189 / 761
side 和彦
2
しおりを挟む
「カズ!」
「アンリ……
どうしたんだ?
今日は仕事だったんじゃ…」
「そうなんだけど、せっかくお家に誘ってもらったし…遅くなったけどタクシー飛ばして来ちゃった!」
「タ…タクシーで!?」
「ええ…今月のお給料,全部飛んじゃったわ。
……でも…そんなこと、どうでも良いの…
カズに誘ってもらえたことが嬉しかったんだもの。」
はにかみながらじっと俺をみつめるアンリに、俺は複雑な想いを感じた。
一月分の給料にも値する遠い道程をタクシーで駆け付けるとは……
その一途さは嬉しいというよりも気が重く感じられ、そのことで俺はますますアンリに対する罪悪感のようなものを深くした。
「でも遅すぎたわね。
却ってご迷惑だったかしら?」
「いや、そんなことは……
ま、確かにそろそろお開きにってところだったんだが……とにかく、入れよ。」
「お邪魔します。」
どうしよう……
まさか、こんな時間になってアンリが来るなんて思ってもみなかった。
元々、大河内さんと野々村さんの手前、呼んだに過ぎない。
だから、来ないとわかった時も少しも落胆は感じず、あのいつもとは違う野々村さんを見た時には、アンリが来なくて良かったとさえ思った。
だけど、さっきの大河内さんと野々村さんを見た時には、一瞬だがアンリがいたら良かったのにと考えた。
……俺は身勝手だ。
自分のことしか考えていない。
「あ…みんな…
アンリだ。
仕事が終わってから駆け付けてくれたんだ。」
「アンリです。
皆さん、初めまして。」
「ほほぅ…これはまたすごいべっぴんさんじゃな。
和彦さんの彼女さんかな?」
大河内さんの余裕の微笑みが無性に俺を苛々させた。
それは自分にも決まった相手がいるからなのか……
ただの遊び相手なんかじゃない…一生を共にすると誓った野々村さんがいるからなのか?
「そうですね…
そう言っても良いかもしれません。」
そう言いながら、俺はアンリの肩を抱き寄せた。
「カズ…!」
頬を染め、嬉しそうな笑みを浮かべるアンリから俺は視線を逸らした。
頭に血が上り、俺は心にもないことを口走ってしまった。
今の俺なら、大河内さんと野々村さんの結婚が決まったら、すぐにでもアンリと結婚してしまうかもしれない。
ただ、大河内さんに負けたくないがためだけに。
……俺は異常だ。
なぜ、こんなにも俺は大河内さんに負けたくないんだ!?
「アンリ……
どうしたんだ?
今日は仕事だったんじゃ…」
「そうなんだけど、せっかくお家に誘ってもらったし…遅くなったけどタクシー飛ばして来ちゃった!」
「タ…タクシーで!?」
「ええ…今月のお給料,全部飛んじゃったわ。
……でも…そんなこと、どうでも良いの…
カズに誘ってもらえたことが嬉しかったんだもの。」
はにかみながらじっと俺をみつめるアンリに、俺は複雑な想いを感じた。
一月分の給料にも値する遠い道程をタクシーで駆け付けるとは……
その一途さは嬉しいというよりも気が重く感じられ、そのことで俺はますますアンリに対する罪悪感のようなものを深くした。
「でも遅すぎたわね。
却ってご迷惑だったかしら?」
「いや、そんなことは……
ま、確かにそろそろお開きにってところだったんだが……とにかく、入れよ。」
「お邪魔します。」
どうしよう……
まさか、こんな時間になってアンリが来るなんて思ってもみなかった。
元々、大河内さんと野々村さんの手前、呼んだに過ぎない。
だから、来ないとわかった時も少しも落胆は感じず、あのいつもとは違う野々村さんを見た時には、アンリが来なくて良かったとさえ思った。
だけど、さっきの大河内さんと野々村さんを見た時には、一瞬だがアンリがいたら良かったのにと考えた。
……俺は身勝手だ。
自分のことしか考えていない。
「あ…みんな…
アンリだ。
仕事が終わってから駆け付けてくれたんだ。」
「アンリです。
皆さん、初めまして。」
「ほほぅ…これはまたすごいべっぴんさんじゃな。
和彦さんの彼女さんかな?」
大河内さんの余裕の微笑みが無性に俺を苛々させた。
それは自分にも決まった相手がいるからなのか……
ただの遊び相手なんかじゃない…一生を共にすると誓った野々村さんがいるからなのか?
「そうですね…
そう言っても良いかもしれません。」
そう言いながら、俺はアンリの肩を抱き寄せた。
「カズ…!」
頬を染め、嬉しそうな笑みを浮かべるアンリから俺は視線を逸らした。
頭に血が上り、俺は心にもないことを口走ってしまった。
今の俺なら、大河内さんと野々村さんの結婚が決まったら、すぐにでもアンリと結婚してしまうかもしれない。
ただ、大河内さんに負けたくないがためだけに。
……俺は異常だ。
なぜ、こんなにも俺は大河内さんに負けたくないんだ!?
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
魔族の住むゲヘナ国の幼女エウリュアレは、魔力もほぼゼロの無能な皇帝だった。だが彼女が持つ価値は、唯一無二のもの。故に強者が集まり、彼女を守り支える。揺らぐことのない玉座の上で、幼女は最弱でありながら一番愛される存在だった。
「私ね、皆を守りたいの」
幼い彼女の望みは優しく柔らかく、他国を含む世界を包んでいく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/20……完結
2022/02/14……小説家になろう ハイファンタジー日間 81位
2022/02/14……アルファポリスHOT 62位
2022/02/14……連載開始
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌
紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。
それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。
今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。
コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。
日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……?
◆◆◆
「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」
「紙でしょ? ペーパーって言うし」
「そうだね。正解!」
◆◆◆
神としての力は健在。
ちょっと天然でお人好し。
自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中!
◆気まぐれ投稿になります。
お暇潰しにどうぞ♪
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる