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第二章 隠されたホムラの陰謀

第四十三話 エヴァVSベイブ

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 エヴァは元凶であるベイブと相対し、ジリジリと距離を詰めながら警戒していた。
 ベイブはゴーレムとなっているので防御と攻撃は高いが、素早さは遅くなっている。対するエヴァは攻撃とスピードが持ち味だが、防御に関しては平均並みとなっているのだ。

(攻めるなら……今かもね!)

 エヴァは素早く駆け出してベイブに襲い掛かり、強烈なパンチを浴びせようとする。しかし、ベイブはパンチをガードで防ぐが、強烈な勢いによって身体ごと飛ばされてしまい、思わず背中を地面に強打してしまった。

「嘘だろ……ゴーレムの姿になった俺が飛ばされるなんて……これはあり得ないぞ……」

 ベイブはまさか自分が勢いよく飛ばされる事に驚きを隠せずにいたその時、エヴァが腕を鳴らしながらズンズンと彼に近付いてきた。
 エヴァの身体からは怒りと殺気のオーラが全開となっていて、こうなってしまうと誰も止められなくなる。つまりベイブは怒らせてはいけない人を怒らせてしまったのだ。

「私はあなたみたいな人を許さない……絶対に殺してやる!」
「そうはさせるか!」

 エヴァは怒りでベイブを殴り飛ばそうとするが、彼は起き上がって彼女を掴んで投げ飛ばそうとする。しかし、それより先にエヴァのパンチが早く、ベイブのボディーに激突した。

「ぐ……けど、ゴーレムの身体だからこそ、俺はここで倒れないぜ……この岩を破壊する事など不可能に近い!」

 ベイブは攻撃を喰らっても余裕の笑みを浮かべたその時、エヴァは次のパンチを繰り出す態勢に入っていた。しかも、彼女の身体からオーラが放出しようとしていて、そこから本気で殴りまくろうとしているのだ。

「まだやる気なのか!?」
「まー……けー……るー……かー……!」

 するとエヴァが怒りの本気モードとなり、拳で次々とベイブの身体に連続パンチを放ちまくる。パンチを受ける度に彼の身体は次々と削られていき、罅も次第に入り始めてきた。

「一度じゃ駄目から二倍に増やす!それでも駄目なら十倍に!それでも駄目なら……何度でも与えるのみよ!」

 エヴァは次々と連続パンチをベイブの身体に何度も当てまくり、彼の身体に罅が次々とできて崩れ落ちようとしていた。

「いくら岩石の身体で丈夫で強くなったとしても、必ず弱点が存在したり、攻撃されて崩壊されてしまう。エヴァを甘く見ていたのは大きな誤算だったな」

 零夜は真剣な表情でこの光景を見ながら推測し、ベイブのダメージは蓄積されていく。

「おのれ!邪魔をするな!」
「おっと!」

 ベイブはエヴァを殴り飛ばそうと拳を振るうがら彼女はバックステップで回避したと同時に、強烈な蹴りを彼の拳に放つ。
 すると岩の拳に罅が入り始め、腕全体に広がっていく。

「馬鹿な!俺の拳に罅が!」
「まだまだ行くわよ!」

 さらにそれだけでは終わらず、エヴァは隙を見つけて反対側の拳にも蹴りをいれる。するとその拳も罅が入り、同じ様に腕全体に広がる。これでベイブは両方の拳でのパンチが不可能になってしまった。

(エヴァが怒りを発動する事で、ここまで攻撃を仕掛けるとは……いや、彼女にはもしかすると未知の力があるかも知れない……ここは見守るしか方法はないな)

 零夜は心の中で自身がどうするか考えたその時、ベイブは自身の左腕を変形させ、バスターの銃口のような物に変化した。すると銃口から光が溜め込み始め、そのままエヴァに狙いを定めようとする。

「パンチが無くても俺にはこれがある!覚悟しろ、反逆者!」
「エヴァ、危ない!」

 零夜は危機を感じてすぐに爆弾を取り出そうとしたその時、エヴァが素早く移動して強烈なかかと落としを銃口に浴びせる。すると銃口に罅が入ってしまい、そのまま完全に砕けてしまった。

「馬鹿な!俺の銃口が破壊されるなんて!」

 ベイブの叫びと同時に全身に亀裂が入ってしまい、岩の身体が崩れて彼は生身の姿となってしまったのだ。おまけにアフロもボロボロになった以上、普通の人其の物としか言えない。

「俺の身体が……こんな展開で……」

 ベイブは呆然としたまま立ち尽くす中、エヴァは腕を鳴らしながらズンズンと彼に近づいていく。このまま彼を殺すつもりだ。

「ま、待て!俺はただ、べムール様の命令に従ったんだ……だ、だから許して……ぐおっ!」

 ベイブは必死で命乞いをするが、エヴァは聞く耳も持たず、左手で彼の顔面を掴んで強烈なアイアンクローを決めてしまう。

「皆の怒りを……思い知れ!」

 更にエヴァはベイブの頭を持ち上げたと同時に、そのまま右の拳で彼の心臓部分に強烈な一撃を与えてしまった。

「今の技……終わったな」

 零夜はこの光景をすぐに察し、戦いが終わったと判断する。ベイブは心臓部分にパンチを当てられていたが、なんと当たった部分が完全にめり込んで押しつぶされていたのだ。
 ベイブはそのまま消滅してしまい、その場には大量の金貨とアークスレイヤーのエンブレムが置かれていた。

「エヴァ……大丈夫か?」

 零夜は心配の表情で立ち尽くしているエヴァに駆け寄ると、彼女は涙を流しながらヒックヒックと泣いていた。仇を取ったとしても失った仲間は戻らない。残酷だがこれが現実だ。

「私……もっど早く気付いでいれば……ごんな事にはならながっだのに……うわあああああ!」

 エヴァは我慢できずに零夜に抱き着いてしまい、そのまま赤ん坊の様に大泣きしてしまった。そんな彼女を零夜は優しく抱き締め、ポンポンと背中を叩く。

「確かに失った仲間は戻れない……だが、俺達がそばにいる!お前は一人じゃない!皆が側にいるんだ!」
「零夜ぁ……ヒッ……ヒッ……うええ……」

 エヴァはすすり泣きながら零夜に抱き着いていて、彼は彼女が落ち着くまでそのまま優しく頭を撫でたたのだった。



 その後、エヴァはようやく泣き止み、奴隷達を連れてホムラへと向かっていた。奴隷達は全員無事で怪我一つなかったのが幸いだ。

「取り敢えずは奴隷達も救出したし、一件落着だな」
「うん……でも、もう少し早く来たら皆を救えたのに……」

 エヴァは自身の責任で深くため息をつく中、奴隷の一人が首を横に振る。

「エヴァの責任じゃないわ。悪いのはあいつ等だからね」

 更に他の奴隷達も頷き、次々とエヴァを励まし始める。

「そうそう。それにベイブを倒した姿はかっこよかったわ!心臓部分にパンチを当ててめり込ませるなんて!」
「私もスカッとしたわ。私達の為に本当にありがとう!」
「皆……!」

 奴隷達からの笑顔の励ましのエールにエヴァは目に涙を浮かべてしまうが、すぐに涙を拭いて零夜の方を向く。

「戻りましょう!私達の仲間の元へ!」
「おう!」

 エヴァの笑顔に零夜も笑顔で返し、彼女達は仲間達が待っているホムラへと向かい出した。
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