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第二章 隠されたホムラの陰謀

第四十二話 ベイブとの戦い

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 ベイブ達はシルバーウルフの襲撃と村人達の始末を終えた後、そのまま奴隷を連れてホムラ支部基地へと戻っていた。
 アーニャとサーシャは協力者に渡す為、奴隷商人に彼女達を引き渡し、残りの奴隷はホムラ支部基地に持ち帰りをしていた。

「そろそろこの時間だと協力者に渡っている頃だ。無事に成功すればいいが……」

 ベイブがアーニャとサーシャが無事に協力者の元に渡る事を願っていたその時、兵士の一人が慌てながら駆け付けてきた。その様子だと何かあったに違いない。

「その様子だと何かあったみたいだな。どうした?」

 ベイブは心配の表情で焦っている兵士に視線を移し、彼はそのまま報告し始める。

「申し上げます!先程奴隷商人に渡していた奴隷達は、何者かによって解放されました!更に奴隷商人も逮捕され、今は囚われの身となっています!」
「何!?」

 兵士からの予期せぬ報告にベイブは驚きを隠せず、兵士達も動揺している。まさかの横槍で作戦はぶち壊しにされてしまい、奴隷まで解放されてしまったら溜まったもんじゃない。
 ベイブはワナワナと震えながら怒りの表情をしてしまい、そのまま報告した兵士に視線を移す。

「ええい!すぐに協力者達に伝えろ!奴隷に関しては何者かによって解放されてしまったと!」
「はっ!ですが、ここにいる奴隷も解放されますので気を付けてください!」
「どういう意味だ?」

 兵士からの忠告にベイブがキョトンとしてしまったその時、兵士は服を脱ぎ捨てたと同時に、仲間の兵士達に襲い掛かる。

「こういう事だ!」
「「「ぎゃあああああ!」」」

 突然の襲撃に兵士達は次々と斬り裂かれてやられてしまい、そのまま金貨となって地面に落ちてしまった。

「この野郎……!仲間を殺すとは……一体どういうつもりだ!」

 ベイブはこの光景に冷や汗を流しながら兵士に向かって叫んだ直後、そこにいたのは兵士ではなく零夜だった。

「なんだと!?お前は選ばれし戦士の……」

 この光景にベイブは思わず驚きの表情をしてしまい、零夜はすぐに檻の鉄格子を忍者刀で切断する。それと同時に檻は破壊されてしまい、奴隷達は一斉に平原に降りて脱出してしまった。

「お前がシルバーウルフの村を襲った元凶だそうだな。俺の仲間の故郷に手を出した以上、容赦なく殺すのみだ。覚悟しろ!」

 零夜は冷静な表情で忍者刀の先をベイブに向けるが、心の中では怒りによって襲い掛かる気持ちが昂っている。仲間であるエヴァの故郷を滅ぼした怒りはこのぐらいでは済まなさそうだ。

「こいつめ!俺の計画をぶち壊しにしやがって!こうなったらお前を倒さなきゃ気がすまないぜ!」

 ベイブは自分のアフロに手を突っ込み、ある武器を取り出す。それは強烈なナイフであり、彼は片手で持ちながら戦闘態勢に入っていた。

「俺のアフロは何だって無限に出てくるぜ。その名も……アフロポケットだ!」
(アフロポケットか……名前的にはダサいが、厄介なのは間違いない。なら、ここは燃やすのがありかもな……)

 ベイブの説明に零夜は心の中でどうするか考え始め、すぐに戦闘態勢に入る。両者ともジリジリと一歩も引かずに立ち向かい、強い風が吹き始める。

「行くぜ!」

 先に動いたのはベイブ。ナイフを構えながら零夜に直進して襲い掛かる。しかも、そのナイフは象も捌く事ができる危険レベル。下手したら殺されてしまうのも無理ない。

「あらよっと!」
「何!?」

 しかし零夜は冷静に跳躍して回避してしまい、ベイブは驚きを隠せずにいた。
 それと同時に、零夜はそのまま口から火を吹こうとしていて、ベイブのアフロに狙いを定める。

「忍法、火遁かとんの術!」

 零夜の口から炎が吹かれ、そのままベイブのアフロに着火。アフロに着火した炎は次第に広まり、ついには頭全体を燃やしてしまった。

「あぢぢぢぢ!水!水!」

 ベイブはナイフを落としてしまい、慌てながら地面を転がって火を消そうとしていた。その隙に零夜は彼のナイフを奪い取り、忍者刀のオーブの中に入れてしまう。
 すると忍者刀は新たな姿に変化して、強烈な斬撃威力を持つ忍者刀になった。

「ナイフも回収したし、火を消してやるよ!そらよっ!」

 零夜は属性忍法である水遁すいとんの術を駆使し、両手からの水の波動攻撃をベイブに喰らわせる。
 水の波動で火は鎮火したが、ベイブの頭はボロボロになってしまい、アフロではなく変な髪型になってしまった。おまけにアフロポケットも使えなくったのも無理はない。

「俺の髪が……アフロが……」

 ベイブは自らのアフロを燃やされた事で泣いてしまい、零夜はすぐに止めを刺そうと忍者刀を引き抜く。その刃はとても鋭く、一撃必殺の威力を持つ。まさに最強の武器と言えるだろう。

「新しくできたアラハバキで終わらせてやるよ!風神波動斬ふうじんはどうざん!」

 刀から発せられた波動斬撃がベイブに襲い掛かるが、彼はすぐに両腕を岩に変えてしまい、そのまま攻撃をガードする。あまりの威力に後退してしまうが、それでも耐える事が出来た。

「両腕を岩に変えるとは……どうやら、一筋縄ではいかないな」
「よくも俺のアフロを燃やしてくれたな。お前は倒さないと気がすまないぜ!」

 零夜は冷静に判断をしながらベイブを見つめるが、彼は怒りの表情で零夜を睨みつけたと同時に、身体全体を岩で覆い始める。
 すると彼の身体は大きなゴーレムの身体へと変化してしまい、そのまま腕を鳴らして戦闘態勢に入る。

「この姿になるのは久し振りだ。さあ、始めようか!」

 ベイブの宣言と同時に、零夜と彼の戦いは第二ラウンドに突入した。



 一方、エヴァは村の皆や仲間を失ったショックが頭を離れず、一人で平原に仰向けの態勢で寝転んでいた。
 特に弟である僅か八歳のアルバスを失ってしまったのはとても辛かったのは無理もない。彼とは実の関係では無いのだが、彼女を姉と慕っていたので引き取って育てることになった。

「アルバス……なんでこんなに早く死んでしまったのよ……私が帰って来るまで無事にいてねって約束したのに……なんでこんなに早く死んでしまうのよ……」

 仰向けの態勢になっているエヴァの目から涙が溢れてしまい、我慢できずに泣いてしまう。

「私を置いて一人にしないでよ……嘘つき……!うわあああああ!!」

 エヴァは悲しみのあまり、そのまま大声で赤ん坊の様に泣いてしまった。辺り一面に彼女の泣き声が響き渡ろうとしていたその時だった。


「うわァァァァァァ!!」
「ふぇっ?」


 零夜の悲鳴が突然聞こえ、エヴァは泣くのを止めて悲鳴の音がした方を振り向く。すると、零夜が突然吹っ飛ばされてしまい、地面を引きずりながら倒れてしまったのだ。

「零夜、大丈夫!?」

 エヴァはすぐに立ち上がって零夜の元に駆け寄り、彼の傷を治癒し始める。

「ありがとな。実はシルバーウルフの村を襲った元凶を見つけ、奴を倒しに向かっていたんだ。そしたらそいつはゴーレムに変化して俺を殴り飛ばしたからな……」
「ゴーレム?」

 零夜の説明にエヴァが疑問に思いながら首を傾げる中、ズシンズシンと音が聞こえ始める。音のした方を向くと、大きなゴーレムが姿を現した。奴こそシルバーウルフの村を襲った元凶であるベイブだ。

「この程度か忍者。所詮お前はこの程度だったな……」
「こ、こいつめ……」

 零夜が怒りで立ち上がろうとしたその時、エヴァが前に出てベイブを真剣な表情で睨みつける。自身の故郷は勿論、家族や仲間も殺した者を絶対に許さないわけにはいかないのだ。

「今度は私が相手よ!故郷を滅ぼした罪……償わせてあげるわ!」

 エヴァは真剣な表情をしながら涙目で宣言し、そのままベイブを倒そうと戦闘態勢に入り始める。

「良いだろう。返り討ちにしてくれる!」

 ベイブも両手を打ち合わせながらエヴァに立ち向かい、同時に二人の戦いが幕を開けたのだった。
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