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つららの垂れる

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「遅くなってごめんよ。
寂しかっただろう…?」

低い男の声が、短い余韻を響かせる。



「……イザベラにみつかったら厄介だからね。
今日も、友人と狩りに行くって言って出てきたんだ。
あぁ、心配はいらないよ。ジョージに口裏を合わせてくれるように頼んでおいたから、バレることはない。
実は、彼も、今、私と同じことをしている。
全く、良い友人に巡りあったものだ。」

男は、そう言うとおかしそうに肩を揺らした。



「……それにしても、この冬はなんて寒さだ。」

ついさっきとは打って変わって、長く垂れ下がったつららを見て男は憂鬱そうに首を振る。




「ここは街よりもずっと寒い。
済まないね…こんな所に住まわせて……
その代わり、ほら…コートを持って来たんだ。
見事だろう?銀狐の毛だ。
これを着ていれば、寒さなんて少しも感じないさ。」

男は、椅子に座った骸骨に豪華な毛皮のコートを纏わせた。
金髪のかつらを被らせ、シルクのドレスを着た骸骨は、いつものごとく男にされるがままにそこに座り続ける。



「そうそう、先週、シューマンの家でパーティがあってね。
そこで、懐かしい人に会ったよ。
ロイとアニスだ。
覚えてるだろ?
ハイスクールで同じクラスだったあのロイとアニスだよ。
なんと、あの二人…結婚したんだって。
びっくりしたよ。」



骸骨の向かいの椅子に腰掛け、男は他愛ない話を淡々と続ける。
時には、大きな笑い声を上げながら……



「うぅ…それにしてもここは寒い。」

男はポケットから小瓶を取り出し、それをごくごくと流し込む。




「あ、それからね……」



男が話しかけた時、松明の熱で溶けたのか、短いつららが骸骨の脳天目掛け、真っ直ぐに落下し刺さった。



「はははははは!」



それを見た男は、腹を抱えて笑う。
狂気の笑いが洞窟の空気をどれほど揺るがしても、骸骨は、そんなことには少しも動じず、ただいつもと同じように黙って座っているだけだった。
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