31 / 66
第二章 田舎娘とお猫様の初めての都会
田舎娘は、最後の仕上げをする
しおりを挟む
「アイラー! リオン連れて来たよー!」
そんな声と共に、サディさんがリオン様を連れて厨房までやって来た。いやちょっと待って。あなたたち私から見たら上司? とお客様だから。厨房に入って来るのはさすがにおかしいでしょ。
だけどそんなことなど、サディさんが気にするはずもない。彼女は半歩後ろに立っていたリオン様の頭を撫でながら、あっはっは、と笑っていた。
……神王様相手になんとも不敬な態度ではあるが、それがサディさんらしいといえばサディさんらしい。サディさんから更に一歩後ろに下がったリオン様も、彼女のことを半眼で見つめている。あの目は『こいつだから仕方がない』とでも思っているのだろうか。
リオン様は短く溜め息をつくと、物珍しそうに厨房内をぐるりと見回した。
「魔王の専属シェフとはどういうものかと思っていたが、なかなか設備は整っているようだな」
神王様らしく威厳のある物言いだけれど、ふんふんと厨房内に漂う匂いを嗅いで目を輝かせているその姿は子供らしく見えて可愛らしい。だからだろうか、私の緊張も少し解れてリオン様の言葉に返事をすることができた。
「はい。私も初めて見た時は驚きました。ですが、このような立派な厨房で料理をすることができて、私もとても楽しいですし、やりがいもあります」
「おお、それは良かった! それで、今日のメニューはいったいなんだい?」
サディさんの脳内はもうご飯のことでいっぱいらしい。今にもよだれを垂らしそうな表情を浮かべているけれど、そんな顔ですら様になるから美形というのは本当にずるいと思う。
私は苦笑しつつ、サディさんの質問に答えた。
「今日はおこ……じゃなかった、オムライスとハンバーグ、お魚のフライと、お野菜のスープ、そしてデザートにプリンをご用意しました」
いけないいけない、うっかりお子様ランチと口に出すところだった。
言葉に詰まったことを疑問に思われたらどう言い訳しようかと考えていたけれど、サディさんとリオン様は特にそれについては言ってこなかった。むしろ、私が並べたメニューの方が気になっているようだ。
「ハンバーグと魚のフライは分かるけど、オムライスとプリンは聞いたことがないなぁ」
「ぼくも初めて聞いた。なんだそれは? お前が元いた世界の料理なのか?」
「あ、はい。オムライスはお米……は、この世界ではなんというのか分からないですけど、白い小さな粒の穀物を炊いて、それをチッケの肉やオリヨンと共に炒めて、ケチャップというママトを加工した調味料で味付けをしたものを卵で包んだ料理です」
私のこの説明では上手く伝わらなかったようで、二人とも首を傾げていた。リオン様に至ってはこちらを訝しげに見つめてくる。きっと何か変なものでも食べさせられるのではないのかと疑っているのだろう。
「何度も味見はしました。きちんと美味しくできています」
こんな言葉では不安は拭えないだろうけれど、私だって自身の料理の腕はそれなりだと自負している。絶品とまではいかなくとも、普通に美味しい、くらいのものはできているはずだ。
「それでは今から最後の準備をしますので、お二人はお隣の部屋でお待ちください」
「はーい。それじゃ行こうか、坊ちゃん」
「お前、ジャルおじさんが帰って来たら言いつけてやるからな」
サディさんとリオン様は気安い様子で隣の部屋へと向かった。
よし、それじゃあ作業開始だ。
スープはいつでも出せるし、魚のフライ、ハンバーグは先にある程度火を通している。チキンライス……じゃなかった、チッケライスも先ほど温めたから、今からやるべきは卵で包む準備だ。
私は一時期、美味しいオムレツ作りに凝っていたことがある。それこそ毎日のように作っていたせいで、一人暮らしのくせに十個入りの卵二パックを一週間で使い切ってしまうくらいに。
「でもそのおかげで、綺麗なオムレツを作れるようになったんだよね」
その技術を応用していろんな具材を包んでいた。チキンライスだってもちろん包んでいる。つまり、オムライスは得意料理の一つでもあるのだ。
今日はお子様ランチのオムライスだから、気持ち小さめでいい。それでも卵は一人三つ使う。使い過ぎとか言われるかもしれないけれど、これが美味しいのだから仕方がない。
卵以外にもミルクも必要だ。このミルクの水分がオムレツ作りにいい効果を生み出すのだ。
ボウルに卵を三つ割り、ミルクを少量加えてしっかりとかき混ぜる。
「うーん、フォークやスプーンで混ぜるのもいいんだけど、やっぱり菜箸が欲しいなぁ」
前世が日本人であるためか、調理の際は菜箸がやはり使いやすく感じてしまう。物としては気持ち長い棒二本だから、誰かに言ったら作ってくれないだろうか。
まあ、今はそんな贅沢なことは言わないでおこう。それよりもオムライス作りに集中しなくては。
卵液の準備が終わったら、少し小さめのフライパンを強火で熱し、そこに多めの油を引く。目安としてはフォークの先端に付けた卵液がジュウッと音を立てる程度。そうなったら一度火を弱めて、卵液を一気に注ぎ入れる。ここからは時間との勝負だ。
「とにかくフライパンを揺らしながら卵を混ぜる!」
完全に固まらないように注意しながらひたすら混ぜる。ある程度卵の表面が固まったら一度火から上げて、そこにチッケライスを適量盛る。あとはこれを包むだけだ。
再び弱火でフライパンを熱し、頃合いを見ながら卵を返す。私はまず手前から奥側に向けて返し、卵の先端をフライパンの縁で焼いて固めてから、今度は手前に返し形を整えるという方法を採っている。
オムレツというものは手首をトントンと叩いて返すものだと思っていたから、このやり方を知った時はなかなかに衝撃的だった。
「でも、それでオムレツが得意料理になるんだから、人生分からないものだよね」
今世では卵はなかなかの貴重品だったから、そんな贅沢なものは作れなかったけれど。
「ふふ、これだけ卵もあるんだし、今度はケーキも焼いてみようかな」
ハンドミキサーなんて便利なものはないから、腕が大変なことになりそうだけどね。
そんなことを言っているうちに、綺麗なオムライスができあがった。あとはこれを大きめのお皿に移してケチャップを適量かけたら完成だ。
「よし、あとはハンバーグとフライ、スープを準備して……完成!」
本当はサラダも作った方が良かったのだろうけれど、これはあくまでお子様ランチ、そんな野暮なことは言うまい。一応、スープの方を野菜たっぷりにしているし。
さて、あとはこの料理を隣の部屋に運ぶだけ。ちなみに、そのためのワゴンが部屋の隅に置いてあるのはすでに確認済みだ。私はそのワゴンを引っ張り出そうと取っ手に手を掛ける。
……あれ、なんだか重い。
「え、なんで……って、マロン! あなたこんなところで寝てたの!」
ワゴンの下の、ナフキンや予備の食器なんかを置いておくスペースで、私の可愛いマロンが丸くなって――俗に言う『アンモニャイト』の形で、スヤスヤと眠っていた。
うう、こんなに心地良さそうに眠っているマロンを退かすのは気が引ける。だけど、ここは心を鬼にして接しないと。
「マロン、ここで寝ちゃだめだよ」
「ゥニャァ」
マロンの体に触ると彼女は不満げな声を漏らした。
「もう、ごめんね。マロンはベッドで寝ててね」
よしよしと頭を撫でてやれば、しょうがないとでも思っているのかフスッ、と鼻から空気を漏らす。そしてのそりと起き上がると、トコトコとマロン用の寝床へと歩いて行った。
「うん、これやっぱり私の言葉理解してるよね」
なんだろう、ちょっと嬉しいな。
少しだけ幸せな気分に浸りながらも、私は手早くワゴンを拭き上げる。ここに来て動物の毛の料理への混入は許されない。
ワゴンが綺麗になったことを確認してから料理を乗せる。ほかほかと湯気を立てる自信作は、我ながらとても美味しそうだ。
「お二人の口に合うといいな」
ドキドキとうるさい心臓を落ち着かせるように二回深呼吸して、私はリオン様とサディさんの待つ隣の部屋への扉を開けた。
そんな声と共に、サディさんがリオン様を連れて厨房までやって来た。いやちょっと待って。あなたたち私から見たら上司? とお客様だから。厨房に入って来るのはさすがにおかしいでしょ。
だけどそんなことなど、サディさんが気にするはずもない。彼女は半歩後ろに立っていたリオン様の頭を撫でながら、あっはっは、と笑っていた。
……神王様相手になんとも不敬な態度ではあるが、それがサディさんらしいといえばサディさんらしい。サディさんから更に一歩後ろに下がったリオン様も、彼女のことを半眼で見つめている。あの目は『こいつだから仕方がない』とでも思っているのだろうか。
リオン様は短く溜め息をつくと、物珍しそうに厨房内をぐるりと見回した。
「魔王の専属シェフとはどういうものかと思っていたが、なかなか設備は整っているようだな」
神王様らしく威厳のある物言いだけれど、ふんふんと厨房内に漂う匂いを嗅いで目を輝かせているその姿は子供らしく見えて可愛らしい。だからだろうか、私の緊張も少し解れてリオン様の言葉に返事をすることができた。
「はい。私も初めて見た時は驚きました。ですが、このような立派な厨房で料理をすることができて、私もとても楽しいですし、やりがいもあります」
「おお、それは良かった! それで、今日のメニューはいったいなんだい?」
サディさんの脳内はもうご飯のことでいっぱいらしい。今にもよだれを垂らしそうな表情を浮かべているけれど、そんな顔ですら様になるから美形というのは本当にずるいと思う。
私は苦笑しつつ、サディさんの質問に答えた。
「今日はおこ……じゃなかった、オムライスとハンバーグ、お魚のフライと、お野菜のスープ、そしてデザートにプリンをご用意しました」
いけないいけない、うっかりお子様ランチと口に出すところだった。
言葉に詰まったことを疑問に思われたらどう言い訳しようかと考えていたけれど、サディさんとリオン様は特にそれについては言ってこなかった。むしろ、私が並べたメニューの方が気になっているようだ。
「ハンバーグと魚のフライは分かるけど、オムライスとプリンは聞いたことがないなぁ」
「ぼくも初めて聞いた。なんだそれは? お前が元いた世界の料理なのか?」
「あ、はい。オムライスはお米……は、この世界ではなんというのか分からないですけど、白い小さな粒の穀物を炊いて、それをチッケの肉やオリヨンと共に炒めて、ケチャップというママトを加工した調味料で味付けをしたものを卵で包んだ料理です」
私のこの説明では上手く伝わらなかったようで、二人とも首を傾げていた。リオン様に至ってはこちらを訝しげに見つめてくる。きっと何か変なものでも食べさせられるのではないのかと疑っているのだろう。
「何度も味見はしました。きちんと美味しくできています」
こんな言葉では不安は拭えないだろうけれど、私だって自身の料理の腕はそれなりだと自負している。絶品とまではいかなくとも、普通に美味しい、くらいのものはできているはずだ。
「それでは今から最後の準備をしますので、お二人はお隣の部屋でお待ちください」
「はーい。それじゃ行こうか、坊ちゃん」
「お前、ジャルおじさんが帰って来たら言いつけてやるからな」
サディさんとリオン様は気安い様子で隣の部屋へと向かった。
よし、それじゃあ作業開始だ。
スープはいつでも出せるし、魚のフライ、ハンバーグは先にある程度火を通している。チキンライス……じゃなかった、チッケライスも先ほど温めたから、今からやるべきは卵で包む準備だ。
私は一時期、美味しいオムレツ作りに凝っていたことがある。それこそ毎日のように作っていたせいで、一人暮らしのくせに十個入りの卵二パックを一週間で使い切ってしまうくらいに。
「でもそのおかげで、綺麗なオムレツを作れるようになったんだよね」
その技術を応用していろんな具材を包んでいた。チキンライスだってもちろん包んでいる。つまり、オムライスは得意料理の一つでもあるのだ。
今日はお子様ランチのオムライスだから、気持ち小さめでいい。それでも卵は一人三つ使う。使い過ぎとか言われるかもしれないけれど、これが美味しいのだから仕方がない。
卵以外にもミルクも必要だ。このミルクの水分がオムレツ作りにいい効果を生み出すのだ。
ボウルに卵を三つ割り、ミルクを少量加えてしっかりとかき混ぜる。
「うーん、フォークやスプーンで混ぜるのもいいんだけど、やっぱり菜箸が欲しいなぁ」
前世が日本人であるためか、調理の際は菜箸がやはり使いやすく感じてしまう。物としては気持ち長い棒二本だから、誰かに言ったら作ってくれないだろうか。
まあ、今はそんな贅沢なことは言わないでおこう。それよりもオムライス作りに集中しなくては。
卵液の準備が終わったら、少し小さめのフライパンを強火で熱し、そこに多めの油を引く。目安としてはフォークの先端に付けた卵液がジュウッと音を立てる程度。そうなったら一度火を弱めて、卵液を一気に注ぎ入れる。ここからは時間との勝負だ。
「とにかくフライパンを揺らしながら卵を混ぜる!」
完全に固まらないように注意しながらひたすら混ぜる。ある程度卵の表面が固まったら一度火から上げて、そこにチッケライスを適量盛る。あとはこれを包むだけだ。
再び弱火でフライパンを熱し、頃合いを見ながら卵を返す。私はまず手前から奥側に向けて返し、卵の先端をフライパンの縁で焼いて固めてから、今度は手前に返し形を整えるという方法を採っている。
オムレツというものは手首をトントンと叩いて返すものだと思っていたから、このやり方を知った時はなかなかに衝撃的だった。
「でも、それでオムレツが得意料理になるんだから、人生分からないものだよね」
今世では卵はなかなかの貴重品だったから、そんな贅沢なものは作れなかったけれど。
「ふふ、これだけ卵もあるんだし、今度はケーキも焼いてみようかな」
ハンドミキサーなんて便利なものはないから、腕が大変なことになりそうだけどね。
そんなことを言っているうちに、綺麗なオムライスができあがった。あとはこれを大きめのお皿に移してケチャップを適量かけたら完成だ。
「よし、あとはハンバーグとフライ、スープを準備して……完成!」
本当はサラダも作った方が良かったのだろうけれど、これはあくまでお子様ランチ、そんな野暮なことは言うまい。一応、スープの方を野菜たっぷりにしているし。
さて、あとはこの料理を隣の部屋に運ぶだけ。ちなみに、そのためのワゴンが部屋の隅に置いてあるのはすでに確認済みだ。私はそのワゴンを引っ張り出そうと取っ手に手を掛ける。
……あれ、なんだか重い。
「え、なんで……って、マロン! あなたこんなところで寝てたの!」
ワゴンの下の、ナフキンや予備の食器なんかを置いておくスペースで、私の可愛いマロンが丸くなって――俗に言う『アンモニャイト』の形で、スヤスヤと眠っていた。
うう、こんなに心地良さそうに眠っているマロンを退かすのは気が引ける。だけど、ここは心を鬼にして接しないと。
「マロン、ここで寝ちゃだめだよ」
「ゥニャァ」
マロンの体に触ると彼女は不満げな声を漏らした。
「もう、ごめんね。マロンはベッドで寝ててね」
よしよしと頭を撫でてやれば、しょうがないとでも思っているのかフスッ、と鼻から空気を漏らす。そしてのそりと起き上がると、トコトコとマロン用の寝床へと歩いて行った。
「うん、これやっぱり私の言葉理解してるよね」
なんだろう、ちょっと嬉しいな。
少しだけ幸せな気分に浸りながらも、私は手早くワゴンを拭き上げる。ここに来て動物の毛の料理への混入は許されない。
ワゴンが綺麗になったことを確認してから料理を乗せる。ほかほかと湯気を立てる自信作は、我ながらとても美味しそうだ。
「お二人の口に合うといいな」
ドキドキとうるさい心臓を落ち着かせるように二回深呼吸して、私はリオン様とサディさんの待つ隣の部屋への扉を開けた。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
私の婚約者は6人目の攻略対象者でした
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。
すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。
そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。
確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。
って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?
ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。
そんなクラウディアが幸せになる話。
※本編完結済※番外編更新中
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる