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ふたりはたんぽぽ
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(あぁ、風が気持ち良い…)
衝動的に、緑色の自転車を買った。
スーパーの帰りにパンクして、パンクを直しに行ったら、タイヤの溝がなくなってるから、タイヤも変えた方が良いと言われ、その時、店頭にあった緑色の自転車に一目惚れしていきなり購入。
確かに衝動的だけど、前のはもう10年くらい乗ってたから、寿命だったのかもしれない。
新しい自転車はとても乗りやすく、走るとすごく爽快で…
まっすぐ家になんて帰りたくなくなった。
ちょっと遠いけど、河原の方に寄り道をする。
あぁ、専業主婦で良かった…なんて思いながら、風を切る。
最近は、そう暑くもなく寒くもなく、サイクリングにはもってこいの季節だ。
「わぁ!」
私の目に飛び込んで来たのは、黄色と緑。
たんぽぽがたくさん咲いている。
街中でもたまには見るけれど、こんなに群生してるのを見るのは初めてだ。
スマホを取り出し、たんぽぽを撮影する。
SNSはやってないから、投稿は出来ないけど、撮らずにはいられなかった。
あの人に見せてあげよう。
何枚か写したら、河原に座った。
なんか良いなぁ…
きらきらしてる水面や、流れる雲を見ていたら、気分がだいぶリラックスしていく。
街中から30分弱自転車で走れば、こんなに素敵な場所があるのに、普段は家とスーパーの往復しかしない。
なんとももったいないことだ。
こんなことなら、もっと早くに自転車を買えば良かった。
近くに咲いていたたんぽぽを見ているうちに、私はあることを思いついた。
そして、あたりに咲いているたんぽぽを摘んだ。
何本も何本も。
(このくらいで良いか。)
私は満足して、家に向かって自転車を走らせた。
*
「良いね。今日は天ぷらか。」
「あなた、これ、食べてみて。」
夫は素直にそれを食べた。
「美味しいね、なに?これ。菊菜?」
「これを食べたらわかるわよ。」
「あれ?これって花?…うん、いけるね。」
「たんぽぽよ、たんぽぽの葉と花。」
「へぇ、そうなんだ。」
たんぽぽは食べられるって聞いたことがあったから、食べてみたんだ。
春を感じる味だった。
「ちょっと待っててね。」
私は彼と私の前にカップを置いた。
「コーヒー?」
「たんぽぽの茎で作ったたんぽぽ茶よ。
体に良いんだって。」
「へぇ、そうなんだ。
ところで、たんぽぽのデザートはないの?」
「ただのクッキーならあるけど。
あ、今日ね、自転車を買ったの。」
「あ、それで河原まで行ったんだ?」
「よくわかるわね。」
「君とは長い付き合いだからね。」
刺激はないけど、穏やかな日々…
たんぽぽの花言葉は幸せ。
「あなたって、たんぽぽみたいな人ね。」
「君の方がたんぽぽだよ。」
(綿毛になっても、同じ所に飛んで行こうね。)
ふと、そんなことを思った。
衝動的に、緑色の自転車を買った。
スーパーの帰りにパンクして、パンクを直しに行ったら、タイヤの溝がなくなってるから、タイヤも変えた方が良いと言われ、その時、店頭にあった緑色の自転車に一目惚れしていきなり購入。
確かに衝動的だけど、前のはもう10年くらい乗ってたから、寿命だったのかもしれない。
新しい自転車はとても乗りやすく、走るとすごく爽快で…
まっすぐ家になんて帰りたくなくなった。
ちょっと遠いけど、河原の方に寄り道をする。
あぁ、専業主婦で良かった…なんて思いながら、風を切る。
最近は、そう暑くもなく寒くもなく、サイクリングにはもってこいの季節だ。
「わぁ!」
私の目に飛び込んで来たのは、黄色と緑。
たんぽぽがたくさん咲いている。
街中でもたまには見るけれど、こんなに群生してるのを見るのは初めてだ。
スマホを取り出し、たんぽぽを撮影する。
SNSはやってないから、投稿は出来ないけど、撮らずにはいられなかった。
あの人に見せてあげよう。
何枚か写したら、河原に座った。
なんか良いなぁ…
きらきらしてる水面や、流れる雲を見ていたら、気分がだいぶリラックスしていく。
街中から30分弱自転車で走れば、こんなに素敵な場所があるのに、普段は家とスーパーの往復しかしない。
なんとももったいないことだ。
こんなことなら、もっと早くに自転車を買えば良かった。
近くに咲いていたたんぽぽを見ているうちに、私はあることを思いついた。
そして、あたりに咲いているたんぽぽを摘んだ。
何本も何本も。
(このくらいで良いか。)
私は満足して、家に向かって自転車を走らせた。
*
「良いね。今日は天ぷらか。」
「あなた、これ、食べてみて。」
夫は素直にそれを食べた。
「美味しいね、なに?これ。菊菜?」
「これを食べたらわかるわよ。」
「あれ?これって花?…うん、いけるね。」
「たんぽぽよ、たんぽぽの葉と花。」
「へぇ、そうなんだ。」
たんぽぽは食べられるって聞いたことがあったから、食べてみたんだ。
春を感じる味だった。
「ちょっと待っててね。」
私は彼と私の前にカップを置いた。
「コーヒー?」
「たんぽぽの茎で作ったたんぽぽ茶よ。
体に良いんだって。」
「へぇ、そうなんだ。
ところで、たんぽぽのデザートはないの?」
「ただのクッキーならあるけど。
あ、今日ね、自転車を買ったの。」
「あ、それで河原まで行ったんだ?」
「よくわかるわね。」
「君とは長い付き合いだからね。」
刺激はないけど、穏やかな日々…
たんぽぽの花言葉は幸せ。
「あなたって、たんぽぽみたいな人ね。」
「君の方がたんぽぽだよ。」
(綿毛になっても、同じ所に飛んで行こうね。)
ふと、そんなことを思った。
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