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第一章 珠に導かれし戦士達

第26話 ダークテイマーとの戦い

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 零夜はモンスターを次々繰り出す元凶を倒す為、風の様に素早く駆け出していた。次々とモンスターが彼の前に立ちはだかるが、忍者刀、苦無、火薬玉を駆使しながら問題なく蹴散らしている。

(元凶がこの先にいるとなると、油断は禁物となるだろう。しかし、俺はこの程度で諦める理由にはいかない!)

 零夜は心の中でやる気を奮い立たせながら、次々と襲い掛かるモンスターを倒しまくっていく。モンスターを召喚する元凶を倒さなければ、この戦いは終わりを告げられないのだ。

(元凶は……あの男か!)

 零夜の視線の先には、モンスターを召喚する黒いローブの男がいた。彼の手から次々とスピリットを放出していて、それがモンスターへと変化しているのだ。

「これでも喰らえ!」

 零夜は苦無を真っ直ぐ投げ飛ばし、ローブの男に向かっていた。しかし彼は回避したと同時に、召喚を中止して零夜に視線を移していた。

「貴様か!私の仕事の邪魔をするのは!」
「ああ!お前は一体何者だ!」
「私の名はギルディス!Gブロック所属の副隊長であり、ダークテイマーだ!」

 ローブの男であるギルディスは自己紹介したと同時に、戦闘態勢に入る。彼がGブロックの副隊長である以上、容赦なく倒すしか方法はないだろう。

「アンタがGブロック副隊長なら、丁度いい。モンスターの召喚を終わらせ、必ず倒してみせる!」

 零夜は真剣な表情をしながらギルディスを指差し、この場で強く宣言する。それを聞いた彼が怒るのも無理なく、その証拠に拳を強く握っている。今の宣言にストレスが最高潮に達したのも、無理ないと言えるだろう。

「おのれ!ここまで馬鹿にするのなら容赦しない!攻撃開始だ!ケンタウロス!」

 ギルディスはケンタウロスを召喚し、零夜に襲い掛かる様仕向ける。彼はそのまま頷いたと同時に、命令通り零夜に向かって駆け出した。

(ケンタウロスは突進力が強いが……奴の弱点は目に見えている!)

 零夜は素早い動きでケンタウロスの突進を回避し、苦無を構えながら敵に狙いを定め始める。ケンタウロスは素早い動きと攻撃力が持ち味なので、ここは策略で勝負するしかないと判断しているのだろう。

「見えた!苦無攻撃!」
「ぐおっ!?」

 零夜は苦無を素早く投げ飛ばし、ケンタウロスの馬部分の身体に命中する。するとケンタウロスは急に眠くなってしまい、そのままバタンと倒れて寝てしまった。

「馬鹿な!ケンタウロスが眠っただと!?」

 ケンタウロスが倒れた事にギルディスが唖然とする中、零夜は真剣な表情をしながら彼に苦無を見せる。その先には特殊な青いオーラが込められていて、それによって状態異常を起こしているのだ。

「こいつは睡眠苦無。当たった者はダメージを受けるだけでなく、数時間は眠ってしまう。俺の苦無を甘く見るなよ?」
「貴様……なら、これならどうだ!」

 ギルディスはワナワナと震えた直後、次の一手であるモンスターを召喚する。そのモンスターはビートルマンだが、角が五本生えているのだ。

「ビートルマンの様だが、亜種なのか?」
「そうだ!こいつはゴホンヅノビートルマン!こいつはかなり手強いぞ!」
(ゴホンヅノオオカブトを思い出すが、もしかするとコーカサスやヘラクレスもいそうかもな)

 ビートルマンの亜種であるゴホンヅノビートルマンは、空を飛びながら零夜に襲い掛かってくる。彼はビートルマンと同じ行動をするが、繰り出すゴホンヅノのタックルはかなり強烈なので要注意だ。

「喰らえ!ビートルタックル!」

 ゴホンヅノビートルマンは空中からの急降下で、強烈なタックルを零夜に仕掛けようとする。しかし彼は平然としていて、息を大きく吸い込み始めていた。何か策があるに違いないと感じるが、零夜は目を見開いたと同時に忍法を発動する。

「忍法!火炎の術!」

 零夜の口から炎が吹かれ、ゴホンヅノビートルマンに直撃する。虫モンスターの弱点は炎の為、この忍法は効果抜群のダメージを与えてしまうのだ。

「あっぢィィィィィ!!」

 ゴホンヅノビートルマンは炎に包まれながら悲鳴を上げてしまい、地面に墜落して戦闘不能になる。同時に金貨と素材であるカブト虫のツノとなり、零夜はそれを拾いながら回収した。

「虫属性には炎が弱いからな!」
「おのれ!こうなったら最後のモンスターだ!ヴァルキリー!」
「ヴァルキリー!?」

 ギルディスは怒りでワナワナと震え、バングルから最後のモンスターを召喚する。するとスピリットが変化して現れたのは、白いロングヘアをした女性だった。
 背中に翼が生えていて、兜を被っているのが特徴である。その彼女こそヴァルキリーであり、モンスターの一種でもあるのだ。
 
(ヴァルキリー……まさかこの世界で見れるとは驚いたが、彼女もモンスターなのか?いや、この場合はモンスター娘というのもありだが……)

 零夜はヴァルキリーに対して心の中で疑問に思う中、ヴァルキリーは剣と盾を構えながら戦闘態勢に入り始める。彼女は目の前の敵には容赦ない性格なので、今はそんな事を考えている場合ではないだろう。

「あなたを始末します!」
「っと!危なっ!」

 ヴァルキリーは零夜に対して剣で攻撃を仕掛けるが、彼はサイドステップで回避する。更に彼女は次々と連続攻撃を繰り出してくるので、零夜は回避しながら逃げ続けている状態となっていた。

(やはりヴァルキリーはモンスター娘として認識されている。恐らくこの世界にもモンスター娘がいるのなら、スカウトしたいぐらいだ……そうだ!あのスキルなら使えるぞ!)

 零夜の頭の中で閃きが走り、すぐに逃げるのを止めてヴァルキリーに立ち向かう。いくら何でも自殺行為と言えるが、彼なりの考えがあるのだ。

「これで終わりです!」
「あらよっと!」

 ヴァルキリーの剣が零夜に襲い掛かるが、彼は素早い動きで回避する。同時にヴァルキリーの背後に移動し、彼女の腰を締め上げて身動きを取れなくしたのだ。

「な!?」
「新スキル発動!モンガルハント!」
「うぐ……」

 零夜の身体から音波が発せられ、ヴァルキリーは苦しみの表情をしながら音波攻撃を受けていた。するとヴァルキリーの身体から光が一瞬発せられ、それを見た零夜は彼女から素早く離れたのだ。

「ほう。捕まえて光らせただけか。しかし、この行為をしても無駄だと言えるだろう」

 ギルディスはニヤリと笑いながら零夜に視線を移すが、彼は余裕の表情をしていた。そのままチッチッチと指を振ったと同時に、ヴァルキリーに視線を移す。

「痛い目を見るのはアンタだよ!回れ右!」

 零夜の合図と同時にヴァルキリーが回れ右をした途端、彼女はギルディスに向かって襲い掛かってきた。しかも彼女は剣と盾を構えた状態で。

「な!?これは一体……」

 ギルディスが言い切ろうとしたが、彼はヴァルキリーによって斬り裂かれてしまった。彼はそのまま死亡してしまい、金貨となって地面に落ちてしまったのだ。

「モンガルハントは、ヴァルキリーなどのモンスター娘を必ず捕まえる特殊スキルだ。今のスキルがなかったら、彼女を始末していたのかもな」

 零夜はギルディスがいた跡地に向かってそう告げた直後、落ちている金貨を回収する。自分の使役しているモンスターに裏切られ、最期は斬り裂かれて死んでしまった。哀れな男としか言いようがないが、これも運命なのだろう。

「で、お前はこれからどうするんだ?」

 零夜はヴァルキリーに視線を移し、これからの事を質問する。すると彼女は彼の手を取り、笑顔を見せながら決意を告げようとしていた。

「私はあなたに付いていきます。あなたのスキルによって、自動的にギルディスから所有権が移りましたので」
「モンガルハントは悪人からモンスター娘を奪うのに最適だからな。これから宜しく!」
「こちらこそ!」

 零夜とヴァルキリーは握手を交わし、そのまま契約が結ばれた。同時にバイリス平原での戦いも元凶を倒した事で、終わりを告げられたのだった。
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