孤独の恩送り

西岡咲貴

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8章 学生の恋事情

72話 次なる作戦は……

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「沙綾香って自分の事が分かってないみたいだから言っておいてあげるけど、あんたは凄くモテるんだよ?
もっと自信を持てば良いんじゃないかな?
 学部内じゃ一番美人って有名人だし、私の所にも「後藤沙綾香を紹介してくれ」って言う男が沢山来るんだからね……。
 まあ、彼氏が居るからって全部断ってあげてるけど」

 え?

 と言う事は、高田さんが言っていた「有名人」って言う噂は本当だったのか?

「そんな話は初耳だよ?」

 あまり友達を作っていなかった私は知らなかったけど、近寄って来る男子は全部美穂が断っていたと言うことなのか。

「そりゃそうだよ、言ってなかったんだから……」

 自分が有名人だと知らなかったのは友達が美穂しかいなくて、彼女に情報を遮断されていたからなのだと気付いた。

「ところで、高田さんとは何処で知り合ったの?
 彼は同じ講義を取っていたと言ってたけど、何十人も受けてるのに、彼氏の事しか見えていなかったあんたが認識していた筈なんてないよね?
 一方的に向こうが知っているだけなら不思議じゃないけど……」

 流石にその言い方は酷いのではないかと思ったけど、事実なので仕方がない。

「ああ、それはね……たまたま雨宿りのつもりで入った喫茶店で彼がアルバイトをしてたんだよ。
 それで少し話すきっかけがあって、理学部の先輩だという事と同じ講義を取っている事が分かったんだ……」

 彼女はその話を聞いてニヤニヤしていた。

「じゃあ、私もついて行ってあげるから今度その喫茶店一緒に行こうよ。
 通って仲良くなれば気持ち伝えやすいだろうし、もしかしたら向こうも好意を持ってくれるかもしれないでしょ?
 せっかく知り合ったんだから応援するし、頑張りなよ?」

 何も頼んでいないのに、話はどんどんと進んでいく。

 彼女はお節介ではあるけど、悪い子ではないと分かっている。

 確かに彼の事は気になっていたし、あの店のホットドッグはまた食べたいと思っていた所だったので丁度良いとは思う。
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