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the past story

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「…兄上…?」

ヴァンヴェールは立ち上がり、あたりを見渡す。
しかし、あたりは静まり、いつもと変わった様子はない…
その静けさが、逆にヴァンヴェールの胸に大きな不安をもたらした。

 「兄上~~!」

ヴァンヴェールは、兄の姿を探しながら叫び続けた。
その時だった。

 「神父様、大変だぁ~~!!」

 血相を変えた青年がヴァンヴェールの所へ駆け込んできた。

 「どうしたのです?」

 青年は息を切らしながら答えた…

「私は向こうの丘から、事の一部始終を見ていたのですが…
もう1人の神父様が子供を手渡された後、沈みながら流されているのを見たのです…!」

 「なんですって!」

ヴァンヴェールは、自分の顔から血の気がひいていくのがわかった。
ヴァンヴェールと青年は川下に向かい、走った。

 「兄上~!兄上!どこにおられるのです!
 兄上~!!」

ヴァンヴェールは川に飛び込み、水の中に目を凝らして兄の姿を探す。
 青年は助けを呼び、何人もの男達が川に飛び込み、レヴィンの姿を探した。



 (……兄上!!)



ヴァンヴェールの目が川底にゆらめく兄の姿をみつけた。



…レヴィンは水面に引き上げられた。
しかし、彼の魂がもうすでに神の元へ旅だってしまっていることは、誰の目にも明らかだった…



「…あぁ、兄上…
何てことだ…
もう、あなたはその瞳を開けては下さらないのですか…
本当に旅立たれてしまわれたのですか…」

 皆がすすり泣く中で、レヴィンはとても穏やかで満ち足りた顔をしていた。

 「…皆さん、本当にありがとうございました。
 兄は少女を救うことが出来、満足して神の元へ逝ったのです。
だから、皆さんも悲しまないで下さい。」

 「神父様…」

レヴィンの身体は荷車に乗せられ、教会へと運ばれていった…
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