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私は目減りしない筈なのですが?
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高遠は私の手首を掴んで、絢斗の前から連れ出してくれた。
ファミレスを出た後もその手を離す事はなく、ずんずん早足で自宅に向かって歩いていく。そして、マンションのエレベーターに乗りこんだ瞬間、「マジむかつく」と低く呟いて、強引に唇を重ねてきた。
いつ人が乗って来るかわからない状況で口付けられた事に驚いた。身を捩って抗議しようとすれば、更に強い力で内壁に押し付けらる。そして更に口付けが深まった。
「何大人しく手なんか握られてんだよ!クソッ!まさか、まだあんな腐れ外道に未練があるとか?でも残念。俺はもうお前を放さねーから!絶対ぇ離してやらねーから!」
高遠は私の肩口に頭を預けながら、腹立たし気に吐き出した。
ちょうどその時、エレベーターが9階に到着した。
私は高遠の腕を掴むと、今度は私が高遠を引きずるようにして部屋まで連れて行く。そして、部屋に入るや否や、高遠の胸倉を掴んで噛み付くようにキスをした。
それまで泣き出しそうな顔をしていた高遠は、私の行動に面を食らっていた。
「佑!あんた、何言ってんの?どんだけ、私を信用してないの?」
「…え?あ…いや、だって…その…。お前、手を握られても避けなかったし?それで…ヤツがもっと……」
泡を食った高遠がしどろもどろになりながら言い訳をし始めた。その情けない姿に更に苛立つ。私は高遠の言葉に被せるように怒鳴った。
「あんた、バカなの?アイツがあまりにもおめでたい思考回路してるから、ドン引いてて動けなかったの!あんな話も通じないようなクズに未練なんかある訳ないじゃない!ったく!話が通じなさ過ぎて、宇宙人かと思ったわ!」
先程の宇宙人とのやり取りを思い出すと腹立たしさが蘇る。私は八つ当たりで高遠の胸元に拳を一発お見舞いした。
「大体あんたはもっと私を信用するべきよ!私はあんたが好きだって、はっきり言ってるじゃない。それなのに、何であんたは私があのクズの元に戻りたがってると思ってるわけ?もしかして、あんたも、あの宇宙人みたいに言葉が通じないの?」
「…いいえ…はい。あの…すみません…」
高遠は私の剣幕にタジタジになりながら小さな声で謝罪した。
***
「しっかしさ…。あの人の頭ん中って、一体どうなってんのかね?よくお前にあんなお願いできるよなあ…」
高遠がお皿の中の鶏肉をスプーンの先で突きながら言った。ヨーグルトと香辛料に漬け込まれ、柔らかくなった鶏肉は、そんな些細な力でも形を崩す。
玄関口でひと悶着した後、私はキッチンに置いてあるアップルパイを見て、今日が高遠の誕生日だった事を思い出した。
そして、すぐに、アップルパイを焼いている間に漬け込んでおいた鶏肉を冷蔵庫から取り出し、高遠の大好物であるバターチキンカレーを作ったのだ。
今はそれを食べている最中。…とはいっても、高遠は殆ど食べ終わっているのだけれど。
「地獄耳ね。全部聞いてたの?」
私が苦笑しながら問うと、佑は眉間に皺を寄せながら、当然だと言った。
「あのクズが何するかわかんねーし。そりゃ、耳をダンボにして聞き耳を立てるわ!」
「…ダンボ?じゃあ、空飛べちゃうね」
「茶化すなよ!…あの野郎、マジ胸糞」
「気持ちは分かるけど…。ほら、そんな事気にしてたら、大好物のバターチキンカレーが不味くなっちゃうわよ?今日はお誕生日なんだし、嫌なことは忘れて楽しもうよ」
宥めるようにそう言うと、高遠は不満気に口を尖らせた。
「別にどんな状況でもバターチキンカレーは不味くなんねーもん。バターチキンカレーは神だからな!しかも、もう食い終わったし。ご馳走様でした!メチャクチャ美味かった!なあ、またコレ作ってよ?」
「はいはい。お粗末様でした。こんな物でよければ、いつでも作るわよ。食べたくなったら、いつでも言って?それにしても、誕生日に食べたいものがカレーって…。男の人って、皆お子ちゃま舌よね」
図体は大きいのに可愛いなあと目を細めていると、高遠が不貞腐れながら「皆って誰のこと?」と言って、私の右手を齧った。
「痛っ!ちょっと、何すんの?痛いじゃない!私は食べ物じゃないわよ?」
「……消毒。あのクズが触ったから…」
「は?」
高遠は「ばっちいから」と呟いた後、先程噛んだ部分に舌を這わせ始めた。
「もしもし佑君?私、さっきまでお料理してたから手は洗ってあるし、消毒しなくても綺麗だよ?」
「……ダメ。アイツのせいで俺の真尋が減った」
「いや、私は目減りしませんけど?」
「……減った。絶対に減った」
ムスッと不機嫌さを隠そうともしない姿さえ愛しく思えるのだから、我ながらかなり重症だと苦笑する。
高遠は私の右手の甲から指の先までを丁寧に舐めあげた。やがて指の先に辿り着くと、ちゅぷりと指を咥えて、爪との肉の境目を舌先で辿る。そして指の間に舌を這わせ、次の指へと移る。
手の指など愛撫された事のない私は、こんな所まで性感帯になるのかと驚いた。舌がなぞる場所から生まれる甘い痺れに、私は目を伏せて酔いしれる。
徐々に舌の動きが大胆になり、ピチャピチャといやらしい音が大きく響く。そっと視線を上げると、私の指をしゃぶりながら鄙陋な笑みを浮かべる高遠と目が合った。
高遠は私を見つめたまま、私の手の平をベロリと舐めあげた。
「ふっ…んんっ」
私の口から甘い声が漏れる。すると、高遠は私を抱き寄せ、貪るように口付けた。そして、艶っぽい悪戯な笑みを浮かべながら「真尋が減った分、補充させて?」と甘く囁き、胸を揉みしだき始めた。
そうして私達は更にもう一戦交えることとなったのだった。
行為の後、高遠は私の髪を撫でながら難しい顔をしていた。「…どしたの?」と問えば、眉間の皺は更に深くなる。
「…いや、面白くないなって…。あの人さ、最近やたら俺に突っかかってくるんだよ。まるで自分の方がお前の事をよく分かってるから、いつでも取り戻せるみたいな感じでさ…」
「あの人?……ああ絢…宇宙人ね?」
「今、お前、またベッドの中で他の男の名前を呼ぼうとした?」
「い…いや、呼んでないよ?ってか、今の流れは不可抗力だよね?」
「……。まあ、とにかくさ。お前にとって、自分は特別な存在だと思ってるみたいでさ。俺の事なんて、寂しさを紛らわすのに利用されてるだけだ的な事を、遠回しに言ってきやがるんだよな…。
お前が料理上手だの何だのさ。そんなんは知っとるわ!って感じなんだけど。終いにゃ、脱がせなきゃ分かんないような所にある黒子の位置まで話して来やがって…。
まあ勿論、そんなん知ってますけど!って感じで余裕ぶっといたけどな?でも、実際あるのを見ちゃうと…面白くないっつーか何つーか…」
「はあ!?アイツ、そんな恥ずかしい話して来るの?あり得ない!変態か!……ん?でも私、脱がなきゃ分からない所に黒子なんて無いよ?」
「それがあるから面白くないんだよ。ここ。左太腿の付け根にあるんだよ」
そう言いながら、高遠は私の左のお尻と足の境目辺りを指でなぞった。
「さっき一応牽制しといたけど。あの人、変にポジティブっていうか、自分に都合よく解釈するくせあるから気を付けろよ?俺からみたら、あの人の方が真尋に未練タラタラに見えるんだよ。まあ、嫁と上手くいってないからなんだろうけどさ。
でも何かあったら、いつでも言えよ?」
「ありがと佑。頼りにしてるね!本当に大好き」
高遠に触れるだけのキスをしながら、私は宇宙人の逆襲がないことを心の中で祈っていた。
ファミレスを出た後もその手を離す事はなく、ずんずん早足で自宅に向かって歩いていく。そして、マンションのエレベーターに乗りこんだ瞬間、「マジむかつく」と低く呟いて、強引に唇を重ねてきた。
いつ人が乗って来るかわからない状況で口付けられた事に驚いた。身を捩って抗議しようとすれば、更に強い力で内壁に押し付けらる。そして更に口付けが深まった。
「何大人しく手なんか握られてんだよ!クソッ!まさか、まだあんな腐れ外道に未練があるとか?でも残念。俺はもうお前を放さねーから!絶対ぇ離してやらねーから!」
高遠は私の肩口に頭を預けながら、腹立たし気に吐き出した。
ちょうどその時、エレベーターが9階に到着した。
私は高遠の腕を掴むと、今度は私が高遠を引きずるようにして部屋まで連れて行く。そして、部屋に入るや否や、高遠の胸倉を掴んで噛み付くようにキスをした。
それまで泣き出しそうな顔をしていた高遠は、私の行動に面を食らっていた。
「佑!あんた、何言ってんの?どんだけ、私を信用してないの?」
「…え?あ…いや、だって…その…。お前、手を握られても避けなかったし?それで…ヤツがもっと……」
泡を食った高遠がしどろもどろになりながら言い訳をし始めた。その情けない姿に更に苛立つ。私は高遠の言葉に被せるように怒鳴った。
「あんた、バカなの?アイツがあまりにもおめでたい思考回路してるから、ドン引いてて動けなかったの!あんな話も通じないようなクズに未練なんかある訳ないじゃない!ったく!話が通じなさ過ぎて、宇宙人かと思ったわ!」
先程の宇宙人とのやり取りを思い出すと腹立たしさが蘇る。私は八つ当たりで高遠の胸元に拳を一発お見舞いした。
「大体あんたはもっと私を信用するべきよ!私はあんたが好きだって、はっきり言ってるじゃない。それなのに、何であんたは私があのクズの元に戻りたがってると思ってるわけ?もしかして、あんたも、あの宇宙人みたいに言葉が通じないの?」
「…いいえ…はい。あの…すみません…」
高遠は私の剣幕にタジタジになりながら小さな声で謝罪した。
***
「しっかしさ…。あの人の頭ん中って、一体どうなってんのかね?よくお前にあんなお願いできるよなあ…」
高遠がお皿の中の鶏肉をスプーンの先で突きながら言った。ヨーグルトと香辛料に漬け込まれ、柔らかくなった鶏肉は、そんな些細な力でも形を崩す。
玄関口でひと悶着した後、私はキッチンに置いてあるアップルパイを見て、今日が高遠の誕生日だった事を思い出した。
そして、すぐに、アップルパイを焼いている間に漬け込んでおいた鶏肉を冷蔵庫から取り出し、高遠の大好物であるバターチキンカレーを作ったのだ。
今はそれを食べている最中。…とはいっても、高遠は殆ど食べ終わっているのだけれど。
「地獄耳ね。全部聞いてたの?」
私が苦笑しながら問うと、佑は眉間に皺を寄せながら、当然だと言った。
「あのクズが何するかわかんねーし。そりゃ、耳をダンボにして聞き耳を立てるわ!」
「…ダンボ?じゃあ、空飛べちゃうね」
「茶化すなよ!…あの野郎、マジ胸糞」
「気持ちは分かるけど…。ほら、そんな事気にしてたら、大好物のバターチキンカレーが不味くなっちゃうわよ?今日はお誕生日なんだし、嫌なことは忘れて楽しもうよ」
宥めるようにそう言うと、高遠は不満気に口を尖らせた。
「別にどんな状況でもバターチキンカレーは不味くなんねーもん。バターチキンカレーは神だからな!しかも、もう食い終わったし。ご馳走様でした!メチャクチャ美味かった!なあ、またコレ作ってよ?」
「はいはい。お粗末様でした。こんな物でよければ、いつでも作るわよ。食べたくなったら、いつでも言って?それにしても、誕生日に食べたいものがカレーって…。男の人って、皆お子ちゃま舌よね」
図体は大きいのに可愛いなあと目を細めていると、高遠が不貞腐れながら「皆って誰のこと?」と言って、私の右手を齧った。
「痛っ!ちょっと、何すんの?痛いじゃない!私は食べ物じゃないわよ?」
「……消毒。あのクズが触ったから…」
「は?」
高遠は「ばっちいから」と呟いた後、先程噛んだ部分に舌を這わせ始めた。
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「……ダメ。アイツのせいで俺の真尋が減った」
「いや、私は目減りしませんけど?」
「……減った。絶対に減った」
ムスッと不機嫌さを隠そうともしない姿さえ愛しく思えるのだから、我ながらかなり重症だと苦笑する。
高遠は私の右手の甲から指の先までを丁寧に舐めあげた。やがて指の先に辿り着くと、ちゅぷりと指を咥えて、爪との肉の境目を舌先で辿る。そして指の間に舌を這わせ、次の指へと移る。
手の指など愛撫された事のない私は、こんな所まで性感帯になるのかと驚いた。舌がなぞる場所から生まれる甘い痺れに、私は目を伏せて酔いしれる。
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高遠は私を見つめたまま、私の手の平をベロリと舐めあげた。
「ふっ…んんっ」
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そうして私達は更にもう一戦交えることとなったのだった。
行為の後、高遠は私の髪を撫でながら難しい顔をしていた。「…どしたの?」と問えば、眉間の皺は更に深くなる。
「…いや、面白くないなって…。あの人さ、最近やたら俺に突っかかってくるんだよ。まるで自分の方がお前の事をよく分かってるから、いつでも取り戻せるみたいな感じでさ…」
「あの人?……ああ絢…宇宙人ね?」
「今、お前、またベッドの中で他の男の名前を呼ぼうとした?」
「い…いや、呼んでないよ?ってか、今の流れは不可抗力だよね?」
「……。まあ、とにかくさ。お前にとって、自分は特別な存在だと思ってるみたいでさ。俺の事なんて、寂しさを紛らわすのに利用されてるだけだ的な事を、遠回しに言ってきやがるんだよな…。
お前が料理上手だの何だのさ。そんなんは知っとるわ!って感じなんだけど。終いにゃ、脱がせなきゃ分かんないような所にある黒子の位置まで話して来やがって…。
まあ勿論、そんなん知ってますけど!って感じで余裕ぶっといたけどな?でも、実際あるのを見ちゃうと…面白くないっつーか何つーか…」
「はあ!?アイツ、そんな恥ずかしい話して来るの?あり得ない!変態か!……ん?でも私、脱がなきゃ分からない所に黒子なんて無いよ?」
「それがあるから面白くないんだよ。ここ。左太腿の付け根にあるんだよ」
そう言いながら、高遠は私の左のお尻と足の境目辺りを指でなぞった。
「さっき一応牽制しといたけど。あの人、変にポジティブっていうか、自分に都合よく解釈するくせあるから気を付けろよ?俺からみたら、あの人の方が真尋に未練タラタラに見えるんだよ。まあ、嫁と上手くいってないからなんだろうけどさ。
でも何かあったら、いつでも言えよ?」
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