上 下
87 / 393
待つ人

しおりを挟む
(どうしよう……)



ついさっき、日付が変わり、24日になった。
クリスマスイブだ。
結局、雅紀からの連絡はなく、私から連絡することもなかった。
内心ではすごく焦っていたのだけど、行動を起こすことも出来ず、ただひたすらに、雅紀からの連絡を待っていた。
だけど、無駄だった。



やっぱり、雅紀は怒ってるんだ。



(もうおしまいだね…)



私は枕を濡らしながら、眠れない夜を過ごした。







(休めば良かった…)



仕事帰りの町には、クリスマスケーキらしき箱や、プレゼントが入ってるであろう紙袋を持った人たちが溢れていた。
みんな、今夜は楽しいクリスマスを過ごすんだ。
なのに、私はひとりぼっち。
こんなことなら、女子会に混ぜてもらった方が良かったかもしれない。
でも、私は信じてたから…
きっと、雅紀は連絡をくれるって。
だから、女子会の誘いは断った。
多少は見栄もあったのかもしれない。



私には彼氏がいるから、クリスマスは彼氏と過ごすの。
そんなつまらない見栄が…



私って、本当に馬鹿だな…
こんな辛い想いをするのなら、あの時、素直になれば良かった。
後悔してももう遅い。



重い足をひきずって、私は家路に着いた。
寂しさに押しつぶされそうな気分だった。



(……え?)



家の前に誰かいる。
赤い服を来て髭を生やして。
……サンタだ!



「メリークリスマス!」

私に気付いたサンタが声を上げる。
サンタなんて、本当にいるわけがない。
私は小3の時から、知っていた。
今、目の前にいるのは…



「雅紀…」

「違うよ、サンタだよ。」

「いいからとりあえず入ってよ。恥ずかしいじゃない。」

私は雅紀を家の中に引き入れた。



「……何も無いわよ。」

「大丈夫だよ。ケーキとチキンとシャンパン持って来たから。
あ、ピザもあるよ。」

そう言って、雅紀は袋から次々に食べ物を取り出した。
私は黙って、食器を並べた。



内心は嬉しくてたまらなかった。
けれど、私は何も言えず…



「メリークリスマス!」

私達はグラスを合わせた。
シャンパンの炭酸が喉を刺激する。



「私の帰りが遅かったら、どうするつもりだったの?」

「いつまでだって待つつもりだったから。」

「泊まりだったら、どうするのよ。」

「それでも待つよ。」

雅紀の瞳が細くなる。



「これ、プレゼントだよ。」

手渡されたのは小さな箱。
蓋を開けた私は、そこにあった指輪を見て、堪えきれずに涙を流した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

おしがま女子をつける話

りんな
大衆娯楽
透視ができるようになった空。 神からの司令を託され、使うことに......って、私的に利用しても一緒でしょ!

処理中です...