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赤い葉っぱ

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「あ……」

 目の前をひらりと舞ったのは、紅葉の葉っぱ……



(もうそんな季節なんだな……)

 私は、ひざを曲げ、真っ赤な葉っぱを手に取った。


ここのところ、忙しいばかりで、季節のことを考える余裕すらなかった。
 朝早くに家を出て、空腹を抱えて帰って来るのは皆がそろそろ眠ろうかとする時間…
でも、こんなに働いても、少しも満たされることはない。
 年齢のことも考えて、もう少し、楽な仕事に転職しようかと考えたりしながら、なかなか踏ん切りもつかない。


 家に帰ると、早速、楽な部屋着に着替え、駅前で買って来たお弁当に手をつける。
お風呂からあがったら、いつものように軽い睡眠薬を口に含む。
 疲れてるはずなのに、なんだか不思議と眠れない…そんな日が続き、私は手っ取り早く眠る方法を選んだ。



 ***



 (……ん?)


 何かの物音で私の睡眠は邪魔された。
どうやら、音はベランダの向こう側…ガラスを叩くような変な音…でも、そんな所で何の音が?
ゆっくりと起き出し、私は恐る恐るカーテンを開いた。


 「わっ!」


 私は後ろ手にカーテンを閉じ、弾む息を整えた。


 確か、今、なにかがいた…下の方に…
そう…なんか茶色い動物……


もしかしたら、近所の犬が迷い込んだ??


 私はカーテンをゆっくり開けて、こっそりともう一度見てみた。


それは茶色い……アライグマ??
しかも、立ってガラスを叩いてる。


 (どうしよう?)


やっぱり近所の誰かのペットが逃げ出したんだ。
 私は動物は嫌いじゃないけど…でも、関わるのも面倒だ。
カーテンをまた閉めようとすると、アライグマはじっと私を見上げてた。
 思わず、可哀想になって開けたくなったけど…でも、明日も早いしやっぱり関わるのはいやだと私は冷たくカーテンを引いた。


 「……やな奴……」

 「え?」

 再びベッドに横になった途端、聞き覚えのない声が響いた。


 (……やだ、寝ぼけてるんだ、私……)


 「無視すんなよ……」

 「え…!?」

ふと視線を落とすと、ベッドの傍にさっきのアライグマが立っていた。


 「な、なんで……」

 「開けてくれないから勝手に入って来た。」

 「え…な、な、な……」

アライグマが…アライグマが…勝手に部屋に入って、立って、喋ってる!!
 私は、どう反応すれば良いのかわからず、ただアライグマをみつめるだけだった。
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