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山の中の楽園

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(うぉ~!うめぇ!)



俺は、うな丼をかき込んだ。



「良い食べっぷりだな。
やっぱり、若い奴はこうでないとな。」

「まっつぁん、これ美味すぎるよ!
本当に、まっつぁんが作ったのか?」

「あたぼーよ。
間違いなくわしが川に行ってうなぎを捕まえて、捌いて焼いた。
うな丼はわしの得意料理のひとつだが、みんな、なかなか食べてくれなくてな。」



まっつぁんは寂しそうに俯いた。
でも、ある意味仕方がない。
この村に住んでいるのはほとんどが高齢者だ。
脂の乗ったうなぎは、高齢者の胃には重すぎるのかもしれない。



亡くなった婆ちゃんの家を片付けるため、ここに来て、約半年が過ぎた。
本当はこんなにいるつもりはなかったのだけど、居心地が良いんだよなぁ。
ここに来て初めて、自然の持つ癒し効果みたいなものに気がついた。



別に悩みがあったわけではないけれど、心も体もどんどん元気になっていくのを感じた。
冷たい井戸水で洗濯をすると、日差しと風があっという間に乾かしてくれる。
外で乾かした衣類は、お日様のにおいがして気持ちが良い。



夜は網戸にして寝る。
この町には、泥棒なんていないから、全然平気だ。
涼やかな夜風が通り抜けるから、エアコンなんていらない。
そもそもここには、エアコンもない。
テレビはブラウン管テレビだから映らない。
パソコンは一応持って来たけど、仕事以外では使いたくない。
退屈な時は、ばあちゃんのウォークマンで演歌を聴く。
演歌なんてほとんど聴いたことはなかったけれど、いざ聴いてみると悪くない。
なかなか染みる。



近所の人も良い人ばかりで、毎日、採れたての野菜や果物、魚などを持ってきてくれる。
しかも、今日は土用の丑の日だから、絶品のうな丼だ。



婆ちゃんは不便な田舎に住んでて可哀想だと思ってたけど、それは違った。
ここは楽園だ。
ただ、若い者がいないことだけが難点


(あ、そうだ!)



俺は町のPRをSNSで流した。
すると、興味を持つ人がちらほらとDMをくれるようになり……



約一年後、俺は町に来た女性と電撃結婚した。
俺はこれからも、この楽園で暮らしていく。
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