上 下
85 / 393
本音

しおりを挟む
(何やってるんだろう…)



あの日以来、雅紀から連絡はない。
そりゃ、そうだろう。
あんなことをしたんだから。
きっと、雅紀は怒ってるはず。



ふと見たカレンダーはペラペラで…
今年はもう何日もないし、もうじきクリスマスだ。



このままでは、きっとクリスマスはクリぼっちだ。
いや、クリスマスどころか、別れることにもなりかねない。



そう思ったら、なんとも心細くて寂しくて…
だって、私は雅紀のことが好きなんだもん。
別れたくなんかない。
なのに、素直になれなくて…



別れたくないのなら、なんとか修復するしかない。
でも、どうやって?
この前のことなんて忘れたふりをして雅紀に連絡する?



「ねぇ、クリスマスはどうする?」

なんて、そんなこと、私にはとても言えないよ。



どうにも気持ちがざわざわして、私は家を飛び出した。



寒いと思ったら、粉雪が舞っていた。
このところ、雪ばかりだ。
白い景色は、さらに気持ちをざわつかせた。



(あ、そうだ…)



不意に浮かんだアイディアに、私は突き動かされるように歩を進めた。



(誰もいない……)



私がたどり着いたのは、神社だった。
初詣くらいしか行かないくせに、頼るところはそこしかなかった。



100円玉を掴み、思い直して500円玉に持ち替えた。
鈴を鳴らし、賽銭箱に投げ入れる。



(神様、どうか雅紀とやり直せますように。)



お賽銭に500円は張り込んだつもりだけど、願い事を言ったら、全然足りないような気がした。
逃げるようにその場から去り、参道でみたらし団子を買った。



(これでもう大丈夫。)



家に帰り、みたらし団子を食べた。
みたらし団子は、厄除けのありがたい食べ物だって、昔、おばあちゃんが教えてくれたから。



(なんとかなる。
絶対になんとかなるから。)



私は心の中で、強くそう言い聞かせた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

僕のナツヤスミ、

泉涼子
ホラー
小学四年生の夏休み。 お父さんに連れられて、不登校気味だった「僕」は山に囲まれたとある村に夏休みの間宿泊する事になった。 宿主のおじいさん。なんだか不思議。 この村の人達。なんだか不思議。 この村。なんだか不思議。 この村、 ーナニカアル?ー 「僕」のナツヤスミが、始まる。

【厳選】意味怖・呟怖

ねこぽて
ホラー
● 意味が分かると怖い話、ゾッとする話、Twitterに投稿した呟怖のまとめです。 ※考察大歓迎です✨ ※こちらの作品は全て、ねこぽてが創作したものになります。

私が体験した怖い話

青海
ホラー
 生きていると色々不思議なことに出会ったりします。  ありえない事に遭遇すると、もしかしたらいるのかもしれないと思ってしまいます。    今生きているときに感じる喜びや悲しみ、憎しみや怒り…。  死んだ瞬間に色々な感情が一瞬で何も消えて無くなるのでしょうか…。  何十年も抱えた恨みも消えるのでしょうか?  ほんとうに?

これ友達から聞いた話なんだけど──

家紋武範
ホラー
 オムニバスホラー短編集です。ゾッとする話、意味怖、人怖などの詰め合わせ。  読みやすいように千文字以下を目指しておりますが、たまに長いのがあるかもしれません。  (*^^*)  タイトルは雰囲気です。誰かから聞いた話ではありません。私の作ったフィクションとなってます。たまにファンタジーものや、中世ものもあります。

意味がわかると怖い話ファイル01

永遠の2組
ホラー
意味怖を更新します。 意味怖の意味も考えて感想に書いてみてね。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...