1 / 393
傘はない
1
しおりを挟む
(まだなのかよ。
一体、いつまで続くんだよ。
いいかげんにしろよな。)
俺は、そぼ降る雨を恨めしげに見上げた。
家に戻ると、真っ先に浴室に入った。
冷えた体を熱めのシャワーで温めるんだ。
以前、雨に濡れたまま放置していて、風邪で寝込んだことがある。
その時に学んだんだ。
雨に打たれると、思った以上に体が冷えるから、必ず温めないといけないって。
こんなことになったのは、単に俺の意地のせいだ。
馬鹿馬鹿しいことだとわかっていながら、やめられない。
今年の春、俺は、傘を無くした。
しかも、一本ならともかく、続けて二本なくしたんだ。
俺は、その時、ちょっと高い傘を買った。
高い傘なら、なくさないように気をつけると思ったからだ。
それと同時に俺は誓った。
この傘をなくしたら、今後、二度と傘を買わない、と。
そして、その一週間後、俺はその傘をなくした。
誓ったんだから、もう傘は買わない!
しかし、季節は皮肉なことに梅雨だ。
雨の日が何日も続いた。
俺は帽子をかぶり、雨の中を必死に走った。
それでも、やっぱり濡れる。
濡れたまま、会社で過ごして、熱を出して寝込んだこともあった。
それでも、傘は買えない。
買ったら、俺の負けになるから。
職場では俺がいつも濡れてるから、訝しげに思われているようだ。
傘を忘れたと嘘を吐いてはいるが、皆、おかしいと思っているみたいだ。
変な奴とは思われたくないが、しかし、ここまで来てやめられない。
傘を買ったら、負けなんだから。
梅雨明けは一体いつだ?
どうか、早く明けてくれ!
このままでは、俺はおかしな奴だと思われてしまう。
俺は、今夜もてるてる坊主に祈りを捧げる。
どうか、明日は晴れてくれ、と。
だけど、天気予報は明日も雨。
だろうな。今は梅雨の真っ只中なんだから。
それならば、せめて、駅に着くまで降らないでくれと、切実な想いで祈った。
一体、いつまで続くんだよ。
いいかげんにしろよな。)
俺は、そぼ降る雨を恨めしげに見上げた。
家に戻ると、真っ先に浴室に入った。
冷えた体を熱めのシャワーで温めるんだ。
以前、雨に濡れたまま放置していて、風邪で寝込んだことがある。
その時に学んだんだ。
雨に打たれると、思った以上に体が冷えるから、必ず温めないといけないって。
こんなことになったのは、単に俺の意地のせいだ。
馬鹿馬鹿しいことだとわかっていながら、やめられない。
今年の春、俺は、傘を無くした。
しかも、一本ならともかく、続けて二本なくしたんだ。
俺は、その時、ちょっと高い傘を買った。
高い傘なら、なくさないように気をつけると思ったからだ。
それと同時に俺は誓った。
この傘をなくしたら、今後、二度と傘を買わない、と。
そして、その一週間後、俺はその傘をなくした。
誓ったんだから、もう傘は買わない!
しかし、季節は皮肉なことに梅雨だ。
雨の日が何日も続いた。
俺は帽子をかぶり、雨の中を必死に走った。
それでも、やっぱり濡れる。
濡れたまま、会社で過ごして、熱を出して寝込んだこともあった。
それでも、傘は買えない。
買ったら、俺の負けになるから。
職場では俺がいつも濡れてるから、訝しげに思われているようだ。
傘を忘れたと嘘を吐いてはいるが、皆、おかしいと思っているみたいだ。
変な奴とは思われたくないが、しかし、ここまで来てやめられない。
傘を買ったら、負けなんだから。
梅雨明けは一体いつだ?
どうか、早く明けてくれ!
このままでは、俺はおかしな奴だと思われてしまう。
俺は、今夜もてるてる坊主に祈りを捧げる。
どうか、明日は晴れてくれ、と。
だけど、天気予報は明日も雨。
だろうな。今は梅雨の真っ只中なんだから。
それならば、せめて、駅に着くまで降らないでくれと、切実な想いで祈った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる