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夢の実現
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「ほんまにこの店は最高やなぁ。」
「お好みはうまいし、なんとゆーても、焼いてくれるのが、べっぴんさんやもんなぁ。」
「そうそう。こんな美人の三姉妹、滅多におらんで。
三人でミス・ユニバースに出てみたらええのに。」
お好み焼き『あゆみ』は、この界隈でも人気のお好み焼き屋だ。
長女明日香、次女由香里、三女美知留の一文字ずつを取って付けた店名だ。
三人の両親は、三年前に交通事故で呆気なく亡くなってしまった。
姉妹の父親は、会社を早期退職し、妻と一緒にお好み焼き屋を開業することになっており、三日前には、すでに居抜き物件を購入していた。
三人は各々、仕事に就き、それなりにやりがいを感じながら働いていた。
だから、最初は店は売却するつもりだった。
「お父ちゃん、残念やったやろな。
もう店まで買うとったのに。」
すぐにでも開店出来そうなくらいに揃えられた備品を見ながら、明日香が呟いた。
「お母ちゃんもやる気満々やったのになぁ。」
由香里が、さらに呟く。
「あ…!」
不意に美知留が声を上げた。
「どないしたん?」
「レシピがあった!」
美知留の手には、使い込まれたノートがあった。
ページをめくりながら、三人で覗き込む。
「お父ちゃんらしいなぁ。
細かい所まで、びっしり書いてある。
あ、仕入れ先のことも書いてあるで。」
「もしかして……」
「何なん?」
「もしかして、この通り作ったら、うちらでも美味しいお好み焼きが作れるんとちゃう?」
「それって、まさか…」
それからは早かった。
三人は仕事をやめた。
ズブの素人が本当に店をやっていけるのかわからないまま、三人はがむしゃらに動き回った。
そして『あゆみ』は、開店した。
父親の遺したレシピのおかげで、お好み焼きの味は抜群だった。
さらに、三姉妹は皆、飛び抜けた美人だったから、店の噂は瞬く間に街に広まり、繁盛した。
「あ、お姉ちゃん、紅しょうがが少ななってんで!」
「よっしゃ、今から買いに行って来るわ!」
明日香は、電動自転車に跨り、風のように走り去った。
姉妹がお好み焼き屋を開業してくれたことを両親もさぞかし喜んでいることだろう。
小さな写真立ての中で、両親が微笑んでいた。
「お好みはうまいし、なんとゆーても、焼いてくれるのが、べっぴんさんやもんなぁ。」
「そうそう。こんな美人の三姉妹、滅多におらんで。
三人でミス・ユニバースに出てみたらええのに。」
お好み焼き『あゆみ』は、この界隈でも人気のお好み焼き屋だ。
長女明日香、次女由香里、三女美知留の一文字ずつを取って付けた店名だ。
三人の両親は、三年前に交通事故で呆気なく亡くなってしまった。
姉妹の父親は、会社を早期退職し、妻と一緒にお好み焼き屋を開業することになっており、三日前には、すでに居抜き物件を購入していた。
三人は各々、仕事に就き、それなりにやりがいを感じながら働いていた。
だから、最初は店は売却するつもりだった。
「お父ちゃん、残念やったやろな。
もう店まで買うとったのに。」
すぐにでも開店出来そうなくらいに揃えられた備品を見ながら、明日香が呟いた。
「お母ちゃんもやる気満々やったのになぁ。」
由香里が、さらに呟く。
「あ…!」
不意に美知留が声を上げた。
「どないしたん?」
「レシピがあった!」
美知留の手には、使い込まれたノートがあった。
ページをめくりながら、三人で覗き込む。
「お父ちゃんらしいなぁ。
細かい所まで、びっしり書いてある。
あ、仕入れ先のことも書いてあるで。」
「もしかして……」
「何なん?」
「もしかして、この通り作ったら、うちらでも美味しいお好み焼きが作れるんとちゃう?」
「それって、まさか…」
それからは早かった。
三人は仕事をやめた。
ズブの素人が本当に店をやっていけるのかわからないまま、三人はがむしゃらに動き回った。
そして『あゆみ』は、開店した。
父親の遺したレシピのおかげで、お好み焼きの味は抜群だった。
さらに、三姉妹は皆、飛び抜けた美人だったから、店の噂は瞬く間に街に広まり、繁盛した。
「あ、お姉ちゃん、紅しょうがが少ななってんで!」
「よっしゃ、今から買いに行って来るわ!」
明日香は、電動自転車に跨り、風のように走り去った。
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