上 下
21 / 37
それでも君を愛せて良かった

21

しおりを挟む




 「ファビエンヌ、見て。
 少し黴臭いけど、今のドレスよりはずっと良いだろ?
これは母さんが着てたものなんだ。
 母さんは細身だし、きっとサイズもピッタリだと思うよ。
 今、着せ替えてあげるね。」

 僕は、ファビエンヌのドレスを脱がせた。
ドレスの下には袖のない白い下着を身に付けていた。
 彼女の肘から上は、ヤギか何かの動物の皮らしきもので作られており、薄い下着の上から小さな胸の膨らみが見えた時、僕は途端に罪悪感にかられ、焦って視線を逸らした。



 「ご…ごめんね…
見ないから…
僕、見ないから…」

 手が震え、うまく着せ替えてあげることが出来ない。
それでも、ファビエンヌのそんな姿を見てはいけないような気がして、視線を逸らしながら…そして、彼女の身体になるべく触れないように気遣いながら、どうにかドレスを着替え終わり、僕は異常に噴き出した額の汗を拭い、ようやく彼女に視線を戻した。



 「あ…あぁ……
思った通りだ。
 似合うよ…!
サイズもぴったりだ!」



ドレスを着替え、口紅をさしたファビエンヌは、まるでどこかの貴族の娘のようだった。
 素敵になったファビエンヌと一緒にいると、僕なんかじゃ釣り合わないような気がして少し寂しいような気持ちになった。



 「ファビエンヌ…
本当に君は素敵だよ。
 僕なんかじゃ不満かもしれないけど、どうか他の人を好きにならないで…
僕、君に出来る事はなんだってするから。
 好きなんだ…君のことがたまらなく好きなんだ。」

 情け無いことを言ってるのは自分でもわかった。
でも、それでも僕はそう懇願せずにはいられなかった。


それほどまでにファビエンヌは魅力的だったから。



 僕は母さんの他の服をそっと部屋に持ち返った。
 父さんにみつからないように洗濯をして、綺麗にしてから彼女に着せてあげようと考えたからだ。



 (彼女の下着も洗ってあげたいけど…でも…)

 思い出すだけで、僕の顔は高い熱を帯びた。



 (そうだ…身体も綺麗にしてあげたい。
でも、そんなことを言ったらきっと彼女は恥ずかしがる…)



 彼女の下着姿が何度も繰り返し、僕の頭に思い浮かぶ。
 僕はそれを払い退けるため、昨夜よりも多くの酒を飲んで眠りに就いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

王妃の手習い

桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。 真の婚約者は既に内定している。 近い将来、オフィーリアは候補から外される。 ❇妄想の産物につき史実と100%異なります。 ❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。 ❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

妻の死で思い知らされました。

あとさん♪
恋愛
外交先で妻の突然の訃報を聞いたジュリアン・カレイジャス公爵。 急ぎ帰国した彼が目にしたのは、淡々と葬儀の支度をし弔問客たちの対応をする子どもらの姿だった。 「おまえたちは母親の死を悲しいとは思わないのか⁈」 ジュリアンは知らなかった。 愛妻クリスティアナと子どもたちがどのように生活していたのか。 多忙のジュリアンは気がついていなかったし、見ようともしなかったのだ……。 そしてクリスティアナの本心は——。 ※全十二話。 ※作者独自のなんちゃってご都合主義異世界だとご了承ください ※時代考証とか野暮は言わないお約束 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第三弾。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...