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診察室
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(チョロい、チョロい。)
病院だから、もっと複雑な鍵かと思ってたのに、鍵は簡単に開けられた。
病院のくせに、なんと、警備会社も入れてない。
(今日は、大成功だな。)
ゴールデンウィーク中、ここの先生が家族で海外旅行に行くことを偶然知ったのは、俺が風邪で受診した時だ。
具合が悪かったから少し早めに来たんだが、その時に、先生と看護師が話してたんだ。
これは、空き巣に入るには好都合だと、ゴールデンウィークの仕事はここに決めた。
病院に入るのは初めてだけど、医者は金持ちだから、金目のものがあるに違いない。
「お邪魔しますよ~」
俺は、病院に足を踏み入れた。
とりあえず、診察室や待合室には何も無いだろう。
俺はそこを通り抜けて、奥の部屋を目指した。
「だあれ?」
「ひっ!」
診察室で不意に声をかけられ、俺はおかしな声を上げてしまった。
留守だと思ったら、誰かいた。
しかも、こんな真っ暗な部屋の中に。
恐る恐る振り返ると、そこには、女がいた。
はっきりとは見えないが、ミニのワンピースを着て、髪が長いから、きっとまだ若い子だ。
「お、おめえこそ誰なんだ。
なんで、こんな所にいるんだよ。」
「先生を待ってるの。
診察室で待っててって言われたから。」
「そりゃおかしいな。
ここの先生は、家族で海外旅行に行くって話だったぞ。」
「嘘よ!先生が、ここで待ってろって言ったんだもん。」
女は気分を害したのか、目を釣り上げて怒った。
「先生の携帯番号とか知らないのか?」
「知らないわ。」
「本当に診察室で待ってろって言ったのか?」
「本当よ。だって、私達、恋人同士なんだもん。」
それを聞いて、俺は理解した。
そうか、この女はいささか頭がおかしいんだ、と。
「でもよ、先生は確か結婚してるぜ。」
「結婚してても、先生が愛してるのは私よ!」
女は激昂し、そして、突然消えた。
「えっ!?わ、わぁ~っ!」
俺は命からがら、病院から駆け出した。
信じたくはないけれど、まさか、今の女は…
俺は家に着いても、まだガタガタ震えてた。
もう病院に空き巣に行くのは、金輪際やめると誓った。
*
それから数年後、病院建て替えの際に、人骨が発見された。
しばらく経って、その骨は行方不明になっていた21歳の女性だと断定された。
病院だから、もっと複雑な鍵かと思ってたのに、鍵は簡単に開けられた。
病院のくせに、なんと、警備会社も入れてない。
(今日は、大成功だな。)
ゴールデンウィーク中、ここの先生が家族で海外旅行に行くことを偶然知ったのは、俺が風邪で受診した時だ。
具合が悪かったから少し早めに来たんだが、その時に、先生と看護師が話してたんだ。
これは、空き巣に入るには好都合だと、ゴールデンウィークの仕事はここに決めた。
病院に入るのは初めてだけど、医者は金持ちだから、金目のものがあるに違いない。
「お邪魔しますよ~」
俺は、病院に足を踏み入れた。
とりあえず、診察室や待合室には何も無いだろう。
俺はそこを通り抜けて、奥の部屋を目指した。
「だあれ?」
「ひっ!」
診察室で不意に声をかけられ、俺はおかしな声を上げてしまった。
留守だと思ったら、誰かいた。
しかも、こんな真っ暗な部屋の中に。
恐る恐る振り返ると、そこには、女がいた。
はっきりとは見えないが、ミニのワンピースを着て、髪が長いから、きっとまだ若い子だ。
「お、おめえこそ誰なんだ。
なんで、こんな所にいるんだよ。」
「先生を待ってるの。
診察室で待っててって言われたから。」
「そりゃおかしいな。
ここの先生は、家族で海外旅行に行くって話だったぞ。」
「嘘よ!先生が、ここで待ってろって言ったんだもん。」
女は気分を害したのか、目を釣り上げて怒った。
「先生の携帯番号とか知らないのか?」
「知らないわ。」
「本当に診察室で待ってろって言ったのか?」
「本当よ。だって、私達、恋人同士なんだもん。」
それを聞いて、俺は理解した。
そうか、この女はいささか頭がおかしいんだ、と。
「でもよ、先生は確か結婚してるぜ。」
「結婚してても、先生が愛してるのは私よ!」
女は激昂し、そして、突然消えた。
「えっ!?わ、わぁ~っ!」
俺は命からがら、病院から駆け出した。
信じたくはないけれど、まさか、今の女は…
俺は家に着いても、まだガタガタ震えてた。
もう病院に空き巣に行くのは、金輪際やめると誓った。
*
それから数年後、病院建て替えの際に、人骨が発見された。
しばらく経って、その骨は行方不明になっていた21歳の女性だと断定された。
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