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秋の夜長に見る夢は…②

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 (ここは……?)



あたりには何もないし誰もいない…
ただ白くもわもわしたものが果てしなく一面に広がって……



もしかしたら、ここは雲の上…?
僕は、恐る恐る足を踏み出した。

歩けた…何事もなく歩く事は出来た。
けれど、どこまで行ってもその風景は少しも変わらない。

不安になって僕は叫んだ。
「誰かいませんか?」と。
しかし、それに応える声はない。
僕は、駆け出した。
誰かいないかと…どこかにこの白い風景以外のものがないかと…



「あぁーーっ!」



不意に足元の感覚がなくなり、僕は雲を付きぬけ真っ逆さまに落ちて行った。







「はっ!」



目の前の景色は一変し…そこは住み慣れた僕の部屋だった。



(夢、か……)



ほっと胸を撫で下ろし、僕は階下へ向かった。



「母さん、おはよう。」



台所でお湯をわかす母は僕の声を無視した。



「母さん…!」



母は、煎れ立てのお茶を持って歩き始めた。



(……あ)



仏壇の前に母はお茶を供えた。
そこには綺麗な花や果物が備えられ…そして、僕の写真が飾ってあった。
三ヶ月程前、遊びに行ったキャンプ場で撮ったものだ。







……そうか…また忘れてた。
……僕は死んだんだ…



まだ慣れてなくて、よくこんな勘違いをしてしまう。
だけど、もうじき僕はここを離れなきゃならない。
そしたら、きっと……僕はもう夢を見ることはなくなるだろう。



でも…その代わりに僕は夢になることが出来る。
父さんや母さんや、兄弟のように育って来た隣の二人の夢になることが出来る。



「ごめんね、母さん…」



仏壇の前で涙を拭う母に思わず声をかけてしまった。
聞こえない事はわかってるのに…



僕の姿は誰にも見えず、僕の声はもう誰にも届かない。
だけど、僕はいつもみんなの傍にいる。
死んでも、気持ちは少しも変わらない。
僕がみんなのことを想う気持ちは少しも変わらない。
絆は切れたりはしないんだ。



そのことを伝えに、僕は時々夢になるよ。
見えなくても聞こえなくても、君達のために何も出来なくても、それでも僕は伝えたい。
君達が大好きで、今も大切に想ってることを。
この気持ちはいつまでもずっと変わらないという事を。



~fin~

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