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氷室
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「伯爵…あの…まだ遠いのですか?」
「疲れたのかい、フランソワーズ…
あと少しだから…頑張っておくれ。」
「は、はい。」
お屋敷にお勤めするようになってほぼ二年…
25歳の誕生日を迎えたある日、伯爵様が、誕生日祝いに私を良いところに連れて行ってやろうとおっしゃった。
それは、お屋敷から馬車で三日もかかる場所…
今朝は、朝早くから吹雪の中をずっと歩いている。
冷たい風が、肌を突き刺す…手足はもう感覚も朧気だ。
伯爵のお心遣いはありがたいけど、私はすっかり疲れ果ててしまった。
「フランソワーズ、あそこだ!」
疲れがピークに達した頃、伯爵が立ち止まり、指を指された。
その先にあるのは、洞窟…
伯爵は、壁にかけられた松明に次々と火を灯された。
周りが明るくなり、風の音が小さくなる。
細い通路を進んだ先は、居間程の広さがあり、そこには椅子やテーブルが置いてあった。
「寒かっただろう?
さぁ、お座り…」
「ありがとうございます、伯爵様。」
外に比べると、寒さもずっとましだ。
「さぁ、飲みなさい。」
伯爵はお酒のようなものを出して下さった。
「あの…伯爵様…私、お酒は…」
「少しなら大丈夫だろう。
身体が温まるから…」
「は、はい…」
強いお酒なのか、一口飲んだだけで、のどが焼け付くようだった。
でも、そのおかげで確かに身体は熱くなり、感覚がなくなりかけていた手足にも血がめぐるのを感じた。
「フランソワーズ…お誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます、伯爵様。」
「女性は25歳が一番美しい。
それ以上は年々色あせていく…」
「そう…ですか?」
なんだか少し気分が悪い…
飲みなれないお酒を飲んだせいだろうか?
「そうだよ…だから、これ以上、年を取るべきじゃない。」
「一体、どういう…」
気分の悪さが増してきた。
おなかのあたりからのどにかけて、熱いような痛みが走る。
「伯爵様…私…気分が…」
それを最後に私の意識は途絶えた…
「疲れたのかい、フランソワーズ…
あと少しだから…頑張っておくれ。」
「は、はい。」
お屋敷にお勤めするようになってほぼ二年…
25歳の誕生日を迎えたある日、伯爵様が、誕生日祝いに私を良いところに連れて行ってやろうとおっしゃった。
それは、お屋敷から馬車で三日もかかる場所…
今朝は、朝早くから吹雪の中をずっと歩いている。
冷たい風が、肌を突き刺す…手足はもう感覚も朧気だ。
伯爵のお心遣いはありがたいけど、私はすっかり疲れ果ててしまった。
「フランソワーズ、あそこだ!」
疲れがピークに達した頃、伯爵が立ち止まり、指を指された。
その先にあるのは、洞窟…
伯爵は、壁にかけられた松明に次々と火を灯された。
周りが明るくなり、風の音が小さくなる。
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「寒かっただろう?
さぁ、お座り…」
「ありがとうございます、伯爵様。」
外に比べると、寒さもずっとましだ。
「さぁ、飲みなさい。」
伯爵はお酒のようなものを出して下さった。
「あの…伯爵様…私、お酒は…」
「少しなら大丈夫だろう。
身体が温まるから…」
「は、はい…」
強いお酒なのか、一口飲んだだけで、のどが焼け付くようだった。
でも、そのおかげで確かに身体は熱くなり、感覚がなくなりかけていた手足にも血がめぐるのを感じた。
「フランソワーズ…お誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます、伯爵様。」
「女性は25歳が一番美しい。
それ以上は年々色あせていく…」
「そう…ですか?」
なんだか少し気分が悪い…
飲みなれないお酒を飲んだせいだろうか?
「そうだよ…だから、これ以上、年を取るべきじゃない。」
「一体、どういう…」
気分の悪さが増してきた。
おなかのあたりからのどにかけて、熱いような痛みが走る。
「伯爵様…私…気分が…」
それを最後に私の意識は途絶えた…
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