だが、今の攻撃は威力が弱いし、床には傷や爆発の跡がない」

 トラマツが爆発の跡を指差しながら説明すると、そこには何事もなく床が綺麗になっていた。今の威力はあまり大した事はなかったのだろう。

「だが、直接当たったり、爆風に巻き込まれるとダメージは確定だ!気を付けろ!」
「となると、相手の攻撃に合わせてタイミングを仕掛けるしかないわね」

 ノースマンの真剣な表情での説明に、アミリスが冷や汗を流しながらその作戦で行こうとする。しかし、べムールはそれを許さず、次々と闇の波動弾を彼女達に向けて放ってきた。
 零夜達は波動弾を跳躍やサイドステップなどで回避するが、なかなか近付けず攻撃に結びつかない。零夜達は防戦一方でピンチになっているのだ。

「上手く近づけない!」
「このままだとジリ貧になりそう……」

 倫子と日和が冷や汗を流しながらどうするか考えようとしたその時、闇の波動弾の一つが床に当たって爆風を起こしてしまう。

「キャッ!」
「ミミ姉!」

 爆風に巻き込まれたミミはダメージを受けて転がってしまうが、すぐに立ち上がって戦闘態勢に入る。服は汚れた跡があるが、その様な事は気にしない。

「ミミ姉、大丈夫なのか!?」
「ええ。今のお陰で攻略方法が見つかったわ!」

 ミミはダメージを受けたが、それによって攻略方法を思い付いた。それを聞いた皆は一斉に彼女に視線を移してしまい、驚きを隠せずにいた。

「ええい!返り討ちにしてくれる!」

 べムールはすぐに闇の波動弾を両手から次々と投げ飛ばすが、ミミはリングブレードを使ってテニスの様に弾き返した。

「ぐはっ!」

 波動弾はべムールに直撃して爆発を起こし、彼はダメージを受けてしまう。それと同時に零夜達の反撃も始まりを告げられたのだ。
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