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それでも君を愛せて良かった

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 「出来た…!」

 僕は嬉しくて、その言葉を思わず声に出していた。



 「……やっと出来たか。
どれどれ。見せてみなさい。」

 僕は、今、出来あがったばかりの指輪を父さんの目の前に差し出した。
 父さんは指輪に目を近付け、細部までじっくりと観察する。
ファビエンヌのことを想いながら全力を尽くしたつもりではあったけど、その結果、どんな評価を受けるのか、僕はどきどきしながら父さんの言葉を待った。



 「……アベル、けっこう良く出来てるじゃないか。」

 「ほ、本当!?」

 「あぁ…いつの間にこんなに技術を覚えたんだ。
しっかりとした仕事だ。
まぁ、完璧とは言えないが、こんなに出来てるとは思わなかった。
ただ、サイズはもう少し大きい方が良いな。
 女性物にしても華奢過ぎる。」

 「……そうだね。
 今度はそうするよ。」



 指輪はファビエンヌの指のサイズに合わせたものだった。
 彼女の陶器の指は、確かに一般的な女性の指よりも華奢かもしれない。



 「よし、アベル。
この調子でもっと精進するんだぞ。
……おまえにも早くこういうものを贈れる相手が出来れば良いんだけどな。」

 父さんはそう言って微笑みながら、僕の作った指輪を返してくれた。



 *



 「ファビエンヌ……実はね、今日は君にプレゼントがあるんだ。」

 僕達の仲はとても順調だった。
あれ以来、ファビエンヌは僕のことをより深く信頼してくれるようになった気がする。
お互い、まだ恥ずかしさはあるものの、彼女の世話をすることをファビエンヌは喜んで受け入れてくれている。
それは、日課となった長い接吻の時にとても強く感じられる。
 彼女の僕に対する想いが強くなったことを僕は彼女の唇から実感していた。



 「ほら、見て。
これ、僕が作ったんだ。
 君のことを考えながら、材料選びから全部僕が一人で作ったんだよ。
 初めての僕の作品なんだ。」

 僕は、ファビエンヌの手を取って、その指輪を彼女の華奢な指にさした。



 「すごく似合うよ。
ファビエンヌ、どう?
 気に入ってくれた?」

ふと、視線を移したファビエンヌの表情はとても感動しているように見えた。
その証拠に、彼女の青い瞳からは一粒の涙がこぼれ落ちた。



 「ファビエンヌ、気に入ってくれたんだね。
 喜んでくれてるんだね…!
 実はね…ほら、これ、僕とおそろいなんだ。
もっと僕の腕があがったら…今度は結婚指輪を作るからね。」

 僕はそう言うと、ファビエンヌの身体を抱き締め、唇を重ねた。
もう何度も何度も繰り返し行った行為だけど、その時の接吻はいつもとは比べ物にならない程熱く…



「ファビエンヌ…好きだよ…
愛してるよ…
僕達…いつまでもずっと一緒だよ…」



 僕の身体は燃えるように熱く火照り…



その夜、僕と彼女はごく自然に結ばれた…
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