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みんなで踊ろう
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「あ~あぁ、急いで食べるから。」
お茶漬けをかきこみ、むせて咳き込む主人をそっとみつめた。
『大丈夫?』
私は手話で訊ねた。
『大丈夫だよ。』
主人が手話で答える。
最初は全く分からなかった手話も、もう30年近く使ってるから、喋るのと大差ない。
彼が聴覚障害者だということで、最初は両親も結婚を心配したけれど、そんなことは何の障害でもなかった。
今では両親も、だいたいのことが手話で交流出来る。
主人のことも、信頼の出来る良い人だとわかってくれている。
「ただいま~」
「あら、おかえりなさい。
早かったのね。」
一人娘の涼子が帰ってきた。
もう30近いというのに、結婚する気配もなく、仕事帰りははいつも遊び歩いている。
『今日はどこに行ってたんだ?』
『今日はクラブで踊ってきたよ。』
『さすがはあなたの娘ね。』
私の手話に、主人は苦笑いだ。
彼は踊りが好きで、若い頃は良くふたりでディスコに行った。
彼の十八番はゴーゴーダンス。
耳は聴こえない筈なのに、音楽に合わせて、とても楽しそうに踊ってた。
「ねぇ、今でもゴーゴーを踊る人なんているの?」
「いるわよ。割と年配の人も来てるからね。」
娘には幸い障害はないから、口頭で喋れる。
『お父さんも一度行ってみる?』
『行かないよ。』
『行ってみたら良いじゃない。お母さんと三人で行こうよ。』
主人はしきりに首を振ってはいたけれど、その表情はなんだか嬉しそうだ。
三人で行こうなんて誘ってくれる娘は、なかなか良い子に育ってる、なんて、親馬鹿なことを思っては、笑みがこぼれた。
私も久しぶりにゴーゴーが踊りたくなって来た。
『ねぇ、行ってみようよ。
楽しそうじゃない。』
『君まで何言ってるんだ。』
『マジで行こうよ!』
部屋の中は静かだけれど、私達の心の中には笑い声が広がった。
お茶漬けをかきこみ、むせて咳き込む主人をそっとみつめた。
『大丈夫?』
私は手話で訊ねた。
『大丈夫だよ。』
主人が手話で答える。
最初は全く分からなかった手話も、もう30年近く使ってるから、喋るのと大差ない。
彼が聴覚障害者だということで、最初は両親も結婚を心配したけれど、そんなことは何の障害でもなかった。
今では両親も、だいたいのことが手話で交流出来る。
主人のことも、信頼の出来る良い人だとわかってくれている。
「ただいま~」
「あら、おかえりなさい。
早かったのね。」
一人娘の涼子が帰ってきた。
もう30近いというのに、結婚する気配もなく、仕事帰りははいつも遊び歩いている。
『今日はどこに行ってたんだ?』
『今日はクラブで踊ってきたよ。』
『さすがはあなたの娘ね。』
私の手話に、主人は苦笑いだ。
彼は踊りが好きで、若い頃は良くふたりでディスコに行った。
彼の十八番はゴーゴーダンス。
耳は聴こえない筈なのに、音楽に合わせて、とても楽しそうに踊ってた。
「ねぇ、今でもゴーゴーを踊る人なんているの?」
「いるわよ。割と年配の人も来てるからね。」
娘には幸い障害はないから、口頭で喋れる。
『お父さんも一度行ってみる?』
『行かないよ。』
『行ってみたら良いじゃない。お母さんと三人で行こうよ。』
主人はしきりに首を振ってはいたけれど、その表情はなんだか嬉しそうだ。
三人で行こうなんて誘ってくれる娘は、なかなか良い子に育ってる、なんて、親馬鹿なことを思っては、笑みがこぼれた。
私も久しぶりにゴーゴーが踊りたくなって来た。
『ねぇ、行ってみようよ。
楽しそうじゃない。』
『君まで何言ってるんだ。』
『マジで行こうよ!』
部屋の中は静かだけれど、私達の心の中には笑い声が広がった。
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