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お年玉

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「う~、さむ…」

元旦はとても寒かった。
甲高い北風の音が鳴り、枯葉を舞い上がらせるのが窓から見えた。



僕は玄関の扉を開け、郵便ポストの中をのぞいた。
小さな落胆を感じながら、僕はたった一枚の年賀状を取り出した。



(やっぱりな…)



布団に逆戻りし、取ってきた年賀状を眺める。



『謹賀新年
今年も頑張ろう!』

下手ではないが、達筆という程ではない。
元々印刷されている寅のイラストがなければ、極めて殺風景な年賀状だ。



「あぁ~…馬鹿馬鹿しい。」

思わず、心の声が口をついて出た。
それも仕方のないことだ。
この年賀状は、僕が僕宛てに書いたものなのだから。



東京に出てきて三年。
知り合いは何人か出来たけど、それほど親しいというわけではない。
一人で過ごす正月は寂しい。
ふと、昔のことを思い出す。
まだ両親やばあちゃんもいて、正月には食べきれない程の料理が並べられ、親戚が遊びに来たりして賑やかだった。
中でも僕が楽しみにしていたのは、年賀状だ。
『お餅食べすぎないようにね』
『今年も仲良くしてね』
他愛ない内容だけど、自分宛に郵便物が届くのが珍しかったせいか、とても嬉しかったものだ。

今はもうばあちゃんも両親もいない。
料理もないし、家を訪ねて来る者もいない。
年賀状も一通も来ない。



とても寂しかった。
あまりに寂しくて、どうかしてしまったのか、僕は去年の暮れ、自分に年賀状を出すことを思い付いた。
だけど、失敗だった。
なお一層、寂しい気分になっただけだった。



(ま、こんなもんだよな…)

僕は、布団に潜り込み、二度寝を決め込んだ。







昼近くになり、再び目覚めた。
遊びに行く予定もないから、やることといったら、テレビを見るくらいだ。
だけど、正月の番組はどれもこれも似たようなものでちっとも面白くない。
スマホをいじりながら、ぼんやりとテレビを見ていると、クイズ番組が始まった。
スマホで視聴者も参加出来る。
一番に正解した者には一万円が当たるみたいだ。
なんの気なしに、参加してみたら、画面におめでとうございます!あなたが一番目の正解者です!と言う文字が現れた。
何かの詐欺かとも思ったが、テレビで僕の登録したハンネが読み上げられた。



(うわ~…本当に当たったんだ…)

たかが一万円、されど一万円。
年明け早々、こんなことがあるなんて…
単純だけど、良い年になりそうな予感に、僕の胸は弾んだ。
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