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side 野々村美咲
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(何やってるんだろう、私……)
馬鹿みたい…
家に戻って来てから、私は青木さんの下さったネックレスをつけては、またはずし…
そして、また思い直してつけては、またはずすという行動を何度も繰り返していた。
ムーンストーンが好きだなんて私は一言も言ったことがないのに、青木さんがそのムーンストーンを下さった…
大袈裟に言えば、奇跡にも思えるような幸せで……見ているだけで胸が熱くなる。
だけど、それは私の恋愛運が良くなるようにって願いからで……つまり、私の青木さんへの想いを諦めさせるためなのかもしれない。
私に好きな人が出来たら、青木さんへの想いが断ち切れると思われたんじゃないかって思うと、それはとても辛い…
私は青木さんに何も期待していないのに…
そのことは、青木さんもわかって下さってると思うけど、もしかしたら、それでもいやだってこと?
私が想いを寄せていると考えるだけでも、いやな気分がするのかしら?
……でも、そこまでいやだったら、きっとこんなものも買っては下さらない筈。
いや……そうじゃなくて、そこまでいやだからこそ神頼みのようなものに走ったとか…?
さっきから私はこんなことばかり考えては、馬鹿みたいにネックレスを付けたりはずしたりしてる。
大好きな青木さんが下さった、大好きなムーンストーン…そう思うと、思わず顔がほころぶのだけど、そこに込められた意味を考えると辛くて泣けて来る。
だから、何度も何度もつけてははずし、つけてははずし…
(あぁ…どうすれば良いのかしら…)
まとまらない。
どうすれば良いのか、完全に混乱してわからなくなってる。
私はゆっくりと時間をかけて熱くて濃いお茶を飲んだ。
落ちつきたい時にはお茶…私の昔からの癖だ。
(そうだわ。こんなことよりも、早く青木さんにお礼のメールを送らなきゃ…)
お茶のおかげで少し落ちついたのか、今、何をすべきかということに私は気付いた。
とりあえず、ネックレスを箱に戻して、私は携帯の画面をみつめた。
『青木さん、先程、ムーンストーンのネックレスを受け取りました。
どうもありがとうございます。』
だけど、そこで私の指がぴたりと停まった。
これだけじゃ、あまりにも素っ気無い。
私も実際ものすごく嬉しい気持ちがあるのだから、素直にその気持ちを打てば良い。
そう考えて少し打っては、削除…
どうしても素直になれなくて、おかしなことを打ってしまったから。
そして、気を取り直してまた打ち直して……また削除する…
『青木さんのご迷惑にならないように、私もムーンストーンのパワーで早くいい人みつけないといけませんね』
恨みがましい、不快な文面だ。
こんなの送れない…
結局、長い時間悩んで、何度も打ち直した果てに私が送った内容は…
『素敵なネックレスをどうもありがとうございました。
大切にします。』
ただ、それだけの短い文章だった。
(何やってるんだろう、私……)
馬鹿みたい…
家に戻って来てから、私は青木さんの下さったネックレスをつけては、またはずし…
そして、また思い直してつけては、またはずすという行動を何度も繰り返していた。
ムーンストーンが好きだなんて私は一言も言ったことがないのに、青木さんがそのムーンストーンを下さった…
大袈裟に言えば、奇跡にも思えるような幸せで……見ているだけで胸が熱くなる。
だけど、それは私の恋愛運が良くなるようにって願いからで……つまり、私の青木さんへの想いを諦めさせるためなのかもしれない。
私に好きな人が出来たら、青木さんへの想いが断ち切れると思われたんじゃないかって思うと、それはとても辛い…
私は青木さんに何も期待していないのに…
そのことは、青木さんもわかって下さってると思うけど、もしかしたら、それでもいやだってこと?
私が想いを寄せていると考えるだけでも、いやな気分がするのかしら?
……でも、そこまでいやだったら、きっとこんなものも買っては下さらない筈。
いや……そうじゃなくて、そこまでいやだからこそ神頼みのようなものに走ったとか…?
さっきから私はこんなことばかり考えては、馬鹿みたいにネックレスを付けたりはずしたりしてる。
大好きな青木さんが下さった、大好きなムーンストーン…そう思うと、思わず顔がほころぶのだけど、そこに込められた意味を考えると辛くて泣けて来る。
だから、何度も何度もつけてははずし、つけてははずし…
(あぁ…どうすれば良いのかしら…)
まとまらない。
どうすれば良いのか、完全に混乱してわからなくなってる。
私はゆっくりと時間をかけて熱くて濃いお茶を飲んだ。
落ちつきたい時にはお茶…私の昔からの癖だ。
(そうだわ。こんなことよりも、早く青木さんにお礼のメールを送らなきゃ…)
お茶のおかげで少し落ちついたのか、今、何をすべきかということに私は気付いた。
とりあえず、ネックレスを箱に戻して、私は携帯の画面をみつめた。
『青木さん、先程、ムーンストーンのネックレスを受け取りました。
どうもありがとうございます。』
だけど、そこで私の指がぴたりと停まった。
これだけじゃ、あまりにも素っ気無い。
私も実際ものすごく嬉しい気持ちがあるのだから、素直にその気持ちを打てば良い。
そう考えて少し打っては、削除…
どうしても素直になれなくて、おかしなことを打ってしまったから。
そして、気を取り直してまた打ち直して……また削除する…
『青木さんのご迷惑にならないように、私もムーンストーンのパワーで早くいい人みつけないといけませんね』
恨みがましい、不快な文面だ。
こんなの送れない…
結局、長い時間悩んで、何度も打ち直した果てに私が送った内容は…
『素敵なネックレスをどうもありがとうございました。
大切にします。』
ただ、それだけの短い文章だった。
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