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第二章 追放奴隷のシルバーウルフ
第61話 謎の男と奪還への序曲
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「ふう……カレー、美味しかった……」
「けど、蜂蜜とりんごの甘口はちょっと……」
その後、零夜達はコパールレイクでカレーを食べていて、倫子達は満足しながら平原に寝転んでいた。更にコパールレイクのカレーは蜂蜜とりんごをブレンドした甘口と判明され、子供でも安心して食べられそうである。
甘口が気に入らなかった者も数名はいるが、辛さの好みは人それぞれと言っても良いだろう。
「で、リスの獣人はサユリさんだな。このメンバーの中では最年長というところか」
「その通り。さゆりんご!」
リスの獣人でオーバーオールを着ているサユリは、頭の上に両手でりんごの形を作りながら笑顔になる。その瞬間……空から大きなりんごが降ってきたのだ。しかもその大きさは家一件分ぐらいだ。
「おわっ!」
「きゃっ!」
零夜達が危機感を感じて移動した直後、大きなりんごは音を立てながらズシンと落ちてしまった。もう少し早く彼等が気付いてなかったら、大きなりんごにぺしゃんこで潰されていただろう。
「殺す気か!」
「ごめん……このポーズをすると、何故か大きなりんごが降ってくるんだよね……」
零夜のツッコミに対し、サユリは頭を掻きながら謝罪する。まさか今のポーズが魔術になってしまったのは想定外であり、本人もそれが悩みの種であるのだ。しかしその技はいつか役に立つと信じていて、日々特訓を怠らずにしているのだ。
「オーガ族はアンナだけど、あなたはどんな力を持っているの?」
「私はアサシンとして活躍しているからね。動きやすさを重視しているし」
オーガ族のアンナは懐からナイフを取り出し、戦闘態勢に入る。更にもう片方は銃を手元に召喚しているので、バリバリの戦闘態勢に入っているのだ。
因みに衣装は青の袖無しボディスーツなので、動きやすさは抜群。アサシンとして似合うのは当然だ。
「おお!その様子だと大丈夫そうだな!」
「けど、ナイフの腕前が……」
アンナは試しにナイフを投げるが、手元が狂って変な方向に飛んでしまう。そのまま倫子の前に突き刺さってしまい、彼女はびっくりして尻もちをついてしまった。あと数センチぐらい離れてなかったら、脳天に直撃していたのだろう。
「危ないじゃないの!」
「ごめんなさい……どうやってもできないので……」
倫子の注意に対し、アンナはシュンと俯きながら謝罪する。今の投げ方をすれば逃げるのも無理なく、下手したら事故になる恐れもあるだろう。
「ラストはユイユイだけど、ユウユウの妹さんなのね」
「ええ。お姉ちゃんは魔術格闘家だから、私も同じなの」
「姉妹揃ってのコンビネーションは凄いからね。連係攻撃なら誰にも負けられないから!」
ユイユイはユウユウと同じ姿をしているが、服は肩紐付きチューブトップ、青いロングパンツ姿である。しかもへそ出しである為、服を交換したらどっちがどちらなのかさっぱり分からないだろう。
するとユイユイがユウユウの服に違和感を感じ、ロングパンツに視線を移していく。何か気になる事でもあるのだろう。
「あれ?お姉ちゃん、何時もの服は?白いラインが入ってないけど……」
「あっ!いけない!」
ユウユウはすぐにいつもの服ではない事に気付き、魔術でロングパンツから三本の白ライン入りジャージへと変化させる。いつもの服である事を確認したユウユウは、ユイユイに視線を合わせながら話しかける。
「奴隷にされたと聞いたけど、もう大丈夫なん?」
「うん。ウチ等は牢屋の中にいたけど、突然男の人が現れて奴隷商を斬り殺したんよ。そのまま私達を解放して外に出した後、そのまま何処かに行ってしまったけど」
「なるほど……今度会ったらお礼言っとかんとな」
ユイユイの説明を聞いたユウユウは、納得の表情で理解していた。もしユイユイ達を助けてくれた者が分かれば、すぐにでもお礼を言いたいぐらいだろう。
他の皆も納得の表情をする中、零夜とヤツフサはまだ疑問に感じていた。その人の正体が悪人なら倒さなくてはならないし、念の為に確認する必要があると判断しているのだ。
「どしたん?まだ聞きたい事があるん?」
零夜とヤツフサの様子に気づいたユイユイは、疑問に感じながら彼等に質問する。それに零夜達はコクリと頷き、真剣な表情で質問を始める。
「その人の姿と名前は?」
「確か髪を結った侍で、手には刀を握られていたんよ。名前を聞こうとしたけど、答えてくれへんかった」
「そうか。それだけでも十分だ。感謝する」
ユイユイの説明を聞いたヤツフサはお礼を言い、彼女も笑顔で応える。そのままヤツフサは真剣な表情をしたと同時に、その場にいる全員に視線を移す。
「一時はギルドに戻るとしよう。だが、ゲルガーはまたしても我々に刺客を放とうとしている。各自油断せず行動する様に!」
「「「了解!」」」
ヤツフサの指示に全員が真剣に答え、彼等はクローバールへと戻り始める。勿論ユイユイ達も同行する事になっているが、彼女達の安全を考えての行動である事に間違いない。
(恐らくユイユイ達を助けたのは、あの男に違いない。初代八犬士の……犬塚信乃かも知れないな……)
ヤツフサは心の中でそう思いながら、真剣な表情で考え事をしていた。その様子が気になったエヴァは、不思議そうに彼に視線を移す。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「?」
エヴァの質問に対し、ヤツフサは首を横に振りながら何でもない事をアピール。それにエヴァは疑問に感じながら、首を傾げるしか無かった。
しかし、彼等は気付いていなかった。この様子を何者かが盗撮していた事を……
※
「何!?奴隷商が殺されただと!?」
Fブロック基地の要塞の中では、部下のインプからの報告にゲルガーが驚きを隠せずにいた。あの奴隷商が殺される事は想定外であり、取引相手が亡くなった時点で大損害となってしまった。
「はい!何者かが奴隷商の店に侵入し、問答無用で奴隷商を殺しました!その後、彼は奴隷達を解放させ、何処かに消えてしまいました!」
インプからの報告に対し、ゲルガーは怒りで拳を震わせていた。その姿にインプは驚いてしまうのも無理はない。
奴隷商とは親しかった仲なのに、殺されてしまった事は大きな損失。その元凶である男に対して、最大限の復讐をしようと考えているのだ。
「あの男に関しては、見つけ次第通達しろ!どんな手を使っても構わん!」
「はっ!その件については承知ですが、奴隷の一部の行方も判明されました!」
「それは本当なのか!?」
インプはゲルガーの命令に敬礼しながら応え、更に新たな情報を伝え始める。それにゲルガーは彼に接近し、興味深い表情をしながら視線を合わせていた。顔が近づく程迷惑としか言えないだろう。
「落ち着いて聞いてください。ユイユイ、アンナ、サユリの三人は、八犬士達と共に行動している事が発覚しました。ステルスドローンカメラで確認したところ、間違いなく映っていましたので」
インプはカメラを取り出したと同時に、その映像をゲルガーに見せる。それは零夜達がユイユイ達と共に、クローバールに向けて歩いている姿だった。皆楽しく話している中、零夜は倫子とエヴァに密着されていたのだ。
「一部どうでも良いが、恐らく奴等はこのアジトを攻めに向かうだろう。奴等が来るまでは戦力を整えて待機しておけ。そして中に入れたと同時に、戦闘を開始するぞ!」
「はっ!」
ゲルガーの命令にインプは敬礼しながら応え、すぐに仲間達の元へと駆け出していく。同時に風も強く吹き始め、ゲルガーは戦いが始まろうとする予感を感じ取ったのだった。
「けど、蜂蜜とりんごの甘口はちょっと……」
その後、零夜達はコパールレイクでカレーを食べていて、倫子達は満足しながら平原に寝転んでいた。更にコパールレイクのカレーは蜂蜜とりんごをブレンドした甘口と判明され、子供でも安心して食べられそうである。
甘口が気に入らなかった者も数名はいるが、辛さの好みは人それぞれと言っても良いだろう。
「で、リスの獣人はサユリさんだな。このメンバーの中では最年長というところか」
「その通り。さゆりんご!」
リスの獣人でオーバーオールを着ているサユリは、頭の上に両手でりんごの形を作りながら笑顔になる。その瞬間……空から大きなりんごが降ってきたのだ。しかもその大きさは家一件分ぐらいだ。
「おわっ!」
「きゃっ!」
零夜達が危機感を感じて移動した直後、大きなりんごは音を立てながらズシンと落ちてしまった。もう少し早く彼等が気付いてなかったら、大きなりんごにぺしゃんこで潰されていただろう。
「殺す気か!」
「ごめん……このポーズをすると、何故か大きなりんごが降ってくるんだよね……」
零夜のツッコミに対し、サユリは頭を掻きながら謝罪する。まさか今のポーズが魔術になってしまったのは想定外であり、本人もそれが悩みの種であるのだ。しかしその技はいつか役に立つと信じていて、日々特訓を怠らずにしているのだ。
「オーガ族はアンナだけど、あなたはどんな力を持っているの?」
「私はアサシンとして活躍しているからね。動きやすさを重視しているし」
オーガ族のアンナは懐からナイフを取り出し、戦闘態勢に入る。更にもう片方は銃を手元に召喚しているので、バリバリの戦闘態勢に入っているのだ。
因みに衣装は青の袖無しボディスーツなので、動きやすさは抜群。アサシンとして似合うのは当然だ。
「おお!その様子だと大丈夫そうだな!」
「けど、ナイフの腕前が……」
アンナは試しにナイフを投げるが、手元が狂って変な方向に飛んでしまう。そのまま倫子の前に突き刺さってしまい、彼女はびっくりして尻もちをついてしまった。あと数センチぐらい離れてなかったら、脳天に直撃していたのだろう。
「危ないじゃないの!」
「ごめんなさい……どうやってもできないので……」
倫子の注意に対し、アンナはシュンと俯きながら謝罪する。今の投げ方をすれば逃げるのも無理なく、下手したら事故になる恐れもあるだろう。
「ラストはユイユイだけど、ユウユウの妹さんなのね」
「ええ。お姉ちゃんは魔術格闘家だから、私も同じなの」
「姉妹揃ってのコンビネーションは凄いからね。連係攻撃なら誰にも負けられないから!」
ユイユイはユウユウと同じ姿をしているが、服は肩紐付きチューブトップ、青いロングパンツ姿である。しかもへそ出しである為、服を交換したらどっちがどちらなのかさっぱり分からないだろう。
するとユイユイがユウユウの服に違和感を感じ、ロングパンツに視線を移していく。何か気になる事でもあるのだろう。
「あれ?お姉ちゃん、何時もの服は?白いラインが入ってないけど……」
「あっ!いけない!」
ユウユウはすぐにいつもの服ではない事に気付き、魔術でロングパンツから三本の白ライン入りジャージへと変化させる。いつもの服である事を確認したユウユウは、ユイユイに視線を合わせながら話しかける。
「奴隷にされたと聞いたけど、もう大丈夫なん?」
「うん。ウチ等は牢屋の中にいたけど、突然男の人が現れて奴隷商を斬り殺したんよ。そのまま私達を解放して外に出した後、そのまま何処かに行ってしまったけど」
「なるほど……今度会ったらお礼言っとかんとな」
ユイユイの説明を聞いたユウユウは、納得の表情で理解していた。もしユイユイ達を助けてくれた者が分かれば、すぐにでもお礼を言いたいぐらいだろう。
他の皆も納得の表情をする中、零夜とヤツフサはまだ疑問に感じていた。その人の正体が悪人なら倒さなくてはならないし、念の為に確認する必要があると判断しているのだ。
「どしたん?まだ聞きたい事があるん?」
零夜とヤツフサの様子に気づいたユイユイは、疑問に感じながら彼等に質問する。それに零夜達はコクリと頷き、真剣な表情で質問を始める。
「その人の姿と名前は?」
「確か髪を結った侍で、手には刀を握られていたんよ。名前を聞こうとしたけど、答えてくれへんかった」
「そうか。それだけでも十分だ。感謝する」
ユイユイの説明を聞いたヤツフサはお礼を言い、彼女も笑顔で応える。そのままヤツフサは真剣な表情をしたと同時に、その場にいる全員に視線を移す。
「一時はギルドに戻るとしよう。だが、ゲルガーはまたしても我々に刺客を放とうとしている。各自油断せず行動する様に!」
「「「了解!」」」
ヤツフサの指示に全員が真剣に答え、彼等はクローバールへと戻り始める。勿論ユイユイ達も同行する事になっているが、彼女達の安全を考えての行動である事に間違いない。
(恐らくユイユイ達を助けたのは、あの男に違いない。初代八犬士の……犬塚信乃かも知れないな……)
ヤツフサは心の中でそう思いながら、真剣な表情で考え事をしていた。その様子が気になったエヴァは、不思議そうに彼に視線を移す。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「?」
エヴァの質問に対し、ヤツフサは首を横に振りながら何でもない事をアピール。それにエヴァは疑問に感じながら、首を傾げるしか無かった。
しかし、彼等は気付いていなかった。この様子を何者かが盗撮していた事を……
※
「何!?奴隷商が殺されただと!?」
Fブロック基地の要塞の中では、部下のインプからの報告にゲルガーが驚きを隠せずにいた。あの奴隷商が殺される事は想定外であり、取引相手が亡くなった時点で大損害となってしまった。
「はい!何者かが奴隷商の店に侵入し、問答無用で奴隷商を殺しました!その後、彼は奴隷達を解放させ、何処かに消えてしまいました!」
インプからの報告に対し、ゲルガーは怒りで拳を震わせていた。その姿にインプは驚いてしまうのも無理はない。
奴隷商とは親しかった仲なのに、殺されてしまった事は大きな損失。その元凶である男に対して、最大限の復讐をしようと考えているのだ。
「あの男に関しては、見つけ次第通達しろ!どんな手を使っても構わん!」
「はっ!その件については承知ですが、奴隷の一部の行方も判明されました!」
「それは本当なのか!?」
インプはゲルガーの命令に敬礼しながら応え、更に新たな情報を伝え始める。それにゲルガーは彼に接近し、興味深い表情をしながら視線を合わせていた。顔が近づく程迷惑としか言えないだろう。
「落ち着いて聞いてください。ユイユイ、アンナ、サユリの三人は、八犬士達と共に行動している事が発覚しました。ステルスドローンカメラで確認したところ、間違いなく映っていましたので」
インプはカメラを取り出したと同時に、その映像をゲルガーに見せる。それは零夜達がユイユイ達と共に、クローバールに向けて歩いている姿だった。皆楽しく話している中、零夜は倫子とエヴァに密着されていたのだ。
「一部どうでも良いが、恐らく奴等はこのアジトを攻めに向かうだろう。奴等が来るまでは戦力を整えて待機しておけ。そして中に入れたと同時に、戦闘を開始するぞ!」
「はっ!」
ゲルガーの命令にインプは敬礼しながら応え、すぐに仲間達の元へと駆け出していく。同時に風も強く吹き始め、ゲルガーは戦いが始まろうとする予感を感じ取ったのだった。
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