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第二章 隠されたホムラの陰謀

第四十五話 キララと鯛焼き

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 零夜達はそれぞれのグループに分かれてホムラの街を楽しむ事になり、六人ずつに分かれて行動している。グループ分けはこの通りだ。

・Aグループ:ミミ、キララ、ソニア、アミリス、トラマツ、ノースマン
・Bグループ:零夜、ルリカ、倫子、ヒカリ、エヴァ、ジャンヌ

 ミミ達は屋台通りをブラブラと歩いていて、どれに寄るか悩んでいた。ホムラでの屋台は和風が多いので、和菓子、寿司、たこ焼きなどが売られているのだ。

「ホムラの街って色んな物が売ってあるのね。私達の住んでいる日本と同じみたい」

 ミミはホムラの街並みを見ながら笑みを浮かべていて、アミリスとソニアは首を傾げながら疑問に感じてしまう。

「日本?聞いた事ないわね」
「アタイも初めて聞いたが……」

 うーんと唸る二人を見ていたミミは思わず苦笑いしてしまい、そのまま落ち着かせる様に彼女達の肩をポンと叩く。

「何れにしても私達の世界に向かう事になるし、その時は日本という国を紹介するから」
「ええ」
「了解」

 ミミの笑顔にアミリスとソニアが笑顔で頷いたその時、キララがある屋台を見つける。それは鯛焼き屋という屋台で、彼女は目を輝かせながらそちらの方へ向かっていた。

「キララ?」

 ミミがキララの方を向きながら声をかけた途端、思わず彼女は背筋を伸ばしてしまい、すぐにミミの方を向いた。

「ご、ごめんなさい……鯛焼きが気になって……」

 キララは恥ずかしそうな表情で、赤面しながらミミに謝罪をしていた。その様子にミミは苦笑いしながらも彼女の頭を撫で始める。

「大丈夫よ。あなた、鯛焼きが大好物だったのね」
「うん……鯛焼きを好きになったのも……彼がいたからよ……」

 キララは赤面しながらも正直に鯛焼きが好きである事だけでなく、過去の出来事が切欠で鯛焼きが好きになった事を話し始めた。その様子だと、ミミ達に出会う前に何かあったに違いない。

「恐らく過去の出来事が切欠なのは間違いない。何があったのか正直に話してくれないか?」

 トラマツは真剣な表情でキララに説明をして欲しいと頼み込み、ノースマン達もそれに頷く。彼女は勿論コクリと頷きながら承諾していた。

「ええ。あれは……あなた達と出会う二ヶ月前の頃だったわ。その時の私はかつて存在した世界『ヴァリュース』でパーティーとして活動していたの」

 キララは過去の事を思い浮かべながら、ミミ達に鯛焼きが好きになった理由を話し始めた。



 二ヶ月前、かつて存在していた世界『ヴァリュース』にある街で、キララは仲間達と共に観光を楽しんでいた。当時の彼女には三人の仲間がいた。
 一人目は異世界から来た古川裕太郎ふるかわゆうたろう。平凡な男子高校生だったが、事故で転生してこの世界に召喚していた。因みに彼のクラスは剣士である。
 二人目は魔術師のアナ。彼女は平凡魔術師だが、諦めない努力家である。
 三人目は僧侶のメイリー。心優しき女性で回復魔術は天下一品。しかし、最近では近接攻撃を覚えようと奮闘しているのだ。

「凄い街だな……お祭りでもないのに、こんなに賑やかだなんて……」

 裕太郎はキョロキョロと辺りを見回しながら、街の風景に驚きを隠せずにいた。その様子にメイリーは微笑むのも無理はない。

「この街ではいつもの事ですからね。行商人など沢山います」
「更に多くの食べ物屋台も並んでいるからね」
「なるほど……ん?」

 メイリーとアナの説明に裕太郎が納得する中、一つの屋台を見つける。それは鯛を形とした暖かいお菓子が売られている屋台で、「たいやき」という文字が書かれていた。
 それは鯛の形を取った金属製焼き型で焼いて作られていて、中にはあんこやクリームなどが入っている。日本国内ではお馴染みのお菓子だが、この世界にあるのは初めてだ。

「こんなところに鯛焼き屋があるのか……なんか意外だな……」

 裕太郎は真顔で鯛焼き屋を見ながら驚いている中、キララは興味を持ちながらこの屋台を見ていた。猫の獣人族は魚が大好きなので、この鯛焼きも魚の一種と感じていたのだろう。
 その様子に気付いた裕太郎は、屋台に近付いて鯛焼きを買う事にした。

「四つお願いします」
「あいよ。一つ二百エルグだから、八百エルグね」

 裕太郎はお金を払ったと同時に、四つの鯛焼きを受け取った。そのままメイリー、アナ、キララにあんこ入りの鯛焼きを一つずつ渡し始めた。
 キララは鯛焼きを手にした瞬間、鯛焼きは焼き立ての為、掌に温かさが伝わってくる。彼女は鯛焼きをじっと見ながら目を輝かせていた。

「ホカホカしている……食べていいかしら?」
「どうぞ」

 裕太郎から許可をもらったキララは、鯛焼きを一口頭の方から食べ始める。すると、ホクホクの暑さは勿論、生地の柔らかさとあんこの甘味がじんわりと口いっぱいに広がる。初めて食べた鯛焼きの味に、満面の笑みとなっていたのだ。

「本当に美味しい!ありがとう、裕太郎!」
「気に入って良かった。それにしても、キララがこんな可愛い顔をするのは初めて見たな」

 キララの満面の笑みに、裕太郎が笑顔で返しながら満面の笑みを称賛していた。それに気付いたキララは赤面してしまい、素直になれず顔を横に向いてしまう。

「別に……そんなんじゃないからね……」
((素直じゃないわね(ですね)……))

 キララのツンデレにアナとメイリーは心の中で思いながら微笑んでいたのだった。



「それがあるからこそ、鯛焼きが好きになったの。けど、裕太郎はもういない……アークスレイヤーによって死んでしまい、アナとメイリーも行方が分からないの……」

 キララは過去の事を話し終えたが、突然目に涙を浮かべてしまう。
 そう。キララ達はアークスレイヤーとの戦いで敗北してしまい、彼等はアークスレイヤーの囚われの身となってしまった。
 キララは奴隷としてフルール基地へと送られ、アナとメイリーも奴隷として何処かの基地に送られてしまった。裕太郎は公開処刑となる銃殺刑で死んでしまい、同時に彼の死によって、ヴァリュースは滅亡してしまったのだ。

「アークスレイヤーの奴……どれだけ悪い事をすれば気が済むのだろうか……仲間に心の傷を負わせるのは非道過ぎるな……」
「分からない。ただ、奴等のやる事は外道すぎるし、目的の為なら世界を滅ぼしても構わない。フルール基地で救出した他の奴隷達も、同じ思いをしているだろう……」

 ノースマンとトラマツの推測にソニアとアミリスも何も言えず黙り込んでしまう中、ミミがキララをギュッと抱き締める。

「大丈夫、私が側にいるから。あなたを一人にさせない。絶対に!」
「うん……ありがとう……」

 ミミの励ましを受けたキララは、彼女に抱き着きながら落ち着き始める。すると、皆の腹が突然鳴り始めてしまった。

「……鯛焼き食べようか」
「そうね……まさかこんな所でお腹が減るなんて……」
「恥ずかしくて死にそうかも……」
「アタイとした事が情けないぜ……」

 ミミ達は思わず赤面しながらも、そのまま鯛焼きを買いに向かい出した。街中で腹の音を鳴らしてしまった恥ずかしさは、忘れる事はないだろう……
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