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チョコレートよりずっと甘く…

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はぁぁ……



自分で吐いた大きな溜め息に、俺の気持ちはさらに沈んだ。
馬鹿馬鹿しい…
こんなこと、最初からわかってたことじゃないか。
落ちこむようなことじゃない。

頭ではわかってるのに、それでもやっぱり元気は出ない。



そうだ…小林が悪いんだ!
もう俺は諦めてたのに、あいつが「綾部がクラス全員に配るみたいだぞ!」って言い出して…
義理でもなんでもとにかく1つはもらえる…しかも、綾部はクラスでもベスト3に入る可愛い子だからそれだけで俺は舞い上がってしまって……



なのに、綾部が配ったのはクラスの女子全員だったんだ。



あ~あ…俺も中2までは義理でもチョコがもらえたのに…
やっぱり、最近太ってきたのが悪いのか…?
それとも、相撲研究会に所属してるせいか?



あぁーー!もうやめた!
こんなこと、考えるだけ無駄だ。
とにかく、家族に馬鹿にされないようにチョコを一つだけ買って帰ろう…
そう思った時のことだった。

おばあさんが、ゴロゴロをみつめて呆然と立ち尽していた。
手には小さな車輪。
どうやら、ゴロゴロの車輪がはずれてしまったようだ。
荷物はぎっしり入ってるし、車輪がはずれたんじゃうまく引っ張れないだろう。

どうしよう…声をかけるべきか…
でも、恥ずかしいし…

俺は迷いながら、おばあさんの脇を通り過ぎ……
……やっぱり気になって引き返すと、3つの車輪で引っ張ったゴロゴロがちょうどバランスを崩して……



「危ない!」

「あ!……あぁ、ありがとう。」



おばあさんは、俺の顔を見てほっとしたように微笑んだ。
おばあさんの笑顔って、どうしてこう和むんだろう?



「おばあさん、俺が持って行きますよ。」







「お待たせ。」



おばあさんの家は俺の家のすぐ傍だった。
俺が帰ろうとすると、ちょっとだけあがっていってと引き止められて…
そのうちなんともいえない良いにおいがしてきて、差し出されたのは大きなお餅の入ったぜんざいだった。



「本当にありがとう。
助かったよ。
寒いのにすまなかったね。」

「いえ…あ、いただきます。」



甘い…!
一口で、口の中に甘味が広がった。
きっと、昔の人だからこういう味が好きなんだな。
でも、妙に後に残らない甘さだ。
焼き目を付けた芳ばしいお餅とからめると、程よい甘さになるし、インスタントのぜんざいとは全然違う…!



「こ、これ…すっごく美味しいです!」

「そうかい?そりゃあ、良かった。」

おばあさんは、嬉しそうに笑ってくれた。



その後、ふとしたことからおばあさんが相撲ファンだということがわかり、俺達の話は俄然盛りあがった。
落ちこんでたことも忘れ、また遊びに来る事を約束して俺は爽快な気持ちで家に帰った。

 
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