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4章 友情の崩壊
44話 友情回復テスト
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その朝はかなり激しい雨が降っており、皆傘をさしていると言うのに、多くの生徒はそれでも濡れながら登校した。
神と約束したテストはすぐに始まろうとしている。
この状況を他人が見れば、普段点数が取れない俺が「良い点を取らせろ」と神頼みをしているだけだと思うだろう。
やる気がなくてろくに勉強もせず、いつも遊んでいるのだからそう思われるのはごく当然の事だ。
しかし本当は、神などに頼ってはいないし、それどころか存在すら信じていないのだ。
あの火事の日に何があったのかは分からないが、未祐さんが亡くなった事だけは変える事の出来ない事実である。
それがきっかけで破綻しかかっている友達関係を修復するために、颯太の涼香に対する言葉を撤回させたいだけなのだ。
俺は麻衣に、何とかすると約束した。
関係が目に見えてどんどん悪くなっていくこの状況は彼女にとっても辛いに違いない。
鉛筆三本と消しゴムを机の端に置いて準備する。
「一枚ずつ取って、後ろの席にまわせ」
列毎に問題用紙と答案用紙が前から配られる。
「開始の合図を出すまで表を向けない様に」
テスト開始直前のよく見る注意事項だ。
俺はそれぞれ一枚ずつとって、後ろの颯太に回す。
生徒達は配られてくる用紙が白紙でないかと言う事だけを確認して、裏向けた状態で机の上に置く。
「先生、一枚足りません」
これも普通のやり取りだ。
「すまない、じゃあこれをもう一枚回してくれるか?」
列の一番前の生徒に追加で一枚渡す。
このテストは毎回マーク式なので、鉛筆を転がして適当に色を塗るだけでも〇点はありえないが、そのおかげで偶然を装える。
いつもなら勉強などせず、点数を取る気もないのだが、今回は別だ。
ここで高得点を取り、あたかも神の力であるかの様に見せかける。
そして、祠の前で仲直りを宣言させるのだ。
彼は真面目な性格なので、一度口にしてしまえば、必ず実行してくれるだろう。
だからこそ俺の前であれ、神の前であれ、口を開かせる事が大切なのだ。
一つ予想外だったのは、涼香が参加したと言う事だろう。
来なければ、結局追試と言う形になってしまうのでどちらにせよ受ける事にはなる。
そういう意味で今日を境に登校を決めたのかもしれない。
だが一言も喋らずに席に着いただけであったので、彼女が来たからと言って何かが変わる訳ではなかった。
適当な表現が思いつかないが、あえて普段との違いを言うとすれば、颯太の「テストどころではない動揺」が凄く伝わってくる事くらいだろうか。
「はじめ!」
担任の合図が教室内に響き渡り、それとほぼ同時にテスト開始のチャイムがスタートを知らせる。
深呼吸し、「勉強の成果を見せてやろう」と心の中で呟く。
用紙を表に向けて問題を確認すると、当然の様に書かれている事の意味が全て理解できる。
やはり俺は、勉強をすれば高得点を取る事ができるらしい。
ただ普段は、やる気がないだけなのだ。
そう思いながら、まずは「川島誠」と名前を書き込み、時間配分を考える。
当然だが、問題は後になるほど配点が高いので後ろから解いていく。
こんなにもしっかりと理解して書き込んでいる状況は颯太に見られると、普段とは違う事がバレてしまう。
それではまずいので、いつも通り鉛筆は適度に机の上で転がしておこう。
しかし、どうやら俺の状況よりも涼香が来たという事の方が気になっている様子だった。
そんな心境になるのなら、あんな酷い事を言わなければ良いじゃないかと思う所はあるが、母親が亡くなって心に余裕がなかった事は理解できるので、仕方のない事なのかもしれない。
神と約束したテストはすぐに始まろうとしている。
この状況を他人が見れば、普段点数が取れない俺が「良い点を取らせろ」と神頼みをしているだけだと思うだろう。
やる気がなくてろくに勉強もせず、いつも遊んでいるのだからそう思われるのはごく当然の事だ。
しかし本当は、神などに頼ってはいないし、それどころか存在すら信じていないのだ。
あの火事の日に何があったのかは分からないが、未祐さんが亡くなった事だけは変える事の出来ない事実である。
それがきっかけで破綻しかかっている友達関係を修復するために、颯太の涼香に対する言葉を撤回させたいだけなのだ。
俺は麻衣に、何とかすると約束した。
関係が目に見えてどんどん悪くなっていくこの状況は彼女にとっても辛いに違いない。
鉛筆三本と消しゴムを机の端に置いて準備する。
「一枚ずつ取って、後ろの席にまわせ」
列毎に問題用紙と答案用紙が前から配られる。
「開始の合図を出すまで表を向けない様に」
テスト開始直前のよく見る注意事項だ。
俺はそれぞれ一枚ずつとって、後ろの颯太に回す。
生徒達は配られてくる用紙が白紙でないかと言う事だけを確認して、裏向けた状態で机の上に置く。
「先生、一枚足りません」
これも普通のやり取りだ。
「すまない、じゃあこれをもう一枚回してくれるか?」
列の一番前の生徒に追加で一枚渡す。
このテストは毎回マーク式なので、鉛筆を転がして適当に色を塗るだけでも〇点はありえないが、そのおかげで偶然を装える。
いつもなら勉強などせず、点数を取る気もないのだが、今回は別だ。
ここで高得点を取り、あたかも神の力であるかの様に見せかける。
そして、祠の前で仲直りを宣言させるのだ。
彼は真面目な性格なので、一度口にしてしまえば、必ず実行してくれるだろう。
だからこそ俺の前であれ、神の前であれ、口を開かせる事が大切なのだ。
一つ予想外だったのは、涼香が参加したと言う事だろう。
来なければ、結局追試と言う形になってしまうのでどちらにせよ受ける事にはなる。
そういう意味で今日を境に登校を決めたのかもしれない。
だが一言も喋らずに席に着いただけであったので、彼女が来たからと言って何かが変わる訳ではなかった。
適当な表現が思いつかないが、あえて普段との違いを言うとすれば、颯太の「テストどころではない動揺」が凄く伝わってくる事くらいだろうか。
「はじめ!」
担任の合図が教室内に響き渡り、それとほぼ同時にテスト開始のチャイムがスタートを知らせる。
深呼吸し、「勉強の成果を見せてやろう」と心の中で呟く。
用紙を表に向けて問題を確認すると、当然の様に書かれている事の意味が全て理解できる。
やはり俺は、勉強をすれば高得点を取る事ができるらしい。
ただ普段は、やる気がないだけなのだ。
そう思いながら、まずは「川島誠」と名前を書き込み、時間配分を考える。
当然だが、問題は後になるほど配点が高いので後ろから解いていく。
こんなにもしっかりと理解して書き込んでいる状況は颯太に見られると、普段とは違う事がバレてしまう。
それではまずいので、いつも通り鉛筆は適度に机の上で転がしておこう。
しかし、どうやら俺の状況よりも涼香が来たという事の方が気になっている様子だった。
そんな心境になるのなら、あんな酷い事を言わなければ良いじゃないかと思う所はあるが、母親が亡くなって心に余裕がなかった事は理解できるので、仕方のない事なのかもしれない。
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