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お母さんお父さん
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「本当に佐和子は料理がうまいわね。」
そう言って、母は私の作ったオムレツを頬張った。
「そりゃそうよ。お母さんに教わったんだもの。
うまくなるのも当たり前でしょ。」
「お姉ちゃんのオムレツは、お母さんを越えたかもしれないね。」
「そんなわけないでしょ。」
「いや、あるある。」
母が気分を害さないかと心配したけど、十和子の言葉に、母はなんとなく嬉しそうな顔をしてる。
どうやら杞憂だったみたいだ。
「それから、これ、私達からのプレゼント。」
「えっ!?」
「まぁ、私はちょっとしか出てないんだけどね。
大半はお姉ちゃんがもってくれたよ。」
「わぁ、なんだろね。」
母は、プレゼントの包みを開いた。
今回は張り込んだけど、気に入ってくれるかどうか、ドキドキする。
「まぁ!これ、まさか本物なの?」
「まぁね。」
「こんな高いもの…」
母は、私達が贈った真珠のブレスレットを手に押し黙った。
そのうちにポロポロと涙をこぼし始めた。
「もう、お母さんったら、本当に涙もろいんだから。」
十和子はティッシュを差し出した。
「だって、あんた達が…
嬉しくて…」
「はいはい、わかったわかった。
でも、今日は父の日なんだから。
これからも、お父さん役、お願いしますよ。」
十和子の言葉に、母は小さくはにかんだ。
私が5才、十和子が2才の時に、父が事故で呆気なく旅立った。
それからは、母が、母親だけじゃなく、父親の役目もすることになった。
十和子が小学生高学年の頃だったか、父の日をやろうと言い出した。
うちのお母さんは、お父さんでもあるんだから、と。
それから、我が家では父の日を祝うようになった。
十和子がメニューを決め、私が料理を作る。
母は、約20年間、再婚することはなかった。
私の旦那様は亡くなったお父さんだけだと言って、母は笑う。
この調子では、この先も再婚する兆しはない。
お母さんには幸せになって欲しいけど、本人にその気がないのではどうにもならない。
(来年も、父の日やるんだろうなぁ。)
なんだか嬉しいような困るような…複雑な想いを胸に、今日も賑やかな父の日を過ごせた。
そう言って、母は私の作ったオムレツを頬張った。
「そりゃそうよ。お母さんに教わったんだもの。
うまくなるのも当たり前でしょ。」
「お姉ちゃんのオムレツは、お母さんを越えたかもしれないね。」
「そんなわけないでしょ。」
「いや、あるある。」
母が気分を害さないかと心配したけど、十和子の言葉に、母はなんとなく嬉しそうな顔をしてる。
どうやら杞憂だったみたいだ。
「それから、これ、私達からのプレゼント。」
「えっ!?」
「まぁ、私はちょっとしか出てないんだけどね。
大半はお姉ちゃんがもってくれたよ。」
「わぁ、なんだろね。」
母は、プレゼントの包みを開いた。
今回は張り込んだけど、気に入ってくれるかどうか、ドキドキする。
「まぁ!これ、まさか本物なの?」
「まぁね。」
「こんな高いもの…」
母は、私達が贈った真珠のブレスレットを手に押し黙った。
そのうちにポロポロと涙をこぼし始めた。
「もう、お母さんったら、本当に涙もろいんだから。」
十和子はティッシュを差し出した。
「だって、あんた達が…
嬉しくて…」
「はいはい、わかったわかった。
でも、今日は父の日なんだから。
これからも、お父さん役、お願いしますよ。」
十和子の言葉に、母は小さくはにかんだ。
私が5才、十和子が2才の時に、父が事故で呆気なく旅立った。
それからは、母が、母親だけじゃなく、父親の役目もすることになった。
十和子が小学生高学年の頃だったか、父の日をやろうと言い出した。
うちのお母さんは、お父さんでもあるんだから、と。
それから、我が家では父の日を祝うようになった。
十和子がメニューを決め、私が料理を作る。
母は、約20年間、再婚することはなかった。
私の旦那様は亡くなったお父さんだけだと言って、母は笑う。
この調子では、この先も再婚する兆しはない。
お母さんには幸せになって欲しいけど、本人にその気がないのではどうにもならない。
(来年も、父の日やるんだろうなぁ。)
なんだか嬉しいような困るような…複雑な想いを胸に、今日も賑やかな父の日を過ごせた。
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