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side 美幸
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「シュウ、おめでとう!」
「シュウさん、おめでとう!」
皆が口々にお祝いの言葉を述べ、シャンパンの入ったグラスを合わせた。
おじいさんの家でのシュウさんの退院祝いパーティは、うちの四人と野々村さん、そして、シュウさんのお店からはジョーさんと慎二さんが来た。
いつものメンバーだ。
「もうすっかり良くなったんじゃな?」
「あぁ、病院で徹底的に調べて来たから、入院前より元気なくらいだ。」
そう言ったシュウさんの顔は、どこか暗い影が射していた。
それもそのはず…シュウさんは大きな嘘を吐いてるんだから…
辛いだろうな…あんな嘘吐くの…
「おや、ひかり…どうした?
えらく元気がないじゃないか。浮かない顔をして…」
「そ、そんなことないよ。
ど、どれを食べようかって悩んでただけ。」
「そうかそうか。
さ、さ、いっぱい食べるんじゃぞ。」
そう言って、おじいさんは私の背中をポンポンと叩いた。
良いな…おじいさんは、何も知らなくて…
私だって、あんな重大な秘密知りたくなかった。
知らなかったら、おじいさんと同じように、シュウさんの嘘に騙されて、きっと楽しめただろうに…
「ひかりちゃん…すまなかったな。
今日は純平を呼ばなくて…」
「え…そんなこと……」
私は思わず首を振った。
「あいつには、今また新人の教育係をやってもらってるんだ。」
「そうなんですか…」
「何だ、冷たいな。
喧嘩でもしたのか?」
「いえ…別に…元々私と純平君は友達に毛が生えたようなものでしたから…」
私がそういうと、シュウさんの眉間に深い皺が現れた。
「ちょっと待て。
確か、この前もそんなこと言ってたな。
やっぱり、あんなことがあったから、純平とはもう付き合えないっていうことか?」
「だから…私達は最初からそういう関係じゃないんです。」
「嘘を吐くな!
こないだ言ったじゃないか。
純平のことは好きだって。」
「ええ、だから…その好きは友達に毛が生えたようなもので…そんな強い気持ちじゃなかったんです。
あんなことがあったくらいで揺らいでしまうくらいですから…」
それは、正直な気持ちだった。
でも、私がそう言うと、シュウさんはますます不機嫌な顔になって、私の傍から離れて行った。
「シュウ、おめでとう!」
「シュウさん、おめでとう!」
皆が口々にお祝いの言葉を述べ、シャンパンの入ったグラスを合わせた。
おじいさんの家でのシュウさんの退院祝いパーティは、うちの四人と野々村さん、そして、シュウさんのお店からはジョーさんと慎二さんが来た。
いつものメンバーだ。
「もうすっかり良くなったんじゃな?」
「あぁ、病院で徹底的に調べて来たから、入院前より元気なくらいだ。」
そう言ったシュウさんの顔は、どこか暗い影が射していた。
それもそのはず…シュウさんは大きな嘘を吐いてるんだから…
辛いだろうな…あんな嘘吐くの…
「おや、ひかり…どうした?
えらく元気がないじゃないか。浮かない顔をして…」
「そ、そんなことないよ。
ど、どれを食べようかって悩んでただけ。」
「そうかそうか。
さ、さ、いっぱい食べるんじゃぞ。」
そう言って、おじいさんは私の背中をポンポンと叩いた。
良いな…おじいさんは、何も知らなくて…
私だって、あんな重大な秘密知りたくなかった。
知らなかったら、おじいさんと同じように、シュウさんの嘘に騙されて、きっと楽しめただろうに…
「ひかりちゃん…すまなかったな。
今日は純平を呼ばなくて…」
「え…そんなこと……」
私は思わず首を振った。
「あいつには、今また新人の教育係をやってもらってるんだ。」
「そうなんですか…」
「何だ、冷たいな。
喧嘩でもしたのか?」
「いえ…別に…元々私と純平君は友達に毛が生えたようなものでしたから…」
私がそういうと、シュウさんの眉間に深い皺が現れた。
「ちょっと待て。
確か、この前もそんなこと言ってたな。
やっぱり、あんなことがあったから、純平とはもう付き合えないっていうことか?」
「だから…私達は最初からそういう関係じゃないんです。」
「嘘を吐くな!
こないだ言ったじゃないか。
純平のことは好きだって。」
「ええ、だから…その好きは友達に毛が生えたようなもので…そんな強い気持ちじゃなかったんです。
あんなことがあったくらいで揺らいでしまうくらいですから…」
それは、正直な気持ちだった。
でも、私がそう言うと、シュウさんはますます不機嫌な顔になって、私の傍から離れて行った。
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