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side 和彦
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*
「ネイサン、居間に布団を敷くから…」
「あ、僕はカズの部屋で寝かせてもらうよ。」
「えっ?俺の部屋で?」
「あぁ、僕にはタカミ―みたいな趣味はないから安心してよ。
カズとはいろいろと話したいこともあるからね。」
そう言って、ネイサンは俺に目配せを送った。
話したいことって何だろう?
俺はネイサンとはそれほど親しいわけじゃない。
いや、親しくないというのとは少し違うが、アッシュ達の方が、親しいはずなのだけど…
ただ、俺とは年齢が近いから、もしかしたら、なにか相談事でもあるのかもしれない。
*
「カズ…本当に良かったね!」
部屋で二人っきりになった途端、ネイサンがそんなことを言い出した。
「良かったって、何が?」
「何がって、妹さんのことに決まってるじゃない。」
「美幸のこと?美幸の何が良かったんだ?」
「カズ…ふざけてるの?」
「え?俺はふざけてなんかないけど…」
ネイサンは怪訝な顔で俺をみつめていた。
「まさか、あの時のことは冗談だった…なんていうんじゃないだろうね?」
ネイサンの顔が急に険しいものに変わった。
「ネイサン、一体、何の事を言ってるんだ?
君の行ってることが、さっぱりわからない。」
「だから…あの時のことだよ。
妹さんが違う世界に行ってしまったっていう…」
「違う……世界?」
ネイサンの言葉を聞いた途端、なんだかたとえようもなく不安な気持ちになった。
心の中がざわめいて、酷く落ち着かない。
「カズ…どうかしたの?
まさか、忘れたっていうんじゃないだろ?
君はあの時、僕にシュウを預かってくれって頼んだ。」
「……シュウ……」
知らないはずのその名前が、頭の中でぐるぐると回り始めた。
なにかを思い出しそうで…でも、それがつかめない。
今日はずいぶん飲んでたというのに、酔いもすっかり覚めてしまってた。
「そう、シュウだ…シュウは、美幸ちゃんが書いた携帯小説のオリキャラだ。
そのキャラクターが、現実に現れたんだ。
カリスタギュウス流星群の奇蹟で、小説のキャラクターが具現化したんだ。」
「な…
カリスタギュウス……」
俺は全身から汗が噴き出すのを感じた。
ネイサンの言う言葉に、心臓が…頭が、激しく反応する。
速まる鼓動…痛む頭…
何かが、点から形作られそうで…
「カズ…大丈夫か!?」
「だ、大丈夫だ…」
「いいか?美幸ちゃんは、小説の続きを書いた。
二人が、時空を超える門を通って、小説の世界に行くって物語だ。そして、ふたりは……」
「あ、ああああーーーーーっ!」
「ネイサン、居間に布団を敷くから…」
「あ、僕はカズの部屋で寝かせてもらうよ。」
「えっ?俺の部屋で?」
「あぁ、僕にはタカミ―みたいな趣味はないから安心してよ。
カズとはいろいろと話したいこともあるからね。」
そう言って、ネイサンは俺に目配せを送った。
話したいことって何だろう?
俺はネイサンとはそれほど親しいわけじゃない。
いや、親しくないというのとは少し違うが、アッシュ達の方が、親しいはずなのだけど…
ただ、俺とは年齢が近いから、もしかしたら、なにか相談事でもあるのかもしれない。
*
「カズ…本当に良かったね!」
部屋で二人っきりになった途端、ネイサンがそんなことを言い出した。
「良かったって、何が?」
「何がって、妹さんのことに決まってるじゃない。」
「美幸のこと?美幸の何が良かったんだ?」
「カズ…ふざけてるの?」
「え?俺はふざけてなんかないけど…」
ネイサンは怪訝な顔で俺をみつめていた。
「まさか、あの時のことは冗談だった…なんていうんじゃないだろうね?」
ネイサンの顔が急に険しいものに変わった。
「ネイサン、一体、何の事を言ってるんだ?
君の行ってることが、さっぱりわからない。」
「だから…あの時のことだよ。
妹さんが違う世界に行ってしまったっていう…」
「違う……世界?」
ネイサンの言葉を聞いた途端、なんだかたとえようもなく不安な気持ちになった。
心の中がざわめいて、酷く落ち着かない。
「カズ…どうかしたの?
まさか、忘れたっていうんじゃないだろ?
君はあの時、僕にシュウを預かってくれって頼んだ。」
「……シュウ……」
知らないはずのその名前が、頭の中でぐるぐると回り始めた。
なにかを思い出しそうで…でも、それがつかめない。
今日はずいぶん飲んでたというのに、酔いもすっかり覚めてしまってた。
「そう、シュウだ…シュウは、美幸ちゃんが書いた携帯小説のオリキャラだ。
そのキャラクターが、現実に現れたんだ。
カリスタギュウス流星群の奇蹟で、小説のキャラクターが具現化したんだ。」
「な…
カリスタギュウス……」
俺は全身から汗が噴き出すのを感じた。
ネイサンの言う言葉に、心臓が…頭が、激しく反応する。
速まる鼓動…痛む頭…
何かが、点から形作られそうで…
「カズ…大丈夫か!?」
「だ、大丈夫だ…」
「いいか?美幸ちゃんは、小説の続きを書いた。
二人が、時空を超える門を通って、小説の世界に行くって物語だ。そして、ふたりは……」
「あ、ああああーーーーーっ!」
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