赤い流れ星3

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
113 / 761
side 和彦

しおりを挟む
「カズ…昨夜、アンリと喧嘩でもした?」

 「え…そんなことは別に…」

 「アンリって……前からカズに会いたいって言ってたモデルのあの子?」

 「そうだよ。
 昨夜、カズはアンリをお持ち帰りして…」

 「アッシュ!」



 美幸の前でそういう話はやめてほしいもんだ。
ふと見ると、美幸はテレビに顔を向け、素知らぬ顔をしていたが、きっとわざと聞いていないふりをしたんだと思う。



 本当は合コンに行くのも乗り気じゃなかった。
ただ、勢いで言ったことをアッシュが真に受けてセッティングしてくれたから行かないわけにもいかず…
なんとなく心の中のもやもやを晴らしたいという気持ちもあるにはあった。
 自分を鼓舞するようにわざと大袈裟にはしゃいで出掛けたは良いが…
メンバーは、アッシュと同年代の若い男女ばかりで、飛び抜けて年上の俺はなんとなく肩身の狭い思いをして、来た事を少し後悔もし始めていた。
ところが、その中の一人が、以前から俺に憧れていたとかなんとか言って近付いてきた。
まさかとは思ったが、その子はずっと俺の傍にいて、他の男が話しかけても素っ気無い態度を返していた。
お開きになっても、彼女は俺から離れようとはせず……
俺は彼女に誘われるまま、彼女の部屋に着いて行った。



それが、アンリだ。
 駆け出しのモデルらしく、まだ大きな仕事はしていないようだったが、エキゾチックな整った顔立ちをしていて、モデルにしては肉感的なスタイルをしている。
センスも良く、話していて頭の良さも感じられる。
 確か、24と言っていたから美幸と同じくらいか…
だが、美幸よりはずっと大人に思えた。
そんな素晴らしい女性と一夜を共にしたというのに、俺の心は少しも弾むことはなかった。




 (最近の俺はどうもおかしい…
今の仕事が一段落したら、数日休みを取って旅行でもするか…)



ふと浮かんだその考えに、俺はあらためて得心した。
そうだ…最近は全く旅行をしていない。
 以前は、しょっちゅうどこかに行ってたのに…
仕事にかまけているうちに、きっと疲れが溜まってたんだ。



 「美幸、テレビばかり見てないで早く食べろよ。
 時間がないぞ。」

 「はい。」

 美幸は不機嫌な声で返事をして、食べかけの朝食に再び手を着けた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人
ファンタジー
第三王子が趣味で行っている冒険のパーティに所属するマッパー兼食事係の私、アニエスは突然パーティを追放されてしまった。 というのも、新しい食事係の少女をスカウトしたそうで、水魔法しか使えない私とは違い、複数の魔法が使えるのだとか。 私も、好きでもない王子から勝手に婚約者呼ばわりされていたし、追放されたのはありがたいかも。 だけど私が唯一使える水魔法が、実は「飲むと数時間の間、能力を倍増する」効果が得られる神水だったらしく、その効果を失った王子のパーティは、一気に転落していく。 戻ってきて欲しいって言われても、既にモフモフ妖狐や、新しい仲間たちと幸せな日々を過ごしてますから。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】とあるリュート弾きの少年の物語

衿乃 光希
ファンタジー
生まれながら奴隷であり未来を諦めていた少年が、両親を亡くして奴隷となった少女イレーネと出会い、自らの運命を切り開こうとする物語。二人が未来に手にするものとは――。 第一部 脱走して森を彷徨っていた二人を助けたのは、楽器製作家の集落に住む夫婦だった。密告を畏れて警戒しつつ、集落の人たちはいい人たちで、二人は次第に心を開く。三年後、リュート奏者と出会い、彼の弟子になりたいと少年は集落から旅立つ。 第二部 演奏旅行のため国内外を回る暮らしになって、二年。演奏家デビューを果たしたディーノに、かつての主の魔手が伸び……。集落で変わらない暮らしをするイレーネにも決断のときが迫っていた。 第三部 二年後。ロドヴィーゴ一行は隣国オーストンを訪れていた。ディーノはそこで懐かしい人と再会する。集落を出たイレーネは、男所帯の仕立て屋で働き忙しくも充実した毎日を送る中、ある人物から求婚されて――。第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました。

【未完】ファミレス転生 〜デザートはケモノ成分大盛りで〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)
ファンタジー
 強力なスキルを貰って、異世界に召喚されたクロウの第二の人生がここに始まる。 「んっ……また抱きついて……ったく」  小さな小動物みたいな獣人エゾリス族のヤエは、まだ子供である少年の眠る布団に潜り込んでいた。  先日はハーフビーストのサクアが下着姿で寝ていたし、一体何が目的だよ……  長いエゾリス族の耳がピコピコ動いている。  すでに起きているのに、まだ寝たフリか…… 「いい加減にしろよ、ヤエっ!」 「ピエッ⁈」  全くもう……大人しくしていれば可愛らしいのに……  まぁ……それでも可愛いけどさ…… 〜獣人たちに出会う15年前〜  就活生『三波 烏(クロウ)』は25歳であった。  名前のせいか、面接官の印象もあまり良くないようだ。  今日も就活後には近所のファミレスで、何か資格を取ろうかとパンフレットを読んでいた。  これまでも何かの役に立つかと思って、勉強はしてきた。  実際には働いてからでないと取得できないものもあって、時間を無駄にしてきたかもしれない。  だが、そんな無駄よりも、もっともっと俺の人生が無駄になる事件が起きてしまったのだ。  転生先は剣と魔法の世界だった。  しかし、三波クロウのもらったスキルは『ドリンクバー(スープ・サラダ付き)』だった。  これは……さすがに。  異世界から来たものだから、クロウには魔法は使えなかったのだ。  このスキルだけで、魔物の蔓延る異世界を生き抜くことができるのか???

わたしの婚約者は学園の王子さま!

久里
児童書・童話
平凡な女子中学生、野崎莉子にはみんなに隠している秘密がある。実は、学園中の女子が憧れる王子、漣奏多の婚約者なのだ!こんなことを奏多の親衛隊に知られたら、平和な学校生活は望めない!周りを気にしてこの関係をひた隠しにする莉子VSそんな彼女の態度に不満そうな奏多によるドキドキ学園ラブコメ。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

処理中です...