赤い流れ星３

side 和彦

８

「いつか、海外も行ってみたいです。」

 「そ…そうですね。」



 俺達の間には、再び沈黙が訪れた。



 「そういえば……」

 不意に、忘れかけていた記憶が頭の中に思い浮かんだ。
それは、シュウとふたりの旅行だ。



 当時、俺はまだシュウが小説の世界から来たってことに半信半疑で…当然、お互いにまだ心を開いてはいなかった。
ネットで知ったあの赤い流れ星の奇跡について、シュウとふたりで調べに行ったんだ。



 一度はすべて忘れた記憶…
俺以外の人間には、なかったことにされた閉ざされた記憶…



そう思うと、今でも背筋が寒くなって来る。
それに、あの赤い流れ星がもたらした悲しい奇跡…
あの時は、ずいぶんと心が痛んだものだった。
だが、それが本当のことだと思えた時…
それなら、シュウが小説の世界から来たという夢みたいなことも、あり得るような気がした。



 （あ…そうだ……）



 突然、温泉で子供みたいにお湯のかけあいをしたことを思い出した。
なんであんなことをしてしまったのか覚えてないけど…
あの時は、心の底から笑ったような気がする。



 思い出すと、自然と笑みが浮かんだ。