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第12話 ライバルと恋心
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ーーーー時が流れ新たな歴史が積み重なるーーーー
アメリアを含め、ドラキュリア一族達は吸血鬼になった時に髪の色が漆黒に変化し、そして年を取ることは無くなった。
更に、異能の力を使うときと月の光を浴びたときに限り今までの瞳の色は緋色に変化する。
そして、ドラキュリア一族が冥界の神と血の契約直後、森の中は黒い霧に包まれその中心に黒曜石の城が土中から顕現した。ドラキュリア一族が吸血鬼となり冥界の神の眷属として活動する為の拠点の為に冥界の神ハデスから下賜されたのだ。
黒い霧に覆われた森は人々からは「魔窟の森」と呼ばれ昼間さえ近づくものはいなくなった。
アメリアは時折、魔窟の森の入り口にある湖の近くへ足を向けた。湖の脇にある小さな丘の上には1本のセコイアの木が立っている。ディーンとの思い出の場所だった。
「そう、この木の下で…………」
気付けば誰に話す訳でもなく言葉が零れていた。
甘く切ないディーンとの思い出が頭に蘇ってくる。
ーーーー
アメリアとディーンは幼馴染みであり良きライバルだった。小さい頃からお互いを知り、切磋琢磨しながら研鑽を積んでいった。
アテナ王国の王都ユストアにあるスターレン国立魔法学園に通い始めた後もそれは変わらなかった。その魔法学校は大昔に存在した大魔導師グレイ・スターレンに因んで創立された由緒ある学校である。
殆どの貴族は14才から17才で成人するまでこの学校に通うことになっていた。
最初、ディーンは首席で入学し、アメリアは次席。入学試験でディーンに負けていたことを知ってアメリアはショックを受けた。
「ディーン! 次は絶対に負けませんわ!」
アメリアはディーンに宣戦布告をした。
いつだってディーンはアメリアの言葉を受け流していたが、負けず嫌いのアメリアはディーンのその態度が気に入らなかった。
そのせいもあってディーンに何かと突っかかって行った。座学でも実技でも何度挑戦しても勝つことが出来ない事にいらだちは募っていった。
ある日、アメリアは1年生の最終試験でもディーンに勝てなかったことに悔しさを滲ませて学園の裏庭にある大きなハルニエの木の下で1人唇を噛みしめていた。
「なんだ、こんな所にいたのか? 探したよ」
声のする方に顔を向けるとディーンがゆっくりとアメリアの方に近づいて来た。
「どうしてあなたが私を捜してるのよ?」
アメリアは訳が分からず棘のある声を出した。
(誰のせいで私がこんな所にいると思っているのよ! あなたの顔を見ると悔しくて仕方がないから避けていたのに何で来るのよ! そりゃあ、ディーンが悪い訳じゃないけど、少しは私の気持ちを思いやっても良いんじゃない?)
そんな思いが頭を巡り、ついつい突っ慳貪な物言いになってしまうのを抑えることが出来なかった。
「どうしてって、君を修了パーティーに誘おうと思ってだけど」
「えっ?…………」
その意味がアメリアの脳内に到達するまで時間が掛かった。
何て言って良いか分からずディーンが見つめる群青色の瞳から目を逸らした。
毎年、年末試験が終了すると修了パーティーが開かれる。
必ずしもパートナーは必要ではなく、婚約者や恋人がいない人は通常1人で出席する。もちろん出欠は自由なので欠席することも構わない。
アメリアは婚約者も恋人もいないから1人で出席するつもりだった。友人達がいるから大丈夫だろう、そんな安易な考えもあった。
「なっ、なんで……」
「なんでって、ずっと前から君のことが好きだから……君は気づいていないようだったけどね」
やっと押し出した言葉にディーンが躊躇なく答えた。
「うっ、うそ……」
アメリアは思わず後ずさりすると背中に木が当たった。これ以上、後ずさることは出来ない。
徐々に顔に熱が集まってくるのを感じる。まともにディーンの顔を見ることが出来ない。アメリアはそれを隠すために顔をうつむけた。
「なんで俺が嘘を吐かなきゃならないの?」
見なくても分かる。直ぐ目の前にディーンが立っていることが…………。
(だって、ディーンは成績が良いだけじゃなくて見た目もかなり良くって、女子からはかなり人気があって、告白されていたことだって知っているし、私の事なんてライバルとしか視ていなくって…………だから、ドキッとした時だって気のせいだと思って…………)
アメリアはグルグルと駆け巡る様々な思いを何とか整理しようと試みていた。
(あっ、私今ドキッとした時って思った。そう、認めるわ。ディーンにときめいたことがあることを。それを封印していたことを)
アメリアはそっと上目遣いにディーンの顔を見上げた。火照った顔を隠す事が出来ない。
「うっ……」
目が合った瞬間、ディーンが右手で口を覆い顔を背けた。
「えっ? ディーン、どうしたの?」
「なっ、なんだ? この破壊力。普段勝ち気なくせに、その顔は反則だろ? 不味い、落ち着け、俺…………」
顔を背けたままブツブツと呟くディーンの耳が赤く染まっていた。
「大丈夫?」
アメリアがディーンに声をかけると、ディーンはハッとしてアメリアに顔を向けた。
「でっ、返事は?」
「あっ、あの……よろしくお願いします」
復活したディーンに、アメリアは小さな声で答えたのだった。
アメリアを含め、ドラキュリア一族達は吸血鬼になった時に髪の色が漆黒に変化し、そして年を取ることは無くなった。
更に、異能の力を使うときと月の光を浴びたときに限り今までの瞳の色は緋色に変化する。
そして、ドラキュリア一族が冥界の神と血の契約直後、森の中は黒い霧に包まれその中心に黒曜石の城が土中から顕現した。ドラキュリア一族が吸血鬼となり冥界の神の眷属として活動する為の拠点の為に冥界の神ハデスから下賜されたのだ。
黒い霧に覆われた森は人々からは「魔窟の森」と呼ばれ昼間さえ近づくものはいなくなった。
アメリアは時折、魔窟の森の入り口にある湖の近くへ足を向けた。湖の脇にある小さな丘の上には1本のセコイアの木が立っている。ディーンとの思い出の場所だった。
「そう、この木の下で…………」
気付けば誰に話す訳でもなく言葉が零れていた。
甘く切ないディーンとの思い出が頭に蘇ってくる。
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アメリアとディーンは幼馴染みであり良きライバルだった。小さい頃からお互いを知り、切磋琢磨しながら研鑽を積んでいった。
アテナ王国の王都ユストアにあるスターレン国立魔法学園に通い始めた後もそれは変わらなかった。その魔法学校は大昔に存在した大魔導師グレイ・スターレンに因んで創立された由緒ある学校である。
殆どの貴族は14才から17才で成人するまでこの学校に通うことになっていた。
最初、ディーンは首席で入学し、アメリアは次席。入学試験でディーンに負けていたことを知ってアメリアはショックを受けた。
「ディーン! 次は絶対に負けませんわ!」
アメリアはディーンに宣戦布告をした。
いつだってディーンはアメリアの言葉を受け流していたが、負けず嫌いのアメリアはディーンのその態度が気に入らなかった。
そのせいもあってディーンに何かと突っかかって行った。座学でも実技でも何度挑戦しても勝つことが出来ない事にいらだちは募っていった。
ある日、アメリアは1年生の最終試験でもディーンに勝てなかったことに悔しさを滲ませて学園の裏庭にある大きなハルニエの木の下で1人唇を噛みしめていた。
「なんだ、こんな所にいたのか? 探したよ」
声のする方に顔を向けるとディーンがゆっくりとアメリアの方に近づいて来た。
「どうしてあなたが私を捜してるのよ?」
アメリアは訳が分からず棘のある声を出した。
(誰のせいで私がこんな所にいると思っているのよ! あなたの顔を見ると悔しくて仕方がないから避けていたのに何で来るのよ! そりゃあ、ディーンが悪い訳じゃないけど、少しは私の気持ちを思いやっても良いんじゃない?)
そんな思いが頭を巡り、ついつい突っ慳貪な物言いになってしまうのを抑えることが出来なかった。
「どうしてって、君を修了パーティーに誘おうと思ってだけど」
「えっ?…………」
その意味がアメリアの脳内に到達するまで時間が掛かった。
何て言って良いか分からずディーンが見つめる群青色の瞳から目を逸らした。
毎年、年末試験が終了すると修了パーティーが開かれる。
必ずしもパートナーは必要ではなく、婚約者や恋人がいない人は通常1人で出席する。もちろん出欠は自由なので欠席することも構わない。
アメリアは婚約者も恋人もいないから1人で出席するつもりだった。友人達がいるから大丈夫だろう、そんな安易な考えもあった。
「なっ、なんで……」
「なんでって、ずっと前から君のことが好きだから……君は気づいていないようだったけどね」
やっと押し出した言葉にディーンが躊躇なく答えた。
「うっ、うそ……」
アメリアは思わず後ずさりすると背中に木が当たった。これ以上、後ずさることは出来ない。
徐々に顔に熱が集まってくるのを感じる。まともにディーンの顔を見ることが出来ない。アメリアはそれを隠すために顔をうつむけた。
「なんで俺が嘘を吐かなきゃならないの?」
見なくても分かる。直ぐ目の前にディーンが立っていることが…………。
(だって、ディーンは成績が良いだけじゃなくて見た目もかなり良くって、女子からはかなり人気があって、告白されていたことだって知っているし、私の事なんてライバルとしか視ていなくって…………だから、ドキッとした時だって気のせいだと思って…………)
アメリアはグルグルと駆け巡る様々な思いを何とか整理しようと試みていた。
(あっ、私今ドキッとした時って思った。そう、認めるわ。ディーンにときめいたことがあることを。それを封印していたことを)
アメリアはそっと上目遣いにディーンの顔を見上げた。火照った顔を隠す事が出来ない。
「うっ……」
目が合った瞬間、ディーンが右手で口を覆い顔を背けた。
「えっ? ディーン、どうしたの?」
「なっ、なんだ? この破壊力。普段勝ち気なくせに、その顔は反則だろ? 不味い、落ち着け、俺…………」
顔を背けたままブツブツと呟くディーンの耳が赤く染まっていた。
「大丈夫?」
アメリアがディーンに声をかけると、ディーンはハッとしてアメリアに顔を向けた。
「でっ、返事は?」
「あっ、あの……よろしくお願いします」
復活したディーンに、アメリアは小さな声で答えたのだった。
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