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雪降る日に

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(さすがに寒いなぁ…)



滑っていても、体はなかなか温まらない。
なんたって、今日は雪が降ってるんだから。



(失敗したかなぁ…)



今日はデートのはずだった。
彼はこのところ忙しくてしばらく会えなかったから、今日はすごく楽しみで、会社まで休んで美容院に行って、目一杯おしゃれをしてきたのに、ドタキャンされた。
待ち合わせの一時間前から来て、雪の降る中、ずっと待ってたのに、掛かってきた電話はあまりにも素っ気ないものだった。



「ごめん。今日、行けなくなった。」



その言葉に私は何も言えなくて…
なぜだか、気が付けばスケート場に来ていた。
別に、今日、二人でスケートに行く約束をしてたわけでもないのに。



ふと周りを見渡せば、みんな、連れがいる。
親子連れだったり、カップルだったり、友達同士だったり。
一人ぼっちなのは、私だけだ。
そのことに気付いたら、急にいたたまれない気分になった。



(……帰ろう。)



私はスケート場を後にした。
寒さが、体の芯まで堪える。



(なによ、雅紀の馬鹿!)



込み上げてくる怒りと涙。
私はその両方を我慢して、家路を急いだ。



馬鹿みたい。
こんなにおしゃれして。
昨夜なんて、嬉しくて眠れなかったのに…
やっと会えるって、ワクワクしてたのに…
堪えきれずに零れた涙を、私はそっと指で拭った。



コンビニの灯りが眩い。
私は虫みたいにその灯りに吸い寄せられていた。
そうだ、今夜はお酒でも飲んで寝よう。
私はお酒に弱いから、缶チューハイの一本でも飲めば、熟睡出来るかも。



そう思ったのに、私の視線はひとつだけ残されたケーキに釘付けになっていた。
真っ白な生クリームの上に、真っ赤ないちごが乗っかったショートケーキだ。
誕生日でもクリスマスでもなんでもない日だけれど…
とっても落ち込んだ日だけれど…



私は、ケーキを手に取った。
苦手なお酒より、甘いケーキの方が良い。
その方がきっと癒される。



外はまだ雪…
今夜はたくさん積もりそう。
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