上 下
66 / 364
親友

しおりを挟む
「う~…今日はなんだか特別寒いね。」

 隣を歩く美香が、そう言ってコートの襟を立てた。



 「そう?私はそうでもないかなぁ?」

あの日…5年ぶりに再会した彼と、次の日また会った時…
彼が、クリスマスプレゼントって言ってくれたのが、このスヌードだ。
 素材が良いからだけじゃなく、きっとこれには彼の想いも詰まってる…だから、こんなに温かいんだと思う。



 「あ、やっぱりけっこう混んでるね。」

 「……だよね。まぁ、良いじゃない。
 並んでないだけマシだよ。」

 今日は大晦日。
 一人で過ごすのはやっぱり寂しいから、私は美香と一緒に新年を迎えることにした。
 確か、美香とお正月を迎えるのは、今年で三回目だ。
 私たちがまず向かったのは、お蕎麦屋さん。
そう、年越しそばを食べるためだ。
ただのゲン担ぎだとは思うけど、意外と私も美香もそういう行事は外さない。



 「ねぇねぇ、例の彼とはうまくいきそう?」

 席に着くなり、美香が訊ねる。



 「うん…今のところはすごくうまくいってる。」

 「そっか…でも、遠距離だからね。
 出来るだけコミュニケーション取った方がいいよ。」

 「そうだよね。電話やLINEは毎日やってるけどね。」

 「おぉ~…それはまたお熱いことで…」

 彼とは、初めての遠距離恋愛だ。
だから、心配なこともいろいろある。
でも、あんな奇跡的な出会いをした彼だもん。
きっと、うまくいくって信じてる。



 「お待たせしました!」

すぐにそばが運ばれて来た。



 「だしの香りが良いね。」

 「そういえば、私、蕎麦食べるの久しぶりかも…」

 「あ、私も……!」

 私はふと思い出した。
 確か、昨年も似たようなことを話した、と。



 「ん?何?…思い出し笑いなんかして…」

 「ううん、なんでもないよ。」

 「わかってるって!
 愛しの彼のこと、思い出したんでしょ。」

 「違うってば。」

 思い出したのは美香のことなのに、美香は彼のことだと思ってる。
 本当に思い込みが激しいんだから…



「あ…また笑ってる!」

 「良いじゃない。」

 行き交う人々は忙しなく動いてるけど、私たちにとっては穏やかな大晦日…
やっぱり、美香っていいな…そんなことを思いながら、私は蕎麦をすすった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

お題小説

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ある時、瀕死の状態で助けられた青年は、自分にまつわる記憶の一切を失っていた… やがて、青年は自分を助けてくれたどこか理由ありの女性と旅に出る事に… 行く先々で出会う様々な人々や奇妙な出来事… 波瀾に満ちた長編ファンタジーです。 ※表紙画は水無月秋穂様に描いていただきました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

一輪の廃墟好き 第一部

流川おるたな
ミステリー
 僕の名前は荒木咲一輪(あらきざきいちりん)。    単に好きなのか因縁か、僕には廃墟探索という変わった趣味がある。  年齢25歳と社会的には完全な若造であるけれど、希少な探偵家業を生業としている歴とした個人事業者だ。  こんな風変わりな僕が廃墟を探索したり事件を追ったりするわけだが、何を隠そう犯人の特定率は今のところ百発百中100%なのである。  年齢からして担当した事件の数こそ少ないものの、特定率100%という素晴らしい実績を残せた秘密は僕の持つ特別な能力にあった...

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

処理中です...