157 / 239
四月馬鹿
1
しおりを挟む
「えーっと…」
俺が差し出した箱を見て、奈緒美さんは困ったような表情を浮かべた。
始発に乗って、わざわざ遠くまで買いに行ってきた上等の魚の干物だ。
しかも、普段の俺ならまず買わないくらいに高かった。
奈緒美さんのことが好きになりすぎた俺は、告白した方が良いかどうかを友達に相談した。
すると、藤森が良いことを教えてくれたんだ。
4月1日は日本ではエイプリルフールなんて言われて、くだらない嘘を吐いてるけど、フランスでは、好きな人に愛の告白をするポワズン・ダヴリルっていう日なんだって。
しかも、この日にした告白は必ずうまくいくと言われてるらしいんだ。
「ほ、本当なのか!
藤森、良いこと教えてくれてありがとう!」
「そりゃあおまえには幸せになってほしいからな。
ただ、少しばかり問題がある。」
「問題…?」
「そうだ。ポワズン・ダヴリルは、魚の格好をして、相手に魚の干物を渡さないといけないらしいんだ。」
「魚の…?」
なんでも、フランスでは魚は愛の精霊と呼ばれているらしいんだ。
「ちょっと恥ずかしいけど…探せばなんとかなるだろう。」
「祐介、なんなら鯉のぼりを着て行ったらどうだ?」
「そりゃ良いな!こいのぼりだったら、うちにもあるから貸してやるよ!」
「あ、あぁ、ありがとう、佐々木。
なぁ…でも、奈緒美さんはその風習を知ってるかな?
もし知らなかったら…」
「ばか。今時、ポワズン・アヴリルを知らないなんて、おまえくらいのもんだぞ。
流行に敏感な女子なら、皆、知ってるって。」
「そ、そっかー…」
かくして俺は、佐々木から借りた薄汚れた鯉のぼりにすっぽり入って……ぱっと見には、鯉のぼりに食われてるような格好だ。
さらに藤森が買ってくれた魚のかぶりものをかぶって、奈緒美さんを近所の公園に呼び出した。
奈緒美さんは僕の格好を見て、一瞬驚き、そしてくすくすと笑った。
そんなことはどうでも良い。ここに来るまでにもさんざん笑われたから。
「えーっと。」
干物の箱を目の前にして、奈緒美さんは困ったような顔を浮かべた。
「どうかよろしくお願いします!」
「……エイプリルフールってこと?」
「違います!
これはマジの告白です!
前からずっと好きでした。
どうか俺の想いを受け取って下さい!」
おかしな格好をしてさんざんあちこちで笑われてきたせいか、俺は自分でも驚くくらい、ストレートに想いを伝えることが出来た。
俺が差し出した箱を見て、奈緒美さんは困ったような表情を浮かべた。
始発に乗って、わざわざ遠くまで買いに行ってきた上等の魚の干物だ。
しかも、普段の俺ならまず買わないくらいに高かった。
奈緒美さんのことが好きになりすぎた俺は、告白した方が良いかどうかを友達に相談した。
すると、藤森が良いことを教えてくれたんだ。
4月1日は日本ではエイプリルフールなんて言われて、くだらない嘘を吐いてるけど、フランスでは、好きな人に愛の告白をするポワズン・ダヴリルっていう日なんだって。
しかも、この日にした告白は必ずうまくいくと言われてるらしいんだ。
「ほ、本当なのか!
藤森、良いこと教えてくれてありがとう!」
「そりゃあおまえには幸せになってほしいからな。
ただ、少しばかり問題がある。」
「問題…?」
「そうだ。ポワズン・ダヴリルは、魚の格好をして、相手に魚の干物を渡さないといけないらしいんだ。」
「魚の…?」
なんでも、フランスでは魚は愛の精霊と呼ばれているらしいんだ。
「ちょっと恥ずかしいけど…探せばなんとかなるだろう。」
「祐介、なんなら鯉のぼりを着て行ったらどうだ?」
「そりゃ良いな!こいのぼりだったら、うちにもあるから貸してやるよ!」
「あ、あぁ、ありがとう、佐々木。
なぁ…でも、奈緒美さんはその風習を知ってるかな?
もし知らなかったら…」
「ばか。今時、ポワズン・アヴリルを知らないなんて、おまえくらいのもんだぞ。
流行に敏感な女子なら、皆、知ってるって。」
「そ、そっかー…」
かくして俺は、佐々木から借りた薄汚れた鯉のぼりにすっぽり入って……ぱっと見には、鯉のぼりに食われてるような格好だ。
さらに藤森が買ってくれた魚のかぶりものをかぶって、奈緒美さんを近所の公園に呼び出した。
奈緒美さんは僕の格好を見て、一瞬驚き、そしてくすくすと笑った。
そんなことはどうでも良い。ここに来るまでにもさんざん笑われたから。
「えーっと。」
干物の箱を目の前にして、奈緒美さんは困ったような顔を浮かべた。
「どうかよろしくお願いします!」
「……エイプリルフールってこと?」
「違います!
これはマジの告白です!
前からずっと好きでした。
どうか俺の想いを受け取って下さい!」
おかしな格好をしてさんざんあちこちで笑われてきたせいか、俺は自分でも驚くくらい、ストレートに想いを伝えることが出来た。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
家族で冒険者になろう
ゆぃ♫
ファンタジー
ある日何も無い日常から、ファンタジーに少しずつ変わっていくお話
平凡日常系ファンタジーです。
虫の魔物などが出る予定なので苦手な方はタイトルで読み飛ばしてください。
拙い文章ですが読んでいただけると幸いです。月曜日に不定期に配信します。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
冷遇ですか?違います、厚遇すぎる程に義妹と婚約者に溺愛されてます!
ユウ
ファンタジー
トリアノン公爵令嬢のエリーゼは秀でた才能もなく凡庸な令嬢だった。
反対に次女のマリアンヌは社交界の華で、弟のハイネは公爵家の跡継ぎとして期待されていた。
嫁ぎ先も決まらず公爵家のお荷物と言われていた最中ようやく第一王子との婚約がまとまり、その後に妹のマリアンヌの婚約が決まるも、相手はスチュアート伯爵家からだった。
華麗なる一族とまで呼ばれる一族であるが相手は伯爵家。
マリアンヌは格下に嫁ぐなんて論外だと我儘を言い、エリーゼが身代わりに嫁ぐことになった。
しかしその数か月後、妹から婚約者を寝取り略奪した最低な姉という噂が流れだしてしまい、社交界では爪はじきに合うも。
伯爵家はエリーゼを溺愛していた。
その一方でこれまで姉を踏み台にしていたマリアンヌは何をしても上手く行かず義妹とも折り合いが悪く苛立ちを抱えていた。
なのに、伯爵家で大事にされている姉を見て激怒する。
「お姉様は不幸がお似合いよ…何で幸せそうにしているのよ!」
本性を露わにして姉の幸福を妬むのだが――。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる