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過去

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「う、ううん…」

俺は物音に目を覚ました。



「わ…か、金を出せ!」

「え、えぇっ!?」

一瞬で眠気が吹き飛んだ。
今、知らない男の声が「金を出せ!」と言った。
つまり、俺は今、強盗に遭っている。
心臓は早鐘を打ち出してはいるけれど、不思議と気分は冷静だ。



「あっ!」

リモコンのスイッチを入れ、部屋の中が明るく照らし出された。
目出し帽の男は反射的に目を覆った。
その隙をついて、俺は、奴の手から拳銃を叩き落とした。
ついでに、鳩尾に拳を入れた。



「う…!」

男はその場にうずくまる。



「き、気分が悪い…」

なんて弱い強盗だ。



「強盗なんてやるわりには、えらくヤワなんだな。えっ!?」

拾った拳銃は、呆れたことに銀玉鉄砲だった。
男はまだうずくまっている。
えらく華奢な体つきをしていた。



「おまえ、まだ子供なのか?」

男は小さく首を振る。



「こ、高1。」

「高1ならまだ子供だ。」

「ぼ、僕は子供じゃない!」

男は体を起こし、俺を睨んだ。



「そうか。そりゃあ悪かったな。
でも、なんでこんなことをした?
こんなことをしてただですまないことは、子供じゃないならわかるよな?」

少年は項垂れた。



「もちろん、わかってる。
でも……」

「理由を話してみろよ。」

少年はゆっくりと話し始めた。
要するにいじめだった。
今までも言われるままに家から金を持ち出したりしていたが、今回は泥棒に入ることを強要されたようだ。



「仲間はどこにいる?」

「こ、公園…」

俺は少年を連れ、公園に向かった。
公園には酒を飲み、たばこを蒸す少年達がいた。



「失敗したのかよ。」

「ご、ごめん。」

「はぁ?なんだ、てめぇは。」

俺に近付いてきた少年の顔面に、俺は強烈なパンチを見舞った。



「な、なにしやがる、この野郎!」

向かってくる少年達を俺は、殴り、蹴り、ぶん投げてやった。



「くそっ!調子に乗りやがって!」

少年のひとりがナイフを持ち出した。



「やめとけ、俺を本気にさせるな。」

「なんだとぉ!」

「……半眼のリュウって、聞いたことないか?」

「え?」

少年達の動きが止まった。
奴らは顔を見合わせていた。



「ま、まさか…あ、あなた様がその…」

「そういうことだ。」

「す、すみません!リュウさんだとは知らずに。」

少年たちは青い顔をして、固まった。



「俺もお前たちに説教出来るような人間じゃないが、いじめなんてくだらないことはやめとけ。」

「は、はい。」

「こいつには二度とちょっかい出すなよ!」

「は、はいっ!誓います。」

少年たちは頭を下げ、その場から立ち去ろうとした。



「待てよ。」

「え?な、何か?」

俺はポケットの中のチョコを投げた。
少年のひとりがそれを受け取った。



「酒やたばこは体に悪いぞ。
甘いもんにしとけ。」

「は、はいっ!ありがとうございます!」

少年達は走り去った。



「おまえにも。」

俺は目出し帽の少年にもチョコを渡した。



「あ、ありがとうございました!助かりました!」

「強くなれよ。じゃあな。」

昔の恥ずかしい通り名がまだ力を持ってることに、俺は思わず苦笑した。
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