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第一章 珠に導かれし戦士達

第33話 Gブロックボスのバンドー

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「まさかこんなにも奴隷がいるとは……まずは彼女達を助けないと!」

 零夜達はこの部屋にいる奴隷達の元に向かい、アイリンの気功術で彼女達の体調を確認する。彼女達に病気の異常はないが、空腹となっているのは確かだ。

「今のところは異常はないけど、空腹みたい」
「分かった。すぐににぎり飯を渡しておく」
「にぎり飯……おにぎりの事ね」

 アイリンの説明を聞いた零夜は、バングルの中からにぎり飯を取り出す。それを見たアイリンが納得したその時、彼女達の腹が鳴ってしまった。どうやら彼女達も空腹で、先程の戦闘でお腹が空いたのだろう。

「お昼食べてなかったからな。せっかくだから昼食にしましょう」
「そうね……」

 零夜達もここでお昼を食べる事になり、倫子はヒューマンタイプのモンスター達を次々と召喚する。零夜はにぎり飯をたくさん用意し、それを二個ずつ皆に配りまくる。奴隷達はすぐに食いついて頬張りまくっているが、余程お腹が減っていたのだろう。
 しかも零夜が配るおにぎりは大きめのサイズなので、倫子達にとっては一個で十分じゃないかと感じるのも無理はない。食べ過ぎると太ってしまう可能性もあるからだ。

「一個で十分だから……」
「私も流石に……」
「私も……」
「私も一個にします」

 倫子達女性陣はにぎり飯一個で十分となるが、ベルは問題なく食べていた。彼女も大食いであるので、二個ぐらいは問題ないだろう。

「はい、お茶」

 更に零夜はお茶を次々と用意し、奴隷達は受け取ったと同時にゆっくりとお茶を飲む。これで腹が満たされて落ち着いたところで、奴隷達が零夜達に向かって一礼をしてきた。

「ありがとうございます。私達はマキシによって襲撃を受けてしまい、囚われた直後にバンドーの奴隷とされていました」 
「囚人と同じ生活なので大丈夫でしたが、夜になると私達の身体を弄ばれて……うう……」

 奴隷達は夜の出来事を思い浮かべながら、ヒックヒックと泣いてしまった。その内容については気になる部分もあるかも知れないが、聞いてしまったらボコボコにされてしまうので止めておく事にした。

「奴隷紋とかは付いていないのか?」
「ええ。奴隷契約はしていないので、捕虜の扱いとなっています」

 奴隷の一人は手の甲を零夜達に見せながら、奴隷紋が無い事を証明する。他の人も奴隷紋が無かったので、すぐにでも脱出可能である事は間違いないだろう。

「何れにしてもバンドーとは戦わなければならなくなるが、まずは奴隷達を連れて全員離脱した方が良いな」

 ヤツフサからの指摘を受けた零夜達は、奴隷達に視線を移す。彼女達は武器や能力を持っていないので、あまり無理をさせるわけにはいかない。ここは離脱した方が得策と言えるだろう。
 
「そうだな……じゃあ、ここは離脱した方が良い。兵士達は既に全滅しているから、急いでこの場から逃げてくれ」
「ありがとうございます。では、失礼させて貰います」

 奴隷達は急いでその場から移動し、基地の出口へと向かい出した。その様子を見ていたアイリンは寂しそうな表情をしていて、目には涙が浮かんでいた。

「その様子だと、ベティとメディは見つけられなかったみたいね」
「ええ……折角会えると思っていたのに……何処にいるのよ……ヒッ……ヒッ……」

 アイリンは我慢できずにヒックヒックと泣いてしまう。かつての仲間が悪鬼に囚われていて、僅かな希望でも見つかって欲しいと信じていた。しかしこのGブロック基地には二人の姿がいなかったので、泣いてしまうのも無理なかった。
 その様子を見た日和はアイリンを抱き締め、彼女の背中をポンポンと撫で始める。

「大丈夫。きっと見つかるから。ね?」
「ううーっ……」

 アイリンが泣き止むまで時間が掛かるので、暫くそのままの状態でいる事に。しかし時間は待ってくれない。バンドーがいる限り、この基地での戦いは終わりを告げられないからだ。

「ともかくバンドーを倒さなければ、任務完了とは言えない。アイリンが泣き止み次第行動を実行する。」

 ヤツフサからの指示を聞いた零夜達は、真剣な表情でコクリと頷く。アイリンが泣き止んだのはそれから数分後の事だった。

 ※

 そして3階にあるボスの部屋に辿り着いた零夜達は、真剣な表情をしながら前を向いていた。目の前にある扉の先には、Gブロックのボスであるバンドーが待ち構えているのだ。
 因みにベルとライラ、モンスター達については、既にそれぞれのバングルの中に戻っている。

「いよいよバンドーとのご対面か。今から扉を開けます!」

 零夜は前に出たと同時に、扉をゆっくりと開け始める。その先には中年の姿をしていて、貴族風の服を着ている男が座っていた。よく見ると豚の体型をしているのには間違いなく、頭もてっぺんがツルピカだ。

「よくここまで来たな。わしの邪魔をする気なのか?」
「当たり前だ。バンドー、アンタが後楽園襲撃の黒幕の様だな。どうしてこんな事をしたのか教えて貰おう!」

 零夜は真剣な表情でバンドーを睨みつけ、倫子と日和もコクリと頷く。後楽園を襲撃した理由が明確で無ければ、わざわざ襲撃する必要も無かった筈だろう。
 それを聞いたバンドーは真剣な表情をしながら、零夜達に話し始める。

「タマズサ様からの命令だ」
「タマズサ……じゃあ、まさかあなたはその命令通りにやっていたという事なの!?」

 バンドーの解答に零夜達は驚きを隠せず、アイリンは驚きながらも彼に質問する。それにバンドーはコクリと頷き返し、椅子からゆっくりと立ち上がる。

「そうだ。わしはかつて貴族だった。しかし悪事を繰り返した挙句、貴族の権利を剥奪されて牢獄行きとなった。そこでタマズサ様と出会い、今に至るという事だ」

 バンドーは自身の過去を零夜達に話したと同時に、懐からとある物を取り出す。それは紛れもなく鞭其の物だ。

「タマズサ様に拾われた恩を返す為なら、どんな事でもやり遂げる覚悟だ。邪魔をするなら容赦せぬ!」

 バンドーは右手に鞭を構え、床を強烈に叩きつけて戦闘態勢に入る。彼はタマズサに対して本気で忠誠を誓っている以上、ここでやられる理由にはいかないのだ。たとえ誰が相手であろうが、構わないのだろう。

「奴は本気でタマズサに忠誠を誓っているのか……なら、俺達はお前を始末する!」
「後楽園で殺された皆の仇……必ず取るから!」
「私達は絶対に負けられない!」
「アンタは絶対に倒すから!行くわよ!」

 零夜達四人はそれぞれの武器を構え、一斉に戦闘態勢に入る。後楽園での惨劇を起こした黒幕を倒すだけでなく、奴隷達を悲しませた事、多くの人達を殺した報いを受けてもらう為にも、絶対に負けられない戦いになるだろう。
 更に忘れてはならないのが、この戦いこそ八犬士としての役割を果たせるかの重要な試練。もし失敗したら、八犬士の戦士を剥奪される恐れもある。まさにプレッシャーの掛かる戦いになりそうだが、目の前の事に集中すれば問題なく戦えるだろう。

(この戦いはタマズサを倒す試練だけでなく、多くの悲しみによる怒りをどうぶつけるかだ。八犬士達よ、お前達の力を見せてもらうぞ!)

 ヤツフサは真剣な表情で零夜達を見つめたと同時に、彼等は一斉に駆け出しながらバンドーに立ち向かう。そのままGブロック基地でのラストバトルが始まりを告げられ、お互い勢いよく飛び出し始めたのだった。
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