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「な、ないっ!」
私は、思わず大きな声を出してしまった。
それは、とある土曜日の昼下がりのこと。
朝はゆっくり起きて、時間をかけてブランチを食べ、私の癒しの部屋…大好きなバービー人形のいる部屋に入った時のこと。
飾られたバービーを見ながらまったりしてる時、私はふと気が付いた。
バービーが一体足りないことに。
それは、三段目の右端にいたバービーだ。
私の子供と言っても良いバービーだから、一体でもいなくなればすぐにわかる。
ジーパンにGジャンを羽織ったあの子だ。
棚を全部見たけど、どこにもいない。
「お母さん、大変よ~!」
私はバービーが盗まれたことを母に伝えた。
「ベランダに監視カメラを…いや、サッシを二重にした方が良いかな。鍵も付け替えて…」
「何言ってんのよ。このあたりは治安が良いから、そんなに防犯しなくても大丈夫よ。
そもそも、人形を持っていく泥棒なんているわけないじゃない。」
「いるわよ!現に一体いなくなってるんだから!」
「お姉ちゃんの勘違いじゃないの?」
「馬鹿なこと言わないで!私は全部のバービーを覚えてるんだから!」
結局、両親も妹も、私のバービーが盗まれたことを信じてくれない。
(犯人がまた来たらどうしよう!?)
そんなことを考えたら、とても寝てなんかいられない。
私は、バービー部屋の片隅に小さくなって、不寝番をした。
夜中にはお腹がすくから、コッペパンをかじり、濃いコーヒーを飲んで。
その甲斐あって、その晩は何事も無かった。
でも、たまたまその日は仕事が休みだったからよかったけれど、このままずっと不寝番を続けるのは無理だ。
「お母さん、私、やっぱり警察に被害届を出す!
このままにはしておけない!」
「そんな、人形ひとつで大袈裟な…」
「あのバービーは、とても古いもので、その割には状態が良い貴重なものなの。
3年前にボーナスはたいて、25万で買ったものなのよ。」
「えっ!そ、そんなに高いものだったの!?」
「値段だけで言ってるわけじゃないけど、あの子は私の持ってるバービーの中でも一番レアな子なのよ。」
話してるうちになんだか感情が込み上げて来て、私は涙を流していた。
「お姉ちゃん、ごめん!」
突然、妹が頭を下げた。
なんでも、小遣い稼ぎにと、フリマアプリに出したということだった。
たくさんあるから、一体くらいなくなっても分からないだろうと思ったらしい。
「えーーっ!」
しかも、出していたのは1000円という安値。
すぐに売れて、発送準備をしていたところだったらしい。
ギリギリのところでバービーは、助かった。
その日、私はバービー部屋に鍵を付けた。
妹はもう絶対やらないと謝ったけど、信用出来たもんじゃない。
「売られないで良かった~」
私はバービーの髪の毛をそっと撫でた。
私は、思わず大きな声を出してしまった。
それは、とある土曜日の昼下がりのこと。
朝はゆっくり起きて、時間をかけてブランチを食べ、私の癒しの部屋…大好きなバービー人形のいる部屋に入った時のこと。
飾られたバービーを見ながらまったりしてる時、私はふと気が付いた。
バービーが一体足りないことに。
それは、三段目の右端にいたバービーだ。
私の子供と言っても良いバービーだから、一体でもいなくなればすぐにわかる。
ジーパンにGジャンを羽織ったあの子だ。
棚を全部見たけど、どこにもいない。
「お母さん、大変よ~!」
私はバービーが盗まれたことを母に伝えた。
「ベランダに監視カメラを…いや、サッシを二重にした方が良いかな。鍵も付け替えて…」
「何言ってんのよ。このあたりは治安が良いから、そんなに防犯しなくても大丈夫よ。
そもそも、人形を持っていく泥棒なんているわけないじゃない。」
「いるわよ!現に一体いなくなってるんだから!」
「お姉ちゃんの勘違いじゃないの?」
「馬鹿なこと言わないで!私は全部のバービーを覚えてるんだから!」
結局、両親も妹も、私のバービーが盗まれたことを信じてくれない。
(犯人がまた来たらどうしよう!?)
そんなことを考えたら、とても寝てなんかいられない。
私は、バービー部屋の片隅に小さくなって、不寝番をした。
夜中にはお腹がすくから、コッペパンをかじり、濃いコーヒーを飲んで。
その甲斐あって、その晩は何事も無かった。
でも、たまたまその日は仕事が休みだったからよかったけれど、このままずっと不寝番を続けるのは無理だ。
「お母さん、私、やっぱり警察に被害届を出す!
このままにはしておけない!」
「そんな、人形ひとつで大袈裟な…」
「あのバービーは、とても古いもので、その割には状態が良い貴重なものなの。
3年前にボーナスはたいて、25万で買ったものなのよ。」
「えっ!そ、そんなに高いものだったの!?」
「値段だけで言ってるわけじゃないけど、あの子は私の持ってるバービーの中でも一番レアな子なのよ。」
話してるうちになんだか感情が込み上げて来て、私は涙を流していた。
「お姉ちゃん、ごめん!」
突然、妹が頭を下げた。
なんでも、小遣い稼ぎにと、フリマアプリに出したということだった。
たくさんあるから、一体くらいなくなっても分からないだろうと思ったらしい。
「えーーっ!」
しかも、出していたのは1000円という安値。
すぐに売れて、発送準備をしていたところだったらしい。
ギリギリのところでバービーは、助かった。
その日、私はバービー部屋に鍵を付けた。
妹はもう絶対やらないと謝ったけど、信用出来たもんじゃない。
「売られないで良かった~」
私はバービーの髪の毛をそっと撫でた。
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