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聖夜に…

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部屋の中の様子は、屋敷の外観と良く似合っていた。
高いものではあったのだろうが、家具はすべて相当に年季が入っている。
玄関ホールには、ぽつねんと小さな電話台があり、その上には今では滅多に見ることの無い黒電話が置かれている。



ここの主、福山幸次郎が亡くなったのは一週間程前のことだった。
血の繋がった者は、僕しかいないそうだ。
母からは何も聞かされてはいなかったが、母方の祖父にあたる人らしい。
僕がまだ物心もつかないような小さい頃に父とは別れたらしく、その後は母と二人きりの生活だった。
幸次郎は大変な倹約家で、歯ブラシ一本ですら粗末にすることはなく、毛先が開いてきたら、それを切って使うような人だったらしい。
その話を聞いた時、母が同じことをしていたのを思い出した。



その幸次郎が遺した財産は途方もないものだった。
今まで、贅沢とはかけ離れた生活をしてきた僕が、突然、億万長者になったんだ。
そればかりか、幸次郎が経営していた貿易会社の社長の座も引き継がないといけないそうだ。



「僕なんかに、会社経営が出来るでしょうか。」

「既に貴方様の身体検査は終わっております。
貴方様が清廉潔白な方だと言うことも、知能指数もすべて調査済みです。
会長は、その結果に大変満足され、貴方様に連絡を取ろうとされていた矢先のことでした。
経営については、周りの者達がサポートしますから、ご心配はいりません。
きっとうまくいきます。」



自信なんてまるでなかった。
だけど、なぜだかやらなくてはならないような妙な使命感が体から漲った。



どれだけやれるかはわからない。
だけど、僕はやれるだけのことをしよう。
そう決意したのは、小雪の舞うクリスマスのことだった。
その日から、僕の人生はガラリと変わった。

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