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あたたかい温もりに包まれて

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(う~ん…ほかほかして気持ち良い…)



私は、とても柔らかくて温かなベッドで目覚めた。



(どこだろう?)



それは、とても奇妙なベッドで…
私の全身をすっぽりと包み込んでいた。
だけど、その心地良さと言ったら……!
不安な気持ちもある筈なのに、自然にまどろみを覚えてしまう。



(でも、やっぱり気になる…)



私は手を伸ばし、私を包み込んでいる柔らかなものにその腕を押しこんだ。
思った以上に柔らかいそれは、私の腕を突き通し、小さな穴を開けた。




「あ…な、なにっ!?」



そこから外をのぞこうとした時、不意に感じた振動…
まるで、私はベッドごと、持ち上げられたみたいで…



「まぁ、美味しそう。」



今の声はお母さん?

私が、穴から外をのぞくと、今にもかぶりつきそうなお母さんの大きな口が見えて……



「きゃあーーーーー!」



***



今にも飛び出してきそうなくらい脈打つ心臓…
私は汗びっしょりになっていて……



「ゆ…夢かいっっ!」



ほっとして、強張った身体から一気に力が抜けた。



(あぁ~…きっと昨夜のあれのせいだ…)



昨日、仕事帰りに雑誌を買おうと思って立ち寄ったコンビニで、私はレジ横のケースに並べられた肉まんに心ひかれた。
もうそんな季節なのかと思うと同時に、思い出されたあの柔らかな舌触り、ジューシーな肉の味が脳内を刺激して…



た…食べたい!



だけど、私は今月の初めからダイエットを始めてて……



『だめよ、あんなの食べちゃ今までの苦労が水の泡!』

『一つくらいなら大丈夫だって!』

『その一口がブタになるって、言葉を忘れたの?』

『たまには自分にご褒美をあげた方が長続き出来るってものよ。』



レジの前で私の心の中の天使と悪魔がせめぎあい…
そして、私は雑誌も買わずに外へ飛び出した。



勝った!
私は悪魔に勝ったのよ!

そんなつまらない勝利感よりもにくまんを買わなかった後悔の方がずっと強く、私は、頭の中からにくまんが離れないまま、無理に眠りに就いた。



(だから、あんな夢見ちゃったんだ…)



私は決意した!
今日は、にくまんを食べてやる!
ダイエットはもうやめた!



「よ~し!今日も一日頑張るぞ!」

私は清々しい気持ちでベッドから飛び起きた。
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