52 / 54
後悔先に立たず 〜絢斗視点〜 その3
しおりを挟む
6月に入ってすぐ、俺達の結婚式の直前に、紗凪が妊娠していることがわかった。
紗凪の本性など知る由もなかった当時の俺は、紗凪との間に、こんなにも早く子供を授かれたことがとても嬉しくて、馬鹿みたいに浮かれていた。
紗凪のお腹の中ですくすくと育っているであろう我が子の姿を想像しながら、俺は今後命をかけて紗凪と子供の事を守っていこうと決意していた。
だから、紗凪のようにお腹の中で子供を育てられない分、身重の紗凪を労り、出産準備にも積極的に取り組んだし、紗凪がつわりが辛いから保育園を辞めたいと言い出した時も、すぐに賛同した。
紗凪との結婚に難色を示していた俺の両親も、紗凪の妊娠を知ると、手の平を返したように俺達の結婚を受け入れてくれ、初孫の誕生を待ち望んでくれるようになった。
そんな周囲の変化を受けて、俺は、愚かにも、世界中の全てが俺達の結婚を祝福してくれているように感じていた。
紗凪との結婚が、俺の『運命』だったのだと信じ込んでいたのだ。
その1週間後に行われた俺達の結婚式には、紗凪と俺の共通の友人という事で野口を始め中学の同級生を大勢招いて場を盛り上げてもらった。
真尋と面識のあった大学時代の友人や職場の仲間達は一様に紗凪に対して良い感情を抱いておらず、俺が真尋を捨てて紗凪に乗り換えたことに呆れ果て、冷めた視線を送ってきていた。今思い返せば、きっと彼等はすぐに紗凪の本性を見抜いていたのだと思う。
けれど、あの時の俺は、どれだけ周囲の人間に忠告されようと諭されようと、彼等が俺達の幸せを妬んでいるだけなのだと明後日の方向に解釈して、それらの言葉を軽くあしらい、聞く耳を持たなかった。
俺と紗凪は、式の翌日からイタリアへと新婚旅行に旅立った。
約1週間程滞在したイタリアはとても素晴らしい所だった。
料理もとても美味しかったし、街並みもテレビで見た通りとても洒落ていた。
ミラノやベネチア、フィレンツェ、ローマのなどの各都市を回り、市内観光をしながら様々な建築物や名画を見て歩いた。
某有名映画の舞台ともなったローマでは、紗凪が子供のようにとても燥いで、映画の中で有名女優が演じていた王女を真似て同じ場所でジェラートを食べたがったり、同じポーズで写真を撮りたがったりした。紗凪がとても興奮して喜んでいたので、俺はそれだけで有意義な時間を過ごす事が出来た気になっていた。
イタリアでの最終日、帰国する為にローマ・フィウミチーノ国際空港に着くと、紗凪は昨年オープンしたばかりの「エリアE」という免税ショッピングエリアで買い物がしたいと言い始めた。
時間を確認すると、飛行機の搭乗時間まではまだ少し余裕があった。搭乗時間までならばという約束で、俺はブランド店を回りながら次々と買い物をしていく紗凪の後ろについて歩いた。
けれど、元々人混みの苦手な俺は、30分程紗凪の後ろを歩いているだけでとても疲れてしまい、結局、残りの1時間弱は、2階にある飲食エリアのカフェで待っている事にした。俺が紗凪にそう言い残してカフェへと向かうその道すがら、偶然にも以前真尋が欲しがっていた香水が目に入った。
それを見つけた瞬間、俺の脳裏に真尋の喜びのあまり感涙に咽んでいる姿が浮かびあがり、気がつけば俺はその香水を購入していたのだった。
帰国後、初めての出社日、俺はいつもよりも少し早めの時間に出社した。
少し早めの時間とは言っても、それなりに混みあっているエレベーターの中で、俺は切なそうな表情でこちらを見つめてくる真尋の姿を認めた。
久々に目にした真尋は、普段ならば絶対に着ることのない色鮮やかな黄色のワンピースを身に纏っており、神々しいまでに美しかった。
真尋は、高橋と高遠と三人揃って仲良く出社してきたようで、2人とも真尋のすぐ傍に立っていた。
俺を見つけたことで明らかな動揺をみせている真尋の様子に気付いた高遠が、真尋の視線を辿るように俺の方へと振り返った後、真尋を守るように真尋の前へと移動した。俺の視界から真尋の姿を隠した高遠と大人しく高遠に守られている真尋に対して、俺は言いようのない苛立ちを覚えた。
エレベーターが俺達のオフィスがあるフロアに着くと、俺は高橋と高遠にだけ朝の挨拶をして自席へと向かった。敢えて真尋にだけは挨拶をしなかった。
真尋に非がない事は理解している。
元より俺には真尋を責める権利も、詰る権利もない。俺が先に真尋を裏切って一方的に切り捨てた。真尋の心を打ちのめす程に手酷く傷付けたという自覚もある。
それなのに俺は、身勝手極まりない理不尽過ぎる感情だと重々承知の上で、高遠に守られていた真尋に対して激しい憤りを覚えていた。
俺は自分が犯した鬼畜の所業の全てを棚にあげ、そんな醜悪で凶悪な独占欲や支配欲を真尋に対して抱いていたのだ。
だが、その一方で、俺は真尋に心の底から軽蔑され、見放される事を恐れてもいた。だから、少しでも早く真尋と2人きりで言葉を交わしたいと焦っていた。
真尋と2人で話すには、昼休みか終業後、真尋を社外のどこかに連れ出す必要がある。
だが、その日は復帰早々、朝から取引先との会議が入っており、不運にもその会議は昼過ぎまで長引いてしまった。俺が自席に戻れた時には既に真尋は外出した後だった。
結局、真尋は終業時間を過ぎても出先から戻らなかった。
直帰にはなっていない筈だ。では、真尋は一体いつ頃戻って来るのだろうか?そんな事を考えながら真尋の席を気にしている俺に、高橋が「あんたが残ってたら、まひちゃんが気不味くなるんだから、あんたはさっさと嫁のとこに帰んなさいよ!」と言ってきた。
高橋に追い立てられ、オフィス内で待つ事の出来なくなった俺は、会社近くのカフェに向かい、そこで珈琲を飲みながら、今夜真尋を連れて行く店を吟味していた。
紗凪には、昼休みの間に、今日は残業で遅くなるから夕食は不要だというメールを送ってある。だから今夜は久々に真尋とゆっくり食事をしながら語り合うことができるだろうなどと身勝手な事を思いながら、俺は会社の隣にあるコンビニに寄って真尋の好きなオレンジティーを買い、オフィスへと戻った。
真尋は、薄暗いオフィスの中で、一人PCに向かって仕事をしていた。その集中力は凄まじく、俺が戻ってきたことにすら気付く素振りがなかった。
俺は真尋の注意を引きたくて、わざと音を立てて先程購入したばかりのオレンジティーを真尋のデスクの上に置いた。真尋は俺がいる事に酷く驚いたようで、デスクの上に置かれたオレンジティーと俺の顔を見比べながら狼狽えていた。
今朝、真尋の存在を無視していた俺が、夜には差し入れを持って現れたのだから、誰でも動揺くらいはするだろうと今朝の自分の大人気のない行動を苦く思いながら、俺は真尋に「お疲れ」と労りの言葉をかけた。
「…吉澤主任。お疲れ様です。何か御用でしょうか?」
次の瞬間、真尋が口にしたのは、そんな他人行儀な言葉だった。
あの時の俺は、自分の犯した罪の重さを全く理解していなかったのだと思う。真尋が臍を曲げて、わざと俺を突き放すような態度を取っているのだと都合よく解釈していたから「…用がなくちゃ、もう真尋に話かけちゃダメなの?俺。」などという揶揄うような言葉を発してしまったのだ。
「……吉澤主任。遅くなりましたが、ご結婚おめでとうございます。また、近々お子さんがお生まれになるとも伺いました。そちらについても、重ねてお祝い申し上げます。
良かったですね?誰と付き合っても本気になれない程に、ずっと心の底で想い続けていらっしゃった方とご結婚なさることが出来たようで何よりです。どうぞ、お幸せに。」
真尋は、俺が発したそんな軽率で不適切極まりのない言葉を聞いて、一瞬だけ強い嫌悪を露わにした。そしてその後、全ての感情を押し殺した能面のような顔をして、俺に表面上だけの祝いの言葉を述べてきた。
俺は真尋に、不実を詰られ罵倒される事は想定していたが、そんな風に淡々と他人行儀な態度をとられることは想像すらしていなかった。はっきりと一線を引かれた真尋の態度を目の当たりにして、俺の中に言い知れぬ恐怖が湧き上がって来るのを感じた。
「ちがっ!あれは司会者や、同じ中学の奴らが面白がって…あんなこと、俺は言ってない!真尋!話を、話を聞いてくれ!」
(違う!誤解なんだ!あれは、酔っぱらった野口達がいつものように悪ノリをして言った言葉なんだ!俺が、俺自身が言った言葉ではないんだ!)
俺は、真尋が伝え聞いたであろう言葉の数々を訂正したくて、必死に誤解を解こうと言葉を重ねた。けれど、それを遮ったのは、真尋の軽蔑したような眼差しと拒絶を含んだ低く冷たい声だった。
「名前。…下の名前で呼ぶのはやめて下さい。もうそういう関係ではないのですから…。それに、そんなことの事実がどうであれ、些末なことです。
だって、実際に結婚はしたんでしょう?もう奥さんのお腹の中には、赤ちゃんがいるんでしょう?……ならば、仕事以外の件で私と関わることはするべきじゃないですよ。奥様にも…私にも失礼です。
私も、今後は仕事以外で主任と関わるつもりはありません。ですから、それ以外では一切話し掛けないで下さい。」
真尋は、もうこれ以上俺とは関わりたくもないと言わんばかりに俺から視線を逸らし、PCの画面を睨んでいた。
その段になって初めて俺は、今までの自分の身勝手な行動が、どれだけ深く真尋を傷付け、苦しめていたのかという事に気付き始めたのかもしれない。
「真尋……いや、山瀬さん。本当にいろいろすまない。今朝のことも…正直、山瀬さんにどう接していいのか分からなかったんだ。謝って済むことじゃないのは理解しているつもりだ。でも、本当に申し訳ないと思っているんだ!
……あっ!そうだ!まひ……山瀬さんが、以前欲しがっていた香水をイタリアの免税店で見つけたから、お土産に買って来たんだ!貰ってもらえないだろうか?」
俺は少しでも真尋に謝罪の気持ちを伝えたかった。だから、せめてもの謝罪の印にとローマの空港で真尋の為に買った香水を自分の鞄から取り出して、真尋のデスクの上に置いた。
香水が入ったその紙袋を目にした瞬間、真尋は驚愕の表情を浮かべていた。そしてその後すぐに、遣る瀬無さ気に顔を歪ませていた。
そんな物悲しい真尋の表情を目にした途端、俺は真尋を強く抱き締めたくて堪らなくなった。俺が真尋へと手を伸ばそうとしたその時、
「山瀬!おい、大丈夫か?」
とっくに帰宅した筈の高遠の声がオフィスの入り口の方角から聞こえてきた。高遠はそのままこちらへ歩いて来て、真尋を背に庇うようにして俺の正面に立ちはだかった。
「高遠!?」
真尋は突然現れた高遠の姿を認めると、心底安堵したように強張っていた身体の力を緩めていた。俺は、真尋にそんな変化を齎した高遠に対して、嫉妬に似た苛立ちを覚えた。
「なんだよ?高遠。お前帰ったんじゃなかったのか?」
『何でお前が今ここにいるんだ!?さっさと消えろ!』そう言外に滲ませながら、俺は抱えた苛立ちをそのままぶつけるように高遠へと言い放った。高遠は俺の苛立ちに気付いているだろうに、それをあっさりと受け流し、飄々とした顔をして、忘れ物をしたからそれを取りに戻ってきたのだと答えていた。高遠はその返答の途中で何かに気付いたようで、不快そうに眉間に皺を寄せながら、逆に俺に目の前に置かれた紙袋について尋ねてきた。
『お前に答える義理はない!』と高遠に怒鳴ってやりたい気分だったが、さすがの俺でも、別れた真尋に別の紗凪と行った新婚旅行の土産を個人的に渡すという行為が褒められたものではない事は分かっていた。だから、俺は視線を逸らしながら小さな声で言い訳をするしかできなかった。
俺の言葉を聞いた高遠は、何かに耐えるようにギュっと力を入れて目を瞑り、両手の拳を握りしめながら、ゆっくりと長く息を吐き出していた。そして、意を決したように目を開くと「お返しします!」と俺の目をまっすぐ見据えながら、その袋を突き返してきた。
「はっ!?おいっ!これは別にお前にあげたわけじゃないぞ?これは、真尋に…山瀬さんにあげたものだから、お前に返される筋合いはないだろ?!
と言うか、俺と山瀬さんはまだ話が終わってないんだ。邪魔はしないでくれ!お前は忘れ物とやらをとって、さっさと帰れよ!」
真尋に渡した物なのに、何故か高遠が当然のように突き返してきた。俺は今度こそ我慢が出来なくなり、声を荒げてそう言った。それでも高遠は俺の怒りなど気にも留めずに、今度は真尋に対して仕事の進捗状況を尋ねていた。真尋がもう殆ど終わっていると答えれば、高遠はそれならばさっさと帰ろうと真尋を急かし始め、真尋は高遠に言われるがままに帰宅準備をし始めた。
「ちょっ…!おい!待てよ!何でお前が真尋を連れて行くんだよ?俺らはまだ話があるって言ってるだろ?」
そんな高遠と真尋の言動に焦ったのは俺の方だった。俺がこれは俺と真尋の話であって、高遠には関係ない事だと言えば、高遠は真尋に俺と話さなければならない事が何かあるのかと問うた。真尋はその問いかけを即座に否定していた。
「…だそうですよ?少なくとも、山瀬の方にはないみたいです。」
「高遠!お前…。お前ら、別に付き合ってるわけじゃないんだろ?だったら、一体何の権利があって…」
「権利ですか??あぁそれなら、主任にも山瀬を引きとめる権利ないですよね?もうとっくに別れたんですし。
それに、俺の権利なら、主任の結婚式の二次会の締めの時、主任が俺に下さったじゃないですか?『真尋のことを頼む』って。俺は主任から頼まれたので、その権利を有難く行使させて頂いてるだけですけど、何か?」
「う…。そ、それは…これ以上、真尋を傷付けたくなかったから…真尋の助けになってやってくれと言う意味で…」
俺が自分達の結婚式の2次会の最後に高遠をつかまえて「真尋の事を頼む。」と言ったのは、今言ったような綺麗な理由なんかではなかった。もっと醜悪で賊心に満ちた歪んだ独占欲から出た言葉だった。
俺は、高遠が入社当初から真尋に対して想いを寄せている事を知っていたし、またその一方で、真尋が高遠の事を男として見ていない事も知っていた。
だから、どんなに仲が良かろうと、今後、高遠と真尋が友人の域を超える関係に発展する可能性はない。真尋は別れてからも俺の事だけしか見えていないのだから、さっさと身の程を弁えて真尋の事を諦めるべきなのだと、暗に高遠に伝えたかった。
高遠が真尋の近くにいればいる程、真尋が誰を想っているのか?自分が真尋にどう思われているのか?という残酷な現実を見せつけられる羽目になるだろうという牽制の意味を込めた卑劣な思惑が、その言葉の裏にはあったのだ。
……確実に高遠はそんな俺の言葉に含まれた意図を理解している。その上でこの場でそんな話を持ち出してきたのだ。
「えぇ。だから今、こうやって助けてるんですよ?山瀬を傷付けてる貴方から。」
「は!?俺がいつ真尋を傷付けたんだよ?いや、確かに、俺は真尋を裏切って傷つけた。けれど、今は…今は傷付けていないだろう??なぁ、真尋?」
高遠に返す言葉が見つからない俺が縋るように真尋に同意を求めれば、真尋は俺の事など見ようともしないで高遠のYシャツを小さく引っ張り「もういいから、帰ろう?」と高遠を心配するように呟いていた。
「吉澤主任。私からもそのお土産の品はお返し致します。私には、それを受け取る理由がありません。
主任は気付いていらっしゃらないようですが、それを私に送ろうとすること自体が私に対しての侮辱ですし、奥様に対しての裏切りになります。さっき高遠に言った通りです。私を無神経に傷付け、侮辱する人と話すことなど、これ以上何もありません。
けれど、主任と過ごした2年と4カ月の日々は、本当に楽しくて幸せでした。そんな素敵な日々を与えて下さったことには感謝しています。本当に有難うございました!
では、これで失礼します。」
真尋が俺に対してそうお礼の言葉を述べた後に浮かべた笑顔は、今まで俺が見てきた中で最も美しい笑顔だった。
そんな綺麗な笑顔を浮かべたまま真尋は俺に対して深く頭を下げ、そして高遠の片腕を引っ張りながらオフィスから出ていった。
俺はそんな2人の姿を信じられない気持ちで見つめていた。
少し前までは、俺が高遠の立場にいたのだ。真尋に甘えられるのも、頼りにされるのも、俺だけだった筈だ。
それなのに…何故?
俺は、俺が握っているのだと疑いもしなかった真尋の心が、自分の手の平からこぼれ落ちていくのを感じていた。
紗凪の本性など知る由もなかった当時の俺は、紗凪との間に、こんなにも早く子供を授かれたことがとても嬉しくて、馬鹿みたいに浮かれていた。
紗凪のお腹の中ですくすくと育っているであろう我が子の姿を想像しながら、俺は今後命をかけて紗凪と子供の事を守っていこうと決意していた。
だから、紗凪のようにお腹の中で子供を育てられない分、身重の紗凪を労り、出産準備にも積極的に取り組んだし、紗凪がつわりが辛いから保育園を辞めたいと言い出した時も、すぐに賛同した。
紗凪との結婚に難色を示していた俺の両親も、紗凪の妊娠を知ると、手の平を返したように俺達の結婚を受け入れてくれ、初孫の誕生を待ち望んでくれるようになった。
そんな周囲の変化を受けて、俺は、愚かにも、世界中の全てが俺達の結婚を祝福してくれているように感じていた。
紗凪との結婚が、俺の『運命』だったのだと信じ込んでいたのだ。
その1週間後に行われた俺達の結婚式には、紗凪と俺の共通の友人という事で野口を始め中学の同級生を大勢招いて場を盛り上げてもらった。
真尋と面識のあった大学時代の友人や職場の仲間達は一様に紗凪に対して良い感情を抱いておらず、俺が真尋を捨てて紗凪に乗り換えたことに呆れ果て、冷めた視線を送ってきていた。今思い返せば、きっと彼等はすぐに紗凪の本性を見抜いていたのだと思う。
けれど、あの時の俺は、どれだけ周囲の人間に忠告されようと諭されようと、彼等が俺達の幸せを妬んでいるだけなのだと明後日の方向に解釈して、それらの言葉を軽くあしらい、聞く耳を持たなかった。
俺と紗凪は、式の翌日からイタリアへと新婚旅行に旅立った。
約1週間程滞在したイタリアはとても素晴らしい所だった。
料理もとても美味しかったし、街並みもテレビで見た通りとても洒落ていた。
ミラノやベネチア、フィレンツェ、ローマのなどの各都市を回り、市内観光をしながら様々な建築物や名画を見て歩いた。
某有名映画の舞台ともなったローマでは、紗凪が子供のようにとても燥いで、映画の中で有名女優が演じていた王女を真似て同じ場所でジェラートを食べたがったり、同じポーズで写真を撮りたがったりした。紗凪がとても興奮して喜んでいたので、俺はそれだけで有意義な時間を過ごす事が出来た気になっていた。
イタリアでの最終日、帰国する為にローマ・フィウミチーノ国際空港に着くと、紗凪は昨年オープンしたばかりの「エリアE」という免税ショッピングエリアで買い物がしたいと言い始めた。
時間を確認すると、飛行機の搭乗時間まではまだ少し余裕があった。搭乗時間までならばという約束で、俺はブランド店を回りながら次々と買い物をしていく紗凪の後ろについて歩いた。
けれど、元々人混みの苦手な俺は、30分程紗凪の後ろを歩いているだけでとても疲れてしまい、結局、残りの1時間弱は、2階にある飲食エリアのカフェで待っている事にした。俺が紗凪にそう言い残してカフェへと向かうその道すがら、偶然にも以前真尋が欲しがっていた香水が目に入った。
それを見つけた瞬間、俺の脳裏に真尋の喜びのあまり感涙に咽んでいる姿が浮かびあがり、気がつけば俺はその香水を購入していたのだった。
帰国後、初めての出社日、俺はいつもよりも少し早めの時間に出社した。
少し早めの時間とは言っても、それなりに混みあっているエレベーターの中で、俺は切なそうな表情でこちらを見つめてくる真尋の姿を認めた。
久々に目にした真尋は、普段ならば絶対に着ることのない色鮮やかな黄色のワンピースを身に纏っており、神々しいまでに美しかった。
真尋は、高橋と高遠と三人揃って仲良く出社してきたようで、2人とも真尋のすぐ傍に立っていた。
俺を見つけたことで明らかな動揺をみせている真尋の様子に気付いた高遠が、真尋の視線を辿るように俺の方へと振り返った後、真尋を守るように真尋の前へと移動した。俺の視界から真尋の姿を隠した高遠と大人しく高遠に守られている真尋に対して、俺は言いようのない苛立ちを覚えた。
エレベーターが俺達のオフィスがあるフロアに着くと、俺は高橋と高遠にだけ朝の挨拶をして自席へと向かった。敢えて真尋にだけは挨拶をしなかった。
真尋に非がない事は理解している。
元より俺には真尋を責める権利も、詰る権利もない。俺が先に真尋を裏切って一方的に切り捨てた。真尋の心を打ちのめす程に手酷く傷付けたという自覚もある。
それなのに俺は、身勝手極まりない理不尽過ぎる感情だと重々承知の上で、高遠に守られていた真尋に対して激しい憤りを覚えていた。
俺は自分が犯した鬼畜の所業の全てを棚にあげ、そんな醜悪で凶悪な独占欲や支配欲を真尋に対して抱いていたのだ。
だが、その一方で、俺は真尋に心の底から軽蔑され、見放される事を恐れてもいた。だから、少しでも早く真尋と2人きりで言葉を交わしたいと焦っていた。
真尋と2人で話すには、昼休みか終業後、真尋を社外のどこかに連れ出す必要がある。
だが、その日は復帰早々、朝から取引先との会議が入っており、不運にもその会議は昼過ぎまで長引いてしまった。俺が自席に戻れた時には既に真尋は外出した後だった。
結局、真尋は終業時間を過ぎても出先から戻らなかった。
直帰にはなっていない筈だ。では、真尋は一体いつ頃戻って来るのだろうか?そんな事を考えながら真尋の席を気にしている俺に、高橋が「あんたが残ってたら、まひちゃんが気不味くなるんだから、あんたはさっさと嫁のとこに帰んなさいよ!」と言ってきた。
高橋に追い立てられ、オフィス内で待つ事の出来なくなった俺は、会社近くのカフェに向かい、そこで珈琲を飲みながら、今夜真尋を連れて行く店を吟味していた。
紗凪には、昼休みの間に、今日は残業で遅くなるから夕食は不要だというメールを送ってある。だから今夜は久々に真尋とゆっくり食事をしながら語り合うことができるだろうなどと身勝手な事を思いながら、俺は会社の隣にあるコンビニに寄って真尋の好きなオレンジティーを買い、オフィスへと戻った。
真尋は、薄暗いオフィスの中で、一人PCに向かって仕事をしていた。その集中力は凄まじく、俺が戻ってきたことにすら気付く素振りがなかった。
俺は真尋の注意を引きたくて、わざと音を立てて先程購入したばかりのオレンジティーを真尋のデスクの上に置いた。真尋は俺がいる事に酷く驚いたようで、デスクの上に置かれたオレンジティーと俺の顔を見比べながら狼狽えていた。
今朝、真尋の存在を無視していた俺が、夜には差し入れを持って現れたのだから、誰でも動揺くらいはするだろうと今朝の自分の大人気のない行動を苦く思いながら、俺は真尋に「お疲れ」と労りの言葉をかけた。
「…吉澤主任。お疲れ様です。何か御用でしょうか?」
次の瞬間、真尋が口にしたのは、そんな他人行儀な言葉だった。
あの時の俺は、自分の犯した罪の重さを全く理解していなかったのだと思う。真尋が臍を曲げて、わざと俺を突き放すような態度を取っているのだと都合よく解釈していたから「…用がなくちゃ、もう真尋に話かけちゃダメなの?俺。」などという揶揄うような言葉を発してしまったのだ。
「……吉澤主任。遅くなりましたが、ご結婚おめでとうございます。また、近々お子さんがお生まれになるとも伺いました。そちらについても、重ねてお祝い申し上げます。
良かったですね?誰と付き合っても本気になれない程に、ずっと心の底で想い続けていらっしゃった方とご結婚なさることが出来たようで何よりです。どうぞ、お幸せに。」
真尋は、俺が発したそんな軽率で不適切極まりのない言葉を聞いて、一瞬だけ強い嫌悪を露わにした。そしてその後、全ての感情を押し殺した能面のような顔をして、俺に表面上だけの祝いの言葉を述べてきた。
俺は真尋に、不実を詰られ罵倒される事は想定していたが、そんな風に淡々と他人行儀な態度をとられることは想像すらしていなかった。はっきりと一線を引かれた真尋の態度を目の当たりにして、俺の中に言い知れぬ恐怖が湧き上がって来るのを感じた。
「ちがっ!あれは司会者や、同じ中学の奴らが面白がって…あんなこと、俺は言ってない!真尋!話を、話を聞いてくれ!」
(違う!誤解なんだ!あれは、酔っぱらった野口達がいつものように悪ノリをして言った言葉なんだ!俺が、俺自身が言った言葉ではないんだ!)
俺は、真尋が伝え聞いたであろう言葉の数々を訂正したくて、必死に誤解を解こうと言葉を重ねた。けれど、それを遮ったのは、真尋の軽蔑したような眼差しと拒絶を含んだ低く冷たい声だった。
「名前。…下の名前で呼ぶのはやめて下さい。もうそういう関係ではないのですから…。それに、そんなことの事実がどうであれ、些末なことです。
だって、実際に結婚はしたんでしょう?もう奥さんのお腹の中には、赤ちゃんがいるんでしょう?……ならば、仕事以外の件で私と関わることはするべきじゃないですよ。奥様にも…私にも失礼です。
私も、今後は仕事以外で主任と関わるつもりはありません。ですから、それ以外では一切話し掛けないで下さい。」
真尋は、もうこれ以上俺とは関わりたくもないと言わんばかりに俺から視線を逸らし、PCの画面を睨んでいた。
その段になって初めて俺は、今までの自分の身勝手な行動が、どれだけ深く真尋を傷付け、苦しめていたのかという事に気付き始めたのかもしれない。
「真尋……いや、山瀬さん。本当にいろいろすまない。今朝のことも…正直、山瀬さんにどう接していいのか分からなかったんだ。謝って済むことじゃないのは理解しているつもりだ。でも、本当に申し訳ないと思っているんだ!
……あっ!そうだ!まひ……山瀬さんが、以前欲しがっていた香水をイタリアの免税店で見つけたから、お土産に買って来たんだ!貰ってもらえないだろうか?」
俺は少しでも真尋に謝罪の気持ちを伝えたかった。だから、せめてもの謝罪の印にとローマの空港で真尋の為に買った香水を自分の鞄から取り出して、真尋のデスクの上に置いた。
香水が入ったその紙袋を目にした瞬間、真尋は驚愕の表情を浮かべていた。そしてその後すぐに、遣る瀬無さ気に顔を歪ませていた。
そんな物悲しい真尋の表情を目にした途端、俺は真尋を強く抱き締めたくて堪らなくなった。俺が真尋へと手を伸ばそうとしたその時、
「山瀬!おい、大丈夫か?」
とっくに帰宅した筈の高遠の声がオフィスの入り口の方角から聞こえてきた。高遠はそのままこちらへ歩いて来て、真尋を背に庇うようにして俺の正面に立ちはだかった。
「高遠!?」
真尋は突然現れた高遠の姿を認めると、心底安堵したように強張っていた身体の力を緩めていた。俺は、真尋にそんな変化を齎した高遠に対して、嫉妬に似た苛立ちを覚えた。
「なんだよ?高遠。お前帰ったんじゃなかったのか?」
『何でお前が今ここにいるんだ!?さっさと消えろ!』そう言外に滲ませながら、俺は抱えた苛立ちをそのままぶつけるように高遠へと言い放った。高遠は俺の苛立ちに気付いているだろうに、それをあっさりと受け流し、飄々とした顔をして、忘れ物をしたからそれを取りに戻ってきたのだと答えていた。高遠はその返答の途中で何かに気付いたようで、不快そうに眉間に皺を寄せながら、逆に俺に目の前に置かれた紙袋について尋ねてきた。
『お前に答える義理はない!』と高遠に怒鳴ってやりたい気分だったが、さすがの俺でも、別れた真尋に別の紗凪と行った新婚旅行の土産を個人的に渡すという行為が褒められたものではない事は分かっていた。だから、俺は視線を逸らしながら小さな声で言い訳をするしかできなかった。
俺の言葉を聞いた高遠は、何かに耐えるようにギュっと力を入れて目を瞑り、両手の拳を握りしめながら、ゆっくりと長く息を吐き出していた。そして、意を決したように目を開くと「お返しします!」と俺の目をまっすぐ見据えながら、その袋を突き返してきた。
「はっ!?おいっ!これは別にお前にあげたわけじゃないぞ?これは、真尋に…山瀬さんにあげたものだから、お前に返される筋合いはないだろ?!
と言うか、俺と山瀬さんはまだ話が終わってないんだ。邪魔はしないでくれ!お前は忘れ物とやらをとって、さっさと帰れよ!」
真尋に渡した物なのに、何故か高遠が当然のように突き返してきた。俺は今度こそ我慢が出来なくなり、声を荒げてそう言った。それでも高遠は俺の怒りなど気にも留めずに、今度は真尋に対して仕事の進捗状況を尋ねていた。真尋がもう殆ど終わっていると答えれば、高遠はそれならばさっさと帰ろうと真尋を急かし始め、真尋は高遠に言われるがままに帰宅準備をし始めた。
「ちょっ…!おい!待てよ!何でお前が真尋を連れて行くんだよ?俺らはまだ話があるって言ってるだろ?」
そんな高遠と真尋の言動に焦ったのは俺の方だった。俺がこれは俺と真尋の話であって、高遠には関係ない事だと言えば、高遠は真尋に俺と話さなければならない事が何かあるのかと問うた。真尋はその問いかけを即座に否定していた。
「…だそうですよ?少なくとも、山瀬の方にはないみたいです。」
「高遠!お前…。お前ら、別に付き合ってるわけじゃないんだろ?だったら、一体何の権利があって…」
「権利ですか??あぁそれなら、主任にも山瀬を引きとめる権利ないですよね?もうとっくに別れたんですし。
それに、俺の権利なら、主任の結婚式の二次会の締めの時、主任が俺に下さったじゃないですか?『真尋のことを頼む』って。俺は主任から頼まれたので、その権利を有難く行使させて頂いてるだけですけど、何か?」
「う…。そ、それは…これ以上、真尋を傷付けたくなかったから…真尋の助けになってやってくれと言う意味で…」
俺が自分達の結婚式の2次会の最後に高遠をつかまえて「真尋の事を頼む。」と言ったのは、今言ったような綺麗な理由なんかではなかった。もっと醜悪で賊心に満ちた歪んだ独占欲から出た言葉だった。
俺は、高遠が入社当初から真尋に対して想いを寄せている事を知っていたし、またその一方で、真尋が高遠の事を男として見ていない事も知っていた。
だから、どんなに仲が良かろうと、今後、高遠と真尋が友人の域を超える関係に発展する可能性はない。真尋は別れてからも俺の事だけしか見えていないのだから、さっさと身の程を弁えて真尋の事を諦めるべきなのだと、暗に高遠に伝えたかった。
高遠が真尋の近くにいればいる程、真尋が誰を想っているのか?自分が真尋にどう思われているのか?という残酷な現実を見せつけられる羽目になるだろうという牽制の意味を込めた卑劣な思惑が、その言葉の裏にはあったのだ。
……確実に高遠はそんな俺の言葉に含まれた意図を理解している。その上でこの場でそんな話を持ち出してきたのだ。
「えぇ。だから今、こうやって助けてるんですよ?山瀬を傷付けてる貴方から。」
「は!?俺がいつ真尋を傷付けたんだよ?いや、確かに、俺は真尋を裏切って傷つけた。けれど、今は…今は傷付けていないだろう??なぁ、真尋?」
高遠に返す言葉が見つからない俺が縋るように真尋に同意を求めれば、真尋は俺の事など見ようともしないで高遠のYシャツを小さく引っ張り「もういいから、帰ろう?」と高遠を心配するように呟いていた。
「吉澤主任。私からもそのお土産の品はお返し致します。私には、それを受け取る理由がありません。
主任は気付いていらっしゃらないようですが、それを私に送ろうとすること自体が私に対しての侮辱ですし、奥様に対しての裏切りになります。さっき高遠に言った通りです。私を無神経に傷付け、侮辱する人と話すことなど、これ以上何もありません。
けれど、主任と過ごした2年と4カ月の日々は、本当に楽しくて幸せでした。そんな素敵な日々を与えて下さったことには感謝しています。本当に有難うございました!
では、これで失礼します。」
真尋が俺に対してそうお礼の言葉を述べた後に浮かべた笑顔は、今まで俺が見てきた中で最も美しい笑顔だった。
そんな綺麗な笑顔を浮かべたまま真尋は俺に対して深く頭を下げ、そして高遠の片腕を引っ張りながらオフィスから出ていった。
俺はそんな2人の姿を信じられない気持ちで見つめていた。
少し前までは、俺が高遠の立場にいたのだ。真尋に甘えられるのも、頼りにされるのも、俺だけだった筈だ。
それなのに…何故?
俺は、俺が握っているのだと疑いもしなかった真尋の心が、自分の手の平からこぼれ落ちていくのを感じていた。
0
お気に入りに追加
911
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる