ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第一章 戦士達の集結

第十話 異世界への出発準備

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 トラマツは自らのバングルを押してウインドウを開き、画面をとある世界に映し変える。

「ん?これってファンタジー世界だよな……」

 零夜が疑問に思いながらスクリーンに視線を移すと、そこに映っているのは西洋ファンタジーの光景で、ドラゴンやゴーレム、勇者達の映像が映し出されていた。

「凄い場所ね……」
「私達、この世界に行くんだ……」
「興味湧いてきたかも……」
 
 ミミ達が異世界の冒険に興味を持ったその時、勇者達の姿の中に見覚えのある人物が見える。それは、夢の中で出会った狼の女性であるエヴァだ。

「おい!この女性って……エヴァじゃないか!?」

 零夜の叫びに全員が彼が指差す方を見ると、間違いなくエヴァの姿が見えていた。映像で見ると彼女は勇者パーティーとして活動しているのだろう。
 因みに服装も夢の中で会った時と同じ服装で、サスペンダーとカーゴデニムジーンズを着用している。

「そうだ。エヴァはこのファンタジー世界の一つである『グラディアス』にいる。今から君達はこの世界に向かわないといけない」
「じゃあ、アミリス、ソニア、ジャンヌもこの世界にいるという事なの?」

 倫子が疑問に感じた事をトラマツに質問し、彼も真剣な表情をしながらコクリと頷く。

「そう。彼女達はこの世界にいる事が明らかだ。早く彼女達と合流してメンバーを揃える事が重要となる。」

 トラマツの説明に零夜は真剣な表情で推測する。仲間を見つける事はそう簡単にいかないのは勿論、アークスレイヤーが阻止してくる可能性もあり得る為、油断ならない状況なのだ。

「更にアークスレイヤーのアジトもある為、油断は禁物と言える。しかも、ベクトルを撃退させていた実力がある以上、奴等はお前達を野放しに出来ないだろう」

 ノースマンからの真剣な表情での推測に、零夜達は思わず冷や汗を流しながら息を呑んでしまう。アークスレイヤーに目をつけられた以上は、命を狙われる可能性も高く、奇襲される事もあり得るのだ。

「私、なんか不安になってきた……」
「なんか怖くてゾッとしそうかも……」
「死ぬのは嫌だ……まだやりたい事があるのに……」

 ミミ、倫子、ヒカリは不安の表情をしながら身体をガタガタ震わせていて、目には涙が浮かべられていた。異世界に向かう事を楽しみにしていたが、まさか敵に狙われてしまうのは想定外だったのだろう。
 零夜は心の中で不安も残っているが、すぐに前を向いて真剣な表情をしている。彼はどの様な困難でも乗り越える覚悟があるからこそ、冷静に対処しているのだ。

(恐らくこの戦いは一筋縄ではいかない事は分かっている。しかし、俺達が動かなければ地球だけでなく、他の次元の人達までやられてしまう。それだけは阻止しなければ……)

 零夜は真剣な表情で考えたと同時に、まだガタガタ震えている倫子達に視線を移す。そしてそのまま……微笑みながら彼女達の頭を優しく撫で始める。

「「「あ……」」」

 零夜から頭を撫でられたミミ達は、思わず不安な表情から安堵の表情へと変わっていく。それと同時に心の中の不安も取り除かれていき、次第に落ち着きを取り戻すようになった。
 零夜は敵に対しては勇敢で立ち向かう部分もあるが、仲間達に対しては優しい一面がある。その為、この様な行動も得意としているのだ。

「大丈夫ですよ。その為にも俺がついています。不安にならずに前を向き、自らのやるべき事に集中する。それが今の俺達の役目です」

 零夜の笑顔によってミミ達の心の中の不安も完全に取り除かれ、彼女達はすぐに零夜に視線を移しながら笑顔で返す。

「心配してくれてありがとう。私達はもう大丈夫よ」
「いい後輩に慰められて嬉しさを感じるし、逆にやる気が出たかもね」
「皆にカッコ悪いところは見せられないし、気合を入れて頑張らないとね!」

 ミミ達はすぐに気合を入れ直したと同時に、自身達のやるべき事に集中する事を決断する。同時に彼女達も自身の役割を果たす為に、正々堂々と困難を乗り越えながら立ち向かう覚悟を胸に宿し始めた。
 それを見ていたトラマツとノースマンは、零夜の行動を感心しながら頷いていた。

「まさか零夜がやってくれるとはな……本当に大した奴だぜ」

 ノースマンは零夜の行動をすごく称賛していた。戦いの最中に不安になってしまうと士気も下がってしまう為、一気にピンチに陥る。その為、皆の不安を吹き飛ばしてくれる役目を持つのが必要になるのだ。
 それを零夜はミミ達を落ち着かせてやる気を出させた事で、見事その役割を果たしたのだ。

「零夜がいるからこそ、皆のやる気が上がる。折角だから彼をリーダーにしても良いんじゃないか?」
「へ!?」

 トラマツが零夜をリーダーにする事を提案するが、彼はいきなりの展開に驚きを隠せずにいた。たった一回の称賛な行動でリーダーになるだけでなく、いくらなんでも急に決められるのは驚くのも無理はないのだ。

「いやいや、いくらなんでも俺がリーダーだなんて……」

 零夜は頭を掻きながら不安な表情をしてしまうが、ミミが近付いて彼の手を強く握る。

「何言っているの。あなたが声をかけてくれなかったら、私達は不安で異世界に向かう事ができなかった。あなたがリーダーとして相応しいと思うわ」

 ミミが零夜を笑顔で励ましたと同時に、倫子とヒカリも同様の行為をしながら零夜に視線を合わせる。

「私もこの件については賛成する。零夜君がいると自然と勇気が湧いてくるし」
「折角だから引き受けないと!私達がサポートするから!」
「皆……俺、やります!」

 倫子とヒカリも零夜を笑顔で励ましながら、彼をリーダーになる事を推薦する。彼女達の笑顔を見た零夜は覚悟を決めたと同時に、リーダーになる事を決意したのだ。
 
「あと、出発については今から5日後、それまでに準備は怠るなよ」

 ノースマンからの忠告に零夜達は真剣な表情で頷き、今回はその場で解散という形になった。



 一方、ベクトルはボロボロの姿で倒れながらアークスレイヤーの基地に戻っていた。
 その姿に部下達はベクトルの今の姿に驚きを隠せずにざわつく中、ザルバッグは冷静に真剣な表情で彼を見つめている。

「その様子だと……どうやらやられた様だな……」
「ええ。私とあろう物がやられてしまいましたよ。あの東零夜という青年は……もしかすると化物としか言えないでしょう……」

 ベクトルからの説明に部下達は動揺を隠せず、不安によるざわつきの声が聞こえ始める。それでもザルバッグは冷静に対応しつつ、彼に視線を移しながら今後の事を話す。

「今はゆっくり休め。あまり無理はするな」
「では、そうさせてもらいます……」

 ベクトルはザルバッグに一礼した後、二人の部下に支えられながらその場を後にする。
 自身の部屋に向かうベクトルを見送ったザルバッグは、真剣な表情でざわつく部下達に視線を移す。それに気付いた彼等はすぐに姿勢を正し、ザルバッグに視線を合わせ始める。

「どうやら選ばれし戦士達の中には最強クラスと言える戦士もいる。各自油断せず引き締めて行動せよ!」
「「「はっ!」」」

 ザルバッグからの命令に兵士達は一斉に敬礼し、その場から持ち場へ移動し始める。それと同時に、アークスレイヤーも本格的に選ばれし戦士達を倒しに向かい始めたのだった。
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