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プロローグ2 勇者一行の敗北

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 タマズサの合図で魔王軍による本格的な侵攻が開始され、多くの町や村が彼等の襲撃に遭ってしまった。それを聞いた騎士団達が奴等を対処して動き出したが、次々とやられてしまう被害が続出していく。
 こうなると頼りになるのは勇者達しかいない為、騎士団の一人は彼等の家に赴いて事情を説明する。その内容を聞いた彼等は納得の表情をしたと同時に、魔王タマズサを倒す為に立ち上がった。

「魔王の復活なら俺達に任せてください!新たな魔王が出ていたのなら放っておけません!」

 黒髪の少年は勇者であるケンジで、本名は三杉健二。元は地球から転生してきた男子高校生で、彼は剣士として動き出してから勇者にまで成長した。お調子者なのがたまに傷だが、勇者である実力を持つのは間違いない。

「へっ!相手が誰であろうとも、俺達の敵じゃないからな!」

 金髪で鎧を纏っている男性は、重戦士のゴドム。彼は大剣を扱う怪力の持ち主で、多くの敵を倒した実績を持つ。口は悪いが仲間思いの心優しき戦士である為、勇者パーティーには欠かせない存在なのだ。

「相手が誰であろうとも、私達の敵ではないからね。甘く見ると痛い目に遭う事を教えるわ!」

 赤いミディアムヘアの女性は魔導士のベティ。彼女は魔法学院を首席で卒業した実績を誇り、魔術も全て取得している。それによって素直になれない部分もあるが、心から仲間を思う気持ちは本物である。
 衣装に関しては黒い魔術帽子、赤いマント、緑のチューブミニドレスを身に纏っている。

「回復術には私に任せてください!誰も死なせません!」

 緑色の髪をしている女性は、僧侶のメディ。彼女は幼い頃から教会で育てられ、シスターの経験を元に僧侶として活動する事になった。回復や防御術はトップクラスで、心優しき性格で敬語を使っているのだ。
 衣装は白を基調とした長袖の僧侶服。シンプルな衣装を身に纏っている。

「私も格闘術でサポートするわ。皆のカバーができる自信があるからね」

 ピンクのロングヘアをしている女性は、格闘家のアイリン。彼女は父親から教えられた武術を駆使していて、多くの敵を倒した実績を持つ。さらに回復術も覚えているので、攻守一体の戦闘スタイルを持っているのだ。
 衣装は青いデニムジーンズと赤の袖無しチャイナドレスを着用している。

「魔王タマズサは女性と言われていますが、今までの魔王とは桁違いに強いとの事です!お気を付けて!」
「任せてください。俺達の手で終わらせましょう!行くぞ!」
「「「おう!」」」

 ケンジの合図と同時に、彼等はすぐにタマズサ討伐の為の準備を始める。彼等は先代魔王と戦った経験があるが、今回の戦いも気を引き締めて挑もうとしている。相手がどんなに手強い敵であっても、自分達の手でこの世界を守る決意を固めながら。
 しかし、彼等はタマズサの恐怖をまだ知らなかった為、この先の戦いで思い知らされる事になるだろう。

 ※

 タマズサとゴブゾウは支配下となった廃墟の村へと立ち寄り、部下であるインプから報告を受けていた。この村を拠点として基地を建てようとしているとの事で、すぐにでも建設を始めようとしているのだ。

「なるほど。その件については許可をしよう。だが、そのボスについてはどうするつもりだ?」
「話し合いで決めていますので、適任な方を用意するとの事です。その人物につきましては……」

 インプが言い切ろうとしたその時、別のインプが慌てながら駆け付けてきた。どうやら何か騒動があったに違いない。

「申し上げます!勇者一行がこちらに攻めてきます!我々を倒そうと躍起になっていて、止めようとしても返り討ちにされています!」
「勇者一行だと!?先代魔王と同じ悪夢が蘇りそうだ!」
「どうすればいいんだ!」

 ゴブゾウとインプ達は狂いながら踊りまくり、中には頭を地面にガンガン叩いたりする者までいた。しかしタマズサは冷静に判断していて、落ち着きながら全員に視線を移していた。

「落ち着け。相手が誰であろうとも、妾達の勝利は揺るがぬ。むしろ我々を敵に回すとどうなるのか……この世界の民どもに見せつけるチャンスだ」
「あ、なるほど……そうこうしている内に奴等が来ました!」

 インプが指差す方を見ると、ケンジ率いる勇者一行が姿を現していた。彼等は真剣な表情をしていて、魔王を倒そうと集中力を高めている。相手がどんな魔王でさえも、早めに倒して被害を食い止めようと決意を固めているのだ。

「貴様等がこの世界の勇者か……我々を倒そうとしているのか?」
「ああ。これ以上この世界を好き勝手させない。相手が誰であろうとも……俺は勇者としての役目を果たす!」

 ケンジは自身の持つ勇者の剣を強く構えながら、タマズサへと襲いかかる。彼は次々と斬撃を繰り出しながら攻めまくるが、タマズサは全て回避してしまう。
 するとタマズサは小さなバリアを展開し、攻撃を弾き返していく。同時に彼の隙を見つけ、自身の指から光線を発射しようとしていた。

「デス・ソーサラー!」
「!?」

 強烈な闇の光線が指から勢いよく発射され、そのままケンジの心臓部分を貫いてしまう。この光景にゴドム達は驚きを隠せず、アイリン達女性陣に至っては目に涙を浮かべていたのだ。

「お、俺の心臓が……貫かれて……がはっ!」

 心臓を貫かれたケンジは口から盛大に血を吐いてしまい、前のめりに倒れてしまう。そのまま彼は光の粒となって消滅してしまい、残ったのは彼の持っていた勇者の剣だけとなった。

「ふん。勇者の男がこの程度か。呆れて者も言えぬわ」

 タマズサは呆れた表情でケンジを馬鹿にしていて、それを聞いたゴドムは怒りでワナワナと震えてしまう。仲間を殺されただけでなく、冒涜されてしまった事に黙っては居られなくなったのだ。

「テメェ!よくも俺達の仲間を!ブレイクスラッシャー!」
「その攻撃は見切っておるわ!」

 ゴドムは大剣を振りかざしながらタマズサに攻撃を仕掛けるが、その攻撃は回避されてしまう。それどころか逆に彼女の拳をボディーに喰らってしまい、彼は思わず片膝をついてしまった。

「て、テメェ……」

 ゴドムは苦痛に悶えながらもタマズサを睨みつけるが、彼女は余裕の表情で見下している。すると彼の周りにインプ達が次々と集まり、あっという間に彼を取り囲んでいたのだ。

「俺達を忘れるんじゃねーぞ、馬鹿」
「テメェ等!俺の事を馬鹿にするんじゃねェェェェェ!!」
「ゴドム!挑発に乗らないで!」

 インプの挑発に対してゴドムはブチ切れてしまい、彼等に対して大剣を振りかざしながら攻撃してくる。ベティの言葉も聞かず、彼は一心不乱に大剣を振り回しながらインプ達を倒しまくっていく。

「あいつ、挑発に乗るとこうなるんだから……仕方がない。私達も加勢するわ!」
「ええ!やるからには立ち向かいましょう!ゴドムさんがピンチになります!」
「そうね。あと、ケンジの剣は回収しないと!大切な形見は拾っておかないとね!」

 ベティは呆れながらもゴドムに加勢し、メディも同様に後に続く。アイリンはケンジの剣を回収しに向かい出し、すぐに見つけて拾い上げた。

「回収完了!後はゴドムだけど……あっ!」

 アイリンは目の前の先に驚きを隠せず、思わず冷や汗を流してしまう。ベティとメディも同様に絶句していて、目には涙を浮かべていた。

「どうやらここがお前の墓場だな。兄ちゃん!」
「が……!」 
 
 そう。その先の光景は……ゴドムがゴブゾウが持つ槍によって、心臓部分を貫かれてしまったのだった。
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